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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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文化祭準備の最終日。朝から飾り付けを本格的に始めた。
各自で作った飾りは結構集まり、あちらこちらに吊るされたり、壁に貼り付けたりと教室が徐々に華やかになっていく。付け方一つでこんなにも雰囲気が変わるんだなと感心する。
カーテンなどもいつもと違い少しゴージャスだ。家から持ち寄ったものでゴシック風な喫茶店に少しでも近付けようと、みんなで奮闘した。
机を並べ客席を作り、テーブルクロスをかけていく。流石に椅子はどうにもできず学校感が半端ない。けれどそれはそれで学生らしくていい。セットされた机に一輪挿し風にコップにラッピングをし可愛らしい花をいける。
入り口にはダンボールを装飾した看板を掲げる。入店しやすいように、わざとオープンにし、バルーンとフラワーポンポンをたっぷり目にアレンジしてみた。
一通り飾り付けが終わると、一夜漬けの接客講習をレクチャーされた。お茶の出し方や挨拶の仕方など、メイドカフェでアルバイトをしている子から教わった。
本番は衣装を着てヒールのある靴で対応予定だ。上手くできるか心配だが粗相をしないように、そして一応男の矜持を守らなければと気合を入れた。
明日は着替えや化粧もあるからと、十時から開催される文化祭だが、早めに来るように伝達され解散となった。悠斗に連絡を入れると、まだ終わらないとのことだったので村上と先に帰ることにした。朝は早く登校することを伝えると、俺に合わせて悠斗も一緒に行くとのことなので時間を連絡しておく。
「とうとう明日だな。俺、村上と接客一緒で良かった……」
「テンション上がって来たね。どうせやるならとことんやろう!」
「お前メンタル強いな! でもさ、俺らってギャグ要素みたいなもんだろ? どう見たって男は男だぞ?」
「俺はオネェみたくなると思うけど、柳ちゃんは別嬪さんだと思うよ? だからひとりでメイドの格好でうろつかないようにね! なにかあったら俺が王子に殺されちゃう!」
「なにもねぇし! ああ……明日なんて来なければいいのに……」
***
「んーー、行きたくないよぉ~」
何度目のため息かも分からない。そんな俺を悠斗は苦笑いしながら励ましてくる。
「どうしたの? あんなに楽しみにしていたのに」
「だって……絶対似合わないし」
「この間からずっとその調子だね? 瀬菜は何着ても可愛いから」
「接客とか俺、向いていないと思うし」
「ひとりじゃないし、村上君がきっと助けてくれるよ」
「まぁ、そうだけど。そういえばさ? 悠斗は王子じゃん。やっぱりカボチャパンツなの?」
「おとぎ話に出て来るみたいなやつ? クスッ、実際見て笑ってね? 俺だって、結構恥ずかしいんだよ。だから瀬菜も頑張って」
悠斗に元気付けられなんとか教室の前まで到着すると、またお昼頃にねと別れた。結局悠斗にはメイドのことは内緒にしてしまった。何度か話そうとは思ったが、ベッタリ付き添われて悠斗のクラスから反感を買うのも嫌だったのだ。
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