王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第3幕 溢れる疑惑

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 アイマスクを外されると、瞑った瞼の上からぽわんと温かな灯りを感じる。少しずつ瞼を開ける。真っ暗な部屋の中に、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れていた。
 沢山のフルーツが色とりどりに綺麗に並び、蝋燭の火を反射しキラキラと宝石のように輝いている。その中心には手書きのアルファベットが楽しそうに綴られていた。


『thanks for your having been born in this world.』
『Happy 16th  birthday, sena!』


 目の前の光景を理解するのに時間がかかり、固まったままでいると、悠斗が肩に手を掛け囁いた。

「瀬菜……今、七月二十八日一時二十五分……瀬菜が生まれた日だよ? お誕生日おめでとう……願いを込めて火を消して?」

 薄暗い室内で蝋燭に照らされた悠斗の顔を見つめると、ふわりと優しく微笑んでいる。そんな悠斗の笑顔がだんだんと涙で歪んでいくが、グッと堪えてケーキに視線を戻す。ゆらゆらと揺れる炎にフーッと息を吹きかけ、最後に灯っている一本をフッと静かに消す。室内は完全に暗闇に包まれ、火の消えた蝋燭が独特の匂いを漂わせていた。
 暗闇の中、瞼に焼きついたケーキを見つめたまま、今日が自分の誕生日だったことを思い出す。室内がパッと明るくなり眩しさに瞳を閉じる。

 パンッ、パンッ、パンッ──‼︎

「お誕生日おめでとうー♪」といく人もの弾んだ声が、クラッカーの音と一緒に放たれる。
 明るくなった室内には、多澤、村上、祐一さん、佐伯さん。それにおばさんと美久さん。部屋の電気のスイッチ付近におじさんまでがおり、笑顔で俺を迎えてくれた。
 言葉が出なかった。呆然としながら室内を見渡すと、そこは悠斗の部屋だった。沢山のバルーンやお花、紙の装飾で溢れかえっていた。こんなに沢山の飾り付けに、一体どれだけ時間が掛かったのだろうか。

「瀬菜ちゃんおめでとう。これはおじさんとおばさんから」
「せっちゃん。おめでとう♪」
「あの、俺……。おじさん、おばさん、美久さんありがとう」

 腕の中にプレゼントがどんどん積まれていく。

「柳ちゃんお誕生日おめでとう♪ 細やかだけど楽しんで!」
「なんだよ村上。お前からはもう貰っているだろ? でも……ありがとう」

 多澤はコツンと拳を俺の頭にお見舞いすると、ニヤリと唇を歪ませる。

「お騒がせ瀬菜。あとでたっぷり説教な。まぁ、おめでとう。付属品は悠斗に買ってもらえよ」
「多澤……その……ありがとう……ごめん」

 バツの悪そうに多澤に小声で謝罪をする。

「瀬菜君~、僕たち急だったから、今日はプレゼントないけど欲しいものある?」
「リクエストなければ祐一と選んであとで送るから。ごめんな?」
「そんな! いいです! 凄く迷惑掛けちゃって……逆に俺がお礼しないと……だし」
「瀬菜君からのお礼は、僕とご飯デートで! だから欲しいもの絶対言うんだよ!」
「祐一さんそれなら……」

 悠斗が祐一さんの耳元でコソコソと耳打ちする。ぱぁと目を輝かせ「もちろん任せて!」と、祐一さんはガッツポーズをしている。

「それじゃ、みんな時間も時間だし短いお誕生日会になってしまったけど、かあさんと美久が素敵なケーキ焼いてくれたから食べようか」

 おじさんがそう言うと、おばさんと美久さんがケーキを取り分けみんなに配ってくれる。

「はい、せっちゃん。食べて食べてー。ここに書いてあった英文ね悠くんが書いたの。なんて書いてあったか分かる? 『この世に生まれてきてくれてありがとう。瀬菜、十六歳お誕生日おめでとう!』 ふふっ、クサイ台詞だけど……ロマンチックよね。せっちゃんのこと凄く大切なんだなって。とうとう悠くんに、せっちゃんを独占されちゃった」

 クスクス笑う美久さんは残念そうに、でも嬉しそうにそう教えてくれた。

「……そうなんだ。ははっ──俺ッ、本当に最低な人間だ」

 尻蕾にボソボソと呟く。大好きなイチゴを口に入れると、甘酸っぱい果汁が口に広がる。酸っぱいと鼻を啜りながら、涙目で美味しいとちぐはぐに言いながら、ケーキを口いっぱいに頬張った。
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