王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第3幕 溢れる疑惑

01

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 おはようございます!
 清々しい朝ですね。

 ──そんな訳あるか‼︎
 ……腰ダルっっっ!

 いつものように悠斗に起こされ、重い身体を奮い立たせ支度をし登校する。週末はそれは色々あったが、俺達は晴れて恋人同士になった……はずだが──。
 いつも通りの悠斗を不思議に思いつつ、そういえば恋人ってなにするんだ? ……と疑問に首を傾げる。けれど付き合ったことなどない俺には、答えなど分かるはずがない。
 学校に到着すると、これまたいつもの黄色い声援に囲まれ、重い腰がさらに重く感じてしまう。そんな俺の気持ちを知らぬ悠斗は、普段通りに女の子達と笑顔で戯れている……ように見える。
 ちょっとした嫉妬心をため息と共に吐き出す。

 いかんいかん……。
 こんなことに一々目くじら立てていたら身が持たないな。
 平常心、平常心。

 教室に入り席に着くと、なぜか悠斗も教室に入ってくる。

「瀬菜、本当に大丈夫? 無理だったら保健行くか連絡入れてね?」
「おう! 大丈夫だと思う……もうすぐ夏休みだし、気合い入れて乗り切るし!」

 当事者の悠斗に心配され笑い出しそうになってしまう。二人で話をしていると、村上が声を掛けてくる。

「おはよー。二人共仲直りした? 王子が教室の中まで来るなんて珍しいね?」
「おかげさまですっかりラブラブ。村上君にカラオケ代返そうと思って」
「それはそれは……で……コレな訳ねー」

 村上は俺をチラリと見ながらそう言うと、悠斗にニヤリとし弾んだ声で言った。

「なら代金は贈りものってことで!」
「そういう訳には……迷惑もかけたのに……」
「俺、柳ちゃんの大ファンだしー。王子とはこれからも長い付き合いになりそうだし」

 悠斗と村上の謎な会話を頭上で聞き、ひとりキョトンとしてしまう。昨日から謎の贈りものをよく貰う。村上はお代を受け取る気はないようだ。

「村上、なんか悪いな。土曜日も気遣わせたのに……色々サンキューな!」

 照れながらへにゃりと笑顔で感謝の気持ちを伝える。

「はぁ……マジ天使の笑顔……」
「村上君……気持ち悪いから。瀬菜にそういうのやめてくれる?」

 ただお礼を言っただけなのに、なぜお前ら険悪になるんだ……。

 二人のやり取りを、腰を叩きながらBGMのように聞き流しているうちに、悠斗はまた夕方ねと言い自分の教室へと行ってしまった。



 一限目を終え座ってばかりは血行に良くないと、席を立ち廊下の窓に頬杖をつき外をぼんやりと眺める。今日も日差しは強く暑くて堪らない。気分だけでも涼みたいのか、プールに自然と視線がいく。ザワザワと声が聞こえる場所に、プールから上がったばかりの悠斗を見つける。フェンス越しに女の子達が、キャーキャーと黄色い声を上げ、悠斗の名前を呼んでいる。
 均等の取れた引き締まった身体と爽やかな顔立ち、どれを取ってもパーフェクトで、今までそこまで気にしていなかったのに見惚れてしまう。

「やっぱ……あいつカッコいいな……」

 ぼそりと呟き淡い吐息を漏らす。

 うっ……俺ってば、めちゃくちゃ悠斗が好きみたいじゃん!

 ふと視線を感じ振り向くと、見知らぬ男子学生が背後で立ち止まり俺をぼんやりと見つめていた。目が合うと顔を真っ赤にして走り去って行く。

「……なんだあれ」

 休み時間の間だけでも、そんな不思議な光景を何度も目にしたのだった。
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