王子×悪戯戯曲

第2幕 逃亡劇の果てに

36

「クスッ、残念。綺麗なのに」
「あっ、ああぅんっ、ゆーと……ちゅう、してッ」

　強請るようにうしろを振り返り、悠斗の声を遮断する。これ以上卑猥なことを言われたら、羞恥心で死にそうだ。
　ピタッと悠斗の動きが止まると、自ら唇に触れるだけのキスをする。目を丸める悠斗が面白くて堪らない。ヘラリと微笑むと、顔中にキスの雨が降ってくる。キスは俺の唇に辿り着き、忍び込んだ舌先がくちゅりと水音を立たせ口腔を愛撫した。甘く優しい口付けに、身体が蕩けくたりと力が奪われていく。

「ふっ、んっ……ゆーとっ……しゅき」
「……もう、本当に瀬菜ってば、俺の理性崩壊させる気でしょ？」

　余裕なさげに苦笑いで悠斗はそう言うと、俺の腰を浮かせ穿ってきた。ズンズンと腰を突き上げ、悠斗の硬い熱が粘膜を蹂躙していく。その度にぐちゅぐちゅと下肢から水音が鳴り、ベッドのスプリングがギシギシと軋んだ音を響かせる。

「あっああっんふあっ！　はげッしっ！　おひりっこわれちゃぅ～～ッ‼︎」
「んんんッ……はっ、瀬菜が煽るから……ん、とまんなッい……んんんッ‼︎」

　ゴリゴリと前立腺に悠斗の逞しい切っ先が何度も擦れ、強い快感にハクハクと口を開き、少ない酸素を身体に溜める。イクことすら伝えられず、鈴口からはダラダラと長い射精を垂れ流す。

「ゔッ──んッ、クッ、凄い締め付けッ。瀬菜また逝った？　もう少し頑張って──ねッ！」
「ひやぁん‼︎　ふぐぅッ、あぁぅっ、んっ、あッあぁ、あ……っ、ひッぐぅ」

　悠斗はイッたばかりの俺の亀頭を包むと、精液の粘りを借りてシコシコと擦り続ける。快感のさらに上に昇らされる感覚に、痙攣が止まらない。頭の中が白く霞、脳みそまで感電したように揺さぶられる。

「やらっそッれ、やらっこわぃッ──やっやッ、やめぇ──ひゔッ！」
「ん？　おしりもっ！　ペニスもっ！　気持ちいいでしょッ‼︎」
「おぉッれッらめらめッ！　あああぅぐぅッ！　ひぃひぐっ、なんかッあィっ、いっ、ゔあああっふぐぅ──ッ」

　俺の嫌がることはしないと言っておきながら、腰の突き上げと亀頭を弄り回すのをやめてはくれない。心の中で悠斗の馬鹿！　と、毒づきながら込み上げてくるなにかに恐怖する。

「ぃッ──イヤっ！　いやぁおしっこッ、れッちゃうっ！」
「おしっこ？　ふふふっ、出しちゃうの？」
「やめっ！　らしッたくなッ、あぅあああッ──！　イヤぁっ～～～～‼︎」

　身体の奥底から湧き出る快感と共に、透明な液体がブシャーッ……と勢い良く鈴口から放たれた。

「……ぁぅ……やぁ……れちゃっ、うぅ……」
「すごッ、きゅんきゅんして……中うねって──ッ」

　前に身体を倒されると腰を上げられ、ガンガンと奥を叩くように穿たれる。悠斗のペニスが膨張するのを粘膜で感じ、後孔を締め上げてしまう。

「瀬菜……イクッ、中にいっぱい……あげるッ、んんんックゥッ──‼︎」
「あああああっ～～ィ、ひッくるぅっ──！　おひりッあちゅィ～～っ‼︎」

　熱い白濁が内部を濡らし広がっていく。快感が恐ろしほど身体中を駆け回っている。弛緩した身体は涙を勝手に零れさせ、シーツに雫が吸い取られていく。
　そんな俺の背中を悠斗は優しく唇で宥めると、身体を仰向けに返した。双眸が合うと悪態を吐かずにはいられない。