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第2幕 逃亡劇の果てに
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身体を拭かれるとバスローブを肩にかけられる。手を引かれソファーに腰を落とすと、ペットボトルを渡される。躊躇っていると、悠斗はそれを口に含み俺の唇を塞いだ。
「ん、ふ……っ」
「お水飲んでおかないと……しんどくなるよ」
枯れた喉が潤っていく。悠斗は親鳥のように水を与え、唇を奪っていった。温まった身体がさらに火照り、行動と思考を鈍らせていく。悠斗の囁く声が、全く頭に入ってこない。口付けの合間にスルリとバスローブの紐を解かれ、気付けば手首を縛られていた。
「……なんで? こんなことしなくても俺は逃げない」
力なくそう呟く俺に、悠斗はどこまでも追い詰めてくる。
「おかしいな。そう言って逃げたのは誰だっけ? 首輪みたいなものだよ」
「……俺は犬じゃない」
「うん、そうだよ? 今は奴隷。犬のほうが良かった?」
それは悠斗が勝手に決めたことだ。人間以下と言われているようで、胸に棘が突き刺さるように痛み泣いている。手首に巻かれた紐を滲んだ視界で見つめ、なぜこんなことになってしまったのかと思考を巡らせる。
ふわりと身体が浮上する。悠斗にお姫様抱っこをされていた。
向かう先は薄暗い部屋だった。小さなライトが照らされ、大きなベッドが鎮座している。恐怖が募る。
「……なに……するの?」
「ベッドですることなんて一つでしょ? でも方法はいっぱいあるよ。快楽、痛み、苦しみ。瀬菜はどんな調教がお望み?」
陰りを帯びた悠斗の口角が上がる。
「──っ、やっ、いやだッ‼︎ 降ろせッ‼︎」
「はいはい。暴れない。奴隷なのに注文が多いのはどうかと思うけど」
「俺は奴隷じゃない‼︎」
「へぇー、なら通りすがりの村人Aみたいな?」
「違うだろ……俺達、幼馴染……」
「あぁ、隣に住む村人Aね。村長の息子に悪戯した幼馴染の村人Aは、お詫びに自らの身体を差し出し奴隷になりました。めでたしめでたし……」
ベッドに放り投げられ、スプリングで身体がバウンドする。体勢を崩し起き上がろうとすると、悠斗が覆い被さってくる。
「幼馴染はもう終わりだよ。今日一日、身体だけでも俺のものにする。そしたら望み通り瀬菜の前から消えてあげる。一日だけ……そのあと瀬菜は自由だ。嬉しいでしょ?」
「……なに勝手なこと……消える? 俺はそんなこと望んでいない‼︎」
「なら──ッ‼︎」
悠斗の大きな声が部屋に響き渡る。
「なんで大っ嫌いって……言ったの」
くしゃりと顔を歪め、今にも泣きそうな面持ちをする悠斗。嫌いというひと言だけで、悠斗はこんなことをしているのだろうか。
目を広げ驚く俺は、迫る悠斗に動けずにいた。唇に唇が重なり、激しく奪い取られていく。悠斗にされるがまま舌を絡められ、鼻からくぐもった息が抜けていく。
「……んっ……ふっ……ゆう……と、ちが……うぅっ」
確かに嫌いと言ってしまった。けれどそれは俺の嫉妬心から来るものだ。言い訳を口にしようと声を出すが、口付けに声すら飲み込まれていく。
「ん、ふ……っ」
「お水飲んでおかないと……しんどくなるよ」
枯れた喉が潤っていく。悠斗は親鳥のように水を与え、唇を奪っていった。温まった身体がさらに火照り、行動と思考を鈍らせていく。悠斗の囁く声が、全く頭に入ってこない。口付けの合間にスルリとバスローブの紐を解かれ、気付けば手首を縛られていた。
「……なんで? こんなことしなくても俺は逃げない」
力なくそう呟く俺に、悠斗はどこまでも追い詰めてくる。
「おかしいな。そう言って逃げたのは誰だっけ? 首輪みたいなものだよ」
「……俺は犬じゃない」
「うん、そうだよ? 今は奴隷。犬のほうが良かった?」
それは悠斗が勝手に決めたことだ。人間以下と言われているようで、胸に棘が突き刺さるように痛み泣いている。手首に巻かれた紐を滲んだ視界で見つめ、なぜこんなことになってしまったのかと思考を巡らせる。
ふわりと身体が浮上する。悠斗にお姫様抱っこをされていた。
向かう先は薄暗い部屋だった。小さなライトが照らされ、大きなベッドが鎮座している。恐怖が募る。
「……なに……するの?」
「ベッドですることなんて一つでしょ? でも方法はいっぱいあるよ。快楽、痛み、苦しみ。瀬菜はどんな調教がお望み?」
陰りを帯びた悠斗の口角が上がる。
「──っ、やっ、いやだッ‼︎ 降ろせッ‼︎」
「はいはい。暴れない。奴隷なのに注文が多いのはどうかと思うけど」
「俺は奴隷じゃない‼︎」
「へぇー、なら通りすがりの村人Aみたいな?」
「違うだろ……俺達、幼馴染……」
「あぁ、隣に住む村人Aね。村長の息子に悪戯した幼馴染の村人Aは、お詫びに自らの身体を差し出し奴隷になりました。めでたしめでたし……」
ベッドに放り投げられ、スプリングで身体がバウンドする。体勢を崩し起き上がろうとすると、悠斗が覆い被さってくる。
「幼馴染はもう終わりだよ。今日一日、身体だけでも俺のものにする。そしたら望み通り瀬菜の前から消えてあげる。一日だけ……そのあと瀬菜は自由だ。嬉しいでしょ?」
「……なに勝手なこと……消える? 俺はそんなこと望んでいない‼︎」
「なら──ッ‼︎」
悠斗の大きな声が部屋に響き渡る。
「なんで大っ嫌いって……言ったの」
くしゃりと顔を歪め、今にも泣きそうな面持ちをする悠斗。嫌いというひと言だけで、悠斗はこんなことをしているのだろうか。
目を広げ驚く俺は、迫る悠斗に動けずにいた。唇に唇が重なり、激しく奪い取られていく。悠斗にされるがまま舌を絡められ、鼻からくぐもった息が抜けていく。
「……んっ……ふっ……ゆう……と、ちが……うぅっ」
確かに嫌いと言ってしまった。けれどそれは俺の嫉妬心から来るものだ。言い訳を口にしようと声を出すが、口付けに声すら飲み込まれていく。
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