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第2幕 逃亡劇の果てに
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「立花君は噂通り、本当に王子様みたいだよねー! 今日来ないって聞いてたのに、居るから超興奮しちゃった♡ 見た瞬間、由香一目でときめいちゃったの♡ 彼女居ないって本当? 由香、立候補したいー♡」
佐藤さんが話す度に俺は落ち着きがなくなっていく。
「確かに今は彼女居ないけど、佐藤さんのこと全然知らないし、いきなりは……ね?」
「えー、付き合ってから知っていけばいいじゃん♡」
「うん、まぁ、そうだけど……適当に付き合うのは失礼でしょ? できれば真剣に付き合いたいし」
「やだぁ~、めちゃカッコイイ♡ もしかして悠斗君って結構一途? 由香も結構尽くすタイプだよ♡ お料理も得意だし、食べてもらいた~い♡ そうだ♪ 今度悠斗君のおうち行ってもいい?」
「ははっ……困ったな……」
やはり悠斗はモテる。立花君からすでに悠斗君に変わっていた。悠斗は人を惹き付ける。物腰が柔らかく、誰もが話しやすい。けど……。
会っていきなり立候補って、悠斗のなにを知っているんだ!
それに、そんなに引っ付くな!
なんで悠斗も好きにさせてるんだよ!
困っていないで、ハッキリしろ!
曖昧に答えるからつけ上がるんだろ!
あれ……?
俺、なんでこんなに怒っているんだ?
……これじゃ、まるで……。
──血の気が引く。喉まで込み上げてくる答えから逃げるように、柏木さんにゴメンと言い席を立ち出口に向かうと、扉のすぐ横に居た村上に腕を掴まれた。
「柳ちゃん?」
「あっ、ちょっと、そのトイレ……」
鏡の前に立ち青い顔の自分と対面すると、考えを振り切るように冷水で何度も顔を洗う。カラオケの大音量のせいなのか、鼓膜の中が膜がかったようにキーンとしている。
下を向いたまま水気を払っていると、トイレの扉が開き声を掛けられた。
「なんか顔色悪かったけど大丈夫?」
村上が俺の具合を確かめに来たようだ。
「……ゴメン。気使わせた?」
「全然! 幹事の務めだし気にしないでー」
「ちょっと、はしゃぎ過ぎたっぽい」
へらりと笑いごまかす。
そっとため息を吐くと、村上がじっと俺の顔を見ながら言った。
「本当に? 柳ちゃんさ、なーんか最近無理してるっていうか」
「えっ? あぁ、女の子の勢いにびっくりして。俺こういう感じ初めてだし」
「んーー、そうじゃなくて。俺が言うことじゃないけど、我慢しなくていいんじゃね?」
「我慢? 俺が……?」
言っていることが難し過ぎて良く分からない。
村上は人の感情に敏感なところがある。
「……わり、もうちょい休んだら、部屋戻るから」
「おう! どうしても無理そうなら言ってよ」
「うん。サンキューな」
まだなにか言いたそうだった村上に先に部屋に戻ってもらい、トイレに籠っている訳にもいかずロビーに向かう。ソファーに腰掛け、ボーッとしながら気持を落ち着かせようとしていた。けれどしばらくすると、今あまり見たくない人物が俺の横に腰を下ろした。
「せーな。どうしたの? 具合悪い?」
心配そうに悠斗が言う。
下を向いたまま首を横に振り大丈夫だと訴える。
「疲れちゃった?」
首を再度横に振ると、肩に手を回され優しく頭を撫でられブワッと体温が上昇する。優しさに勘違いをしそうな自分に嫌気がさす。
これはいつもの単なるスキンシップでしかない。俺に向ける笑顔も、ほかに向ける笑顔も大差はないのだ。女の子と楽しそうにする悠斗。頭の中にチラつく寄り添う姿。
──腹が立つ。
「……わ……な……」
「えっ? なに? 具合悪いなら、うち帰る?」
ぶわりと涙が出そうになるのを我慢し息を詰めると、胸につかえたドロドロしたなにかが一気に溢れ出してしまう。
「──俺に触るな‼︎ お前なんかッ──大っ嫌いだ‼︎」
佐藤さんが話す度に俺は落ち着きがなくなっていく。
「確かに今は彼女居ないけど、佐藤さんのこと全然知らないし、いきなりは……ね?」
「えー、付き合ってから知っていけばいいじゃん♡」
「うん、まぁ、そうだけど……適当に付き合うのは失礼でしょ? できれば真剣に付き合いたいし」
「やだぁ~、めちゃカッコイイ♡ もしかして悠斗君って結構一途? 由香も結構尽くすタイプだよ♡ お料理も得意だし、食べてもらいた~い♡ そうだ♪ 今度悠斗君のおうち行ってもいい?」
「ははっ……困ったな……」
やはり悠斗はモテる。立花君からすでに悠斗君に変わっていた。悠斗は人を惹き付ける。物腰が柔らかく、誰もが話しやすい。けど……。
会っていきなり立候補って、悠斗のなにを知っているんだ!
それに、そんなに引っ付くな!
なんで悠斗も好きにさせてるんだよ!
困っていないで、ハッキリしろ!
曖昧に答えるからつけ上がるんだろ!
あれ……?
俺、なんでこんなに怒っているんだ?
……これじゃ、まるで……。
──血の気が引く。喉まで込み上げてくる答えから逃げるように、柏木さんにゴメンと言い席を立ち出口に向かうと、扉のすぐ横に居た村上に腕を掴まれた。
「柳ちゃん?」
「あっ、ちょっと、そのトイレ……」
鏡の前に立ち青い顔の自分と対面すると、考えを振り切るように冷水で何度も顔を洗う。カラオケの大音量のせいなのか、鼓膜の中が膜がかったようにキーンとしている。
下を向いたまま水気を払っていると、トイレの扉が開き声を掛けられた。
「なんか顔色悪かったけど大丈夫?」
村上が俺の具合を確かめに来たようだ。
「……ゴメン。気使わせた?」
「全然! 幹事の務めだし気にしないでー」
「ちょっと、はしゃぎ過ぎたっぽい」
へらりと笑いごまかす。
そっとため息を吐くと、村上がじっと俺の顔を見ながら言った。
「本当に? 柳ちゃんさ、なーんか最近無理してるっていうか」
「えっ? あぁ、女の子の勢いにびっくりして。俺こういう感じ初めてだし」
「んーー、そうじゃなくて。俺が言うことじゃないけど、我慢しなくていいんじゃね?」
「我慢? 俺が……?」
言っていることが難し過ぎて良く分からない。
村上は人の感情に敏感なところがある。
「……わり、もうちょい休んだら、部屋戻るから」
「おう! どうしても無理そうなら言ってよ」
「うん。サンキューな」
まだなにか言いたそうだった村上に先に部屋に戻ってもらい、トイレに籠っている訳にもいかずロビーに向かう。ソファーに腰掛け、ボーッとしながら気持を落ち着かせようとしていた。けれどしばらくすると、今あまり見たくない人物が俺の横に腰を下ろした。
「せーな。どうしたの? 具合悪い?」
心配そうに悠斗が言う。
下を向いたまま首を横に振り大丈夫だと訴える。
「疲れちゃった?」
首を再度横に振ると、肩に手を回され優しく頭を撫でられブワッと体温が上昇する。優しさに勘違いをしそうな自分に嫌気がさす。
これはいつもの単なるスキンシップでしかない。俺に向ける笑顔も、ほかに向ける笑顔も大差はないのだ。女の子と楽しそうにする悠斗。頭の中にチラつく寄り添う姿。
──腹が立つ。
「……わ……な……」
「えっ? なに? 具合悪いなら、うち帰る?」
ぶわりと涙が出そうになるのを我慢し息を詰めると、胸につかえたドロドロしたなにかが一気に溢れ出してしまう。
「──俺に触るな‼︎ お前なんかッ──大っ嫌いだ‼︎」
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