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第2幕 逃亡劇の果てに
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ただ普通に白のYシャツに、黒の細身のパンツを履いているだけなのに絵になるからイケメンはマジで恐ろしい。自分が同じ服を着てもこうはいかない。
俺のオシャレ無意味だった?
神様って本当に不公平だ。
「今日の瀬菜はオシャレさんだね?」
「そりゃどーも!」
「ふふっ、電車も久しぶりだね?」
「そういえばそうだな。白桜駅前で色々済んじゃうもんな」
うちの街は意外と栄えているので滅多に電車に乗ることはない。久々に電車に乗るのか、悠斗はどこか嬉しそうだ。いつもは大人っぽい悠斗も子供らしくて可愛いところあるなと、四ヶ月早く産まれた俺はお兄ちゃん気分になる。
電車に乗ると混雑する車内を見渡す。夕方から飲みに行く社会人や大学生。夕食に間に合うように帰宅を急ぐ親子連れなど、老若男女で溢れ返っていた。駅に停まる度に人が乗り降りし、大きな駅になると乗ってくる人のほうが明らかに多い。
慣れない俺は潰され窒息しそうになってしまう。そんな俺を見かねたのか、悠斗が俺をドア隅へと引っ張り出し、潰されないように囲ってくれた。
「大丈夫? 凄い人だね」
「はぁ……マジ圧迫死するかと思った……」
安全地帯に大きくため息を吐き出すと、悠斗が俺を引き寄せてくる。
「はぐれないように、くっ付いていて?」
「お、おう!」
わずかに隙間を作り、俺が苦しくないように壁を作ってくれる。悠斗のシャツを掴みじっとしていると、四駅目になりさらに人が乗車してきた。
すっぽりと悠斗の腕に抱かれる形になってしまう。恥ずかしくて距離を開けようとしたが、ビクリともせず、諦めて悠斗の胸に顔を埋めていた。
ドクドクと規則正しく鳴る悠斗の心臓の音を聴き、落ち着くなと思っていると、お尻に違和感を感じる。
……お尻……撫でられてる?
不審げに悠斗を見上げると、お決まりのニッコリ爽やかスマイル。
「おい、お前……」
「ん? もう少しだから我慢して?」
「手……なにしてんの……?」
「いやだな。不可抗力だよ?」
しれっと言う悠斗を睨み上げると、友人に痴漢されてますとは流石に騒げない俺は、早く到着しろと唱えながら悠斗のお触りを我慢した。
そうこうしているうちに百合樹駅に到着し、悠斗に腕を引かれてホームに降り立った。
「俺、公衆の面前で汚された……」
「たまたま手がそこにあっただけでしょ?」
「俺の触ったって仕方ないだろが!」
「ふにふにで気持ちよかったんだもん♡」
「やっぱり触っていたじゃんか!」
言い合いをしながら歩いていると、三馬鹿トリオ達が改札前で手を振っていた。
話はお終いとばかりに改札を潜り合流する。
「おっす! 柳ちゃん王子連れて来てくれたんだー。彼女できたって噂だったし、今日は来ないかと思った!」
「こんにちわ。村上君、僕は彼女いないよ。変な噂広げないでくれる?」
「「「え~~! 違うの⁉︎」」」
「違うみたいだ。どうやら付き纏われてたらしい」
「「「なんて勿体ない……」」」
お前らは三子か……と思うような、見事なハモリを繰り出す三馬鹿トリオ。
「まぁ、今日はみんなで盛り上がろう~。定番だけどカラオケで合流だから。そんじゃ、行きますか!」
村上が纏めると、五人で女の子達と待ち合わせのカラオケ店に向かった。
俺のオシャレ無意味だった?
神様って本当に不公平だ。
「今日の瀬菜はオシャレさんだね?」
「そりゃどーも!」
「ふふっ、電車も久しぶりだね?」
「そういえばそうだな。白桜駅前で色々済んじゃうもんな」
うちの街は意外と栄えているので滅多に電車に乗ることはない。久々に電車に乗るのか、悠斗はどこか嬉しそうだ。いつもは大人っぽい悠斗も子供らしくて可愛いところあるなと、四ヶ月早く産まれた俺はお兄ちゃん気分になる。
電車に乗ると混雑する車内を見渡す。夕方から飲みに行く社会人や大学生。夕食に間に合うように帰宅を急ぐ親子連れなど、老若男女で溢れ返っていた。駅に停まる度に人が乗り降りし、大きな駅になると乗ってくる人のほうが明らかに多い。
慣れない俺は潰され窒息しそうになってしまう。そんな俺を見かねたのか、悠斗が俺をドア隅へと引っ張り出し、潰されないように囲ってくれた。
「大丈夫? 凄い人だね」
「はぁ……マジ圧迫死するかと思った……」
安全地帯に大きくため息を吐き出すと、悠斗が俺を引き寄せてくる。
「はぐれないように、くっ付いていて?」
「お、おう!」
わずかに隙間を作り、俺が苦しくないように壁を作ってくれる。悠斗のシャツを掴みじっとしていると、四駅目になりさらに人が乗車してきた。
すっぽりと悠斗の腕に抱かれる形になってしまう。恥ずかしくて距離を開けようとしたが、ビクリともせず、諦めて悠斗の胸に顔を埋めていた。
ドクドクと規則正しく鳴る悠斗の心臓の音を聴き、落ち着くなと思っていると、お尻に違和感を感じる。
……お尻……撫でられてる?
不審げに悠斗を見上げると、お決まりのニッコリ爽やかスマイル。
「おい、お前……」
「ん? もう少しだから我慢して?」
「手……なにしてんの……?」
「いやだな。不可抗力だよ?」
しれっと言う悠斗を睨み上げると、友人に痴漢されてますとは流石に騒げない俺は、早く到着しろと唱えながら悠斗のお触りを我慢した。
そうこうしているうちに百合樹駅に到着し、悠斗に腕を引かれてホームに降り立った。
「俺、公衆の面前で汚された……」
「たまたま手がそこにあっただけでしょ?」
「俺の触ったって仕方ないだろが!」
「ふにふにで気持ちよかったんだもん♡」
「やっぱり触っていたじゃんか!」
言い合いをしながら歩いていると、三馬鹿トリオ達が改札前で手を振っていた。
話はお終いとばかりに改札を潜り合流する。
「おっす! 柳ちゃん王子連れて来てくれたんだー。彼女できたって噂だったし、今日は来ないかと思った!」
「こんにちわ。村上君、僕は彼女いないよ。変な噂広げないでくれる?」
「「「え~~! 違うの⁉︎」」」
「違うみたいだ。どうやら付き纏われてたらしい」
「「「なんて勿体ない……」」」
お前らは三子か……と思うような、見事なハモリを繰り出す三馬鹿トリオ。
「まぁ、今日はみんなで盛り上がろう~。定番だけどカラオケで合流だから。そんじゃ、行きますか!」
村上が纏めると、五人で女の子達と待ち合わせのカラオケ店に向かった。
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