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第2幕 逃亡劇の果てに
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教室に入ると三馬鹿トリオに挨拶もせず席に着く。そんなご機嫌斜めな俺に、勇敢にも立ち向かってくる村上。
「柳ちゃんおはー♪ 今日は早い登校だね? 王子はどうしたの?」
「確かに、今日は見かけないね?」
「菜っちゃん! もしや捨てられちゃったの⁉︎」
「うるせぇ! 俺だってひとりで登校ぐらいする!」
「あら、やなっちゃん機嫌斜め?」
「低血圧なだけだ!」
「それなら血圧を上げてあげよう。例のプチ合コン、今週土曜日の十七時からに決定~♪」
どうだと村上が言うと、辻と奥井が雄叫びを上げた。
「やりー‼︎ 超楽しみ‼︎」
「でかしたぞ! 村上ーー!」
ムッとしていた俺も、一瞬ポカンとするものの立ち上がりギュッと手のひらを握りしめていた。
「……そっか……それだ‼︎」
急に機嫌良く声を上げる俺に、どうしたんだと顔を見合わせている三馬鹿トリオを横目に、俺も悠斗に負けないぐらい女の子と戯れてやるんだからなと、心の中で意気込んでいた。
その日は珍しく悠斗に遭遇することがなかった。手伝いが終わったあと、うちに寄ると思っていたが、悠斗は結局眠る頃になっても姿を見せることはなかった。
***
朝、昨日と同じ時間になると着信が鳴った。けれど苛立ちが蘇り、俺は電話にも出ずに完全無視を決め込んだ。メッセージも何通か受信していたが、既読スルーでこちらから送信することはしなかった。
今日もひとりで登校し席に着くと、辻がダッシュで掛け寄ってくる。辻は興奮した様子で鼻息荒く話し始めた。
「なぁなぁ! 王子って彼女できたの⁉」
思ってもいなかった質問に息を詰まらせると、村上と奥井も集まり出す。
「なになに? 事件でもあった?」
「お前、興奮していないで分かるように話せよ……」
「それがさ! 俺見ちゃって! ある意味事件だよ。それを確認したくて、やなっちゃんに聞いていたんだけど!」
「俺……なにも知らない……」
俺の返答に辻はガクッと肩を落としながら言う。
「そっか、やなっちゃんなら聞いていると思っていたんだけど。俺さ、昨日デッカい池のある白桜中央公園に、二十時頃犬の散歩で通りかかったんだけど、王子と胸のデカイ女の子がベンチに座っててさ。そんで女の子が立ち上がったと思ったら、二人で抱き合ってキスしていたんだよ!」
「「うそーー‼︎ まじか‼︎」」
村上と奥井は辻の話に声を揃え驚き興奮している。
「まじだって! やなっちゃん、ここのところお迎えとかお見送りないし、彼女優先とかなんかなって」
三人の視線が俺に注がれる。
「ほっ、本当に知らねーよ! あいつ最近、夕涼みの手伝い駆り出されてて話とかしてねーし。大体悠斗に彼女ができようができまいが、……俺には、関係ない……だろ……」
そうだ関係ない。いずれは悠斗にも俺にも彼女ができ、結婚して子供を作る。いつまでも今みたいに過ごせる訳ではないのだ。
悠斗から報告がなくてムカつくだけだ。
俺だって土曜日に絶対彼女見つけてやる!
辻の話を聞いた俺はチクリと胸になにかが刺さるような違和感を感じながらも、彼女作るぞと心の中で宣言し胸の違和感を紛らわせていた。
「柳ちゃんおはー♪ 今日は早い登校だね? 王子はどうしたの?」
「確かに、今日は見かけないね?」
「菜っちゃん! もしや捨てられちゃったの⁉︎」
「うるせぇ! 俺だってひとりで登校ぐらいする!」
「あら、やなっちゃん機嫌斜め?」
「低血圧なだけだ!」
「それなら血圧を上げてあげよう。例のプチ合コン、今週土曜日の十七時からに決定~♪」
どうだと村上が言うと、辻と奥井が雄叫びを上げた。
「やりー‼︎ 超楽しみ‼︎」
「でかしたぞ! 村上ーー!」
ムッとしていた俺も、一瞬ポカンとするものの立ち上がりギュッと手のひらを握りしめていた。
「……そっか……それだ‼︎」
急に機嫌良く声を上げる俺に、どうしたんだと顔を見合わせている三馬鹿トリオを横目に、俺も悠斗に負けないぐらい女の子と戯れてやるんだからなと、心の中で意気込んでいた。
その日は珍しく悠斗に遭遇することがなかった。手伝いが終わったあと、うちに寄ると思っていたが、悠斗は結局眠る頃になっても姿を見せることはなかった。
***
朝、昨日と同じ時間になると着信が鳴った。けれど苛立ちが蘇り、俺は電話にも出ずに完全無視を決め込んだ。メッセージも何通か受信していたが、既読スルーでこちらから送信することはしなかった。
今日もひとりで登校し席に着くと、辻がダッシュで掛け寄ってくる。辻は興奮した様子で鼻息荒く話し始めた。
「なぁなぁ! 王子って彼女できたの⁉」
思ってもいなかった質問に息を詰まらせると、村上と奥井も集まり出す。
「なになに? 事件でもあった?」
「お前、興奮していないで分かるように話せよ……」
「それがさ! 俺見ちゃって! ある意味事件だよ。それを確認したくて、やなっちゃんに聞いていたんだけど!」
「俺……なにも知らない……」
俺の返答に辻はガクッと肩を落としながら言う。
「そっか、やなっちゃんなら聞いていると思っていたんだけど。俺さ、昨日デッカい池のある白桜中央公園に、二十時頃犬の散歩で通りかかったんだけど、王子と胸のデカイ女の子がベンチに座っててさ。そんで女の子が立ち上がったと思ったら、二人で抱き合ってキスしていたんだよ!」
「「うそーー‼︎ まじか‼︎」」
村上と奥井は辻の話に声を揃え驚き興奮している。
「まじだって! やなっちゃん、ここのところお迎えとかお見送りないし、彼女優先とかなんかなって」
三人の視線が俺に注がれる。
「ほっ、本当に知らねーよ! あいつ最近、夕涼みの手伝い駆り出されてて話とかしてねーし。大体悠斗に彼女ができようができまいが、……俺には、関係ない……だろ……」
そうだ関係ない。いずれは悠斗にも俺にも彼女ができ、結婚して子供を作る。いつまでも今みたいに過ごせる訳ではないのだ。
悠斗から報告がなくてムカつくだけだ。
俺だって土曜日に絶対彼女見つけてやる!
辻の話を聞いた俺はチクリと胸になにかが刺さるような違和感を感じながらも、彼女作るぞと心の中で宣言し胸の違和感を紛らわせていた。
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