王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
26 / 716
第2幕 逃亡劇の果てに

05

しおりを挟む
 教室に入ると三馬鹿トリオに挨拶もせず席に着く。そんなご機嫌斜めな俺に、勇敢にも立ち向かってくる村上。

「柳ちゃんおはー♪ 今日は早い登校だね? 王子はどうしたの?」
「確かに、今日は見かけないね?」
「菜っちゃん! もしや捨てられちゃったの⁉︎」
「うるせぇ! 俺だってひとりで登校ぐらいする!」
「あら、やなっちゃん機嫌斜め?」
「低血圧なだけだ!」
「それなら血圧を上げてあげよう。例のプチ合コン、今週土曜日の十七時からに決定~♪」

 どうだと村上が言うと、辻と奥井が雄叫びを上げた。

「やりー‼︎ 超楽しみ‼︎」
「でかしたぞ! 村上ーー!」

 ムッとしていた俺も、一瞬ポカンとするものの立ち上がりギュッと手のひらを握りしめていた。

「……そっか……それだ‼︎」

 急に機嫌良く声を上げる俺に、どうしたんだと顔を見合わせている三馬鹿トリオを横目に、俺も悠斗に負けないぐらい女の子と戯れてやるんだからなと、心の中で意気込んでいた。


 その日は珍しく悠斗に遭遇することがなかった。手伝いが終わったあと、うちに寄ると思っていたが、悠斗は結局眠る頃になっても姿を見せることはなかった。


***


 朝、昨日と同じ時間になると着信が鳴った。けれど苛立ちが蘇り、俺は電話にも出ずに完全無視を決め込んだ。メッセージも何通か受信していたが、既読スルーでこちらから送信することはしなかった。
 今日もひとりで登校し席に着くと、辻がダッシュで掛け寄ってくる。辻は興奮した様子で鼻息荒く話し始めた。

「なぁなぁ! 王子って彼女できたの⁉」

 思ってもいなかった質問に息を詰まらせると、村上と奥井も集まり出す。

「なになに? 事件でもあった?」
「お前、興奮していないで分かるように話せよ……」
「それがさ! 俺見ちゃって! ある意味事件だよ。それを確認したくて、やなっちゃんに聞いていたんだけど!」
「俺……なにも知らない……」

 俺の返答に辻はガクッと肩を落としながら言う。

「そっか、やなっちゃんなら聞いていると思っていたんだけど。俺さ、昨日デッカい池のある白桜中央公園に、二十時頃犬の散歩で通りかかったんだけど、王子と胸のデカイ女の子がベンチに座っててさ。そんで女の子が立ち上がったと思ったら、二人で抱き合ってキスしていたんだよ!」

「「うそーー‼︎ まじか‼︎」」

 村上と奥井は辻の話に声を揃え驚き興奮している。

「まじだって! やなっちゃん、ここのところお迎えとかお見送りないし、彼女優先とかなんかなって」

 三人の視線が俺に注がれる。

「ほっ、本当に知らねーよ! あいつ最近、夕涼みの手伝い駆り出されてて話とかしてねーし。大体悠斗に彼女ができようができまいが、……俺には、関係ない……だろ……」

 そうだ関係ない。いずれは悠斗にも俺にも彼女ができ、結婚して子供を作る。いつまでも今みたいに過ごせる訳ではないのだ。

 悠斗から報告がなくてムカつくだけだ。
 俺だって土曜日に絶対彼女見つけてやる!

 辻の話を聞いた俺はチクリと胸になにかが刺さるような違和感を感じながらも、彼女作るぞと心の中で宣言し胸の違和感を紛らわせていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

一度くらい、君に愛されてみたかった

和泉奏
BL
昔ある出来事があって捨てられた自分を拾ってくれた家族で、ずっと優しくしてくれた男に追いつくために頑張った結果、結局愛を感じられなかった男の話

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

【本編完結】隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。

しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。 つきましては和平の為の政略結婚に移ります。 冷酷と呼ばれる第一王子。 脳筋マッチョの第二王子。 要領良しな腹黒第三王子。 選ぶのは三人の難ありな王子様方。 宝石と貴金属が有名なパルス国。 騎士と聖女がいるシェスタ国。 緑が多く農業盛んなセラフィム国。 それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。 戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。 ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。 現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。 基本甘々です。 同名キャラにて、様々な作品を書いています。 作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。 全員ではないですが、イメージイラストあります。 皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*) カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m 小説家になろうさんでも掲載中。

処理中です...