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第2幕 逃亡劇の果てに
01
しおりを挟む──月曜日。
一週間が始まる重苦しい時間の始まりです。
学生の俺達にとって働いている方々に申し訳ないのですが、そんな重苦しい日々もあと十日ほどで終わりです!
確かに夏休み中は宿題とか、宿題とか、宿題とかありますけどね!
けれど、俺には悠斗先生がいるからへっちゃらです!
もちろん丸写しなんてしませんよ!
しっかり先生に教えてもらってやりますよ!
それはさて置き……。
俺には今日は殺らなければ、ああ、違った……遣らなければならない使命がある。
いつも通り悠斗に教室まで送られ、返事もそこそこに教室の片隅で世間話をしている三馬鹿トリオの元へ駆け寄り、挨拶の代わりに思いっきり両手で机を叩いた。
バンッ──‼︎
「おはよう。君たち……」
俺のそんな行動に、三馬鹿トリオはキョトン顔をしている。
「わぉ! 柳ちゃんてば、朝から過激~♡」
「やなっちおはよー。いい休日だった?」
「菜っちゃん。おっはー!」
すぐにニヤつく顔になる三人は、順番に朝の挨拶を言った。
「村上! 過激にもなるだろ! 辻! お前たちのおかげでそりゃ! 奥井! ベールに包んだようで包まれていない遠回しな感じで、菜っちゃんゆーな!」
口早に返答をし文句を言ってやろうと意気込み、次の言葉を用意していたが、俺が言葉を発する前に村上が真剣な顔で話し始めた。
「俺ら心配していたんだ。柳ちゃんってば高校生にもなって、あっちに興味全くなさそうだし、男の子として大丈夫かなぁーって」
「そうそう。修行僧も真っ青だよ。切っ掛けがあればきっと少しはって……みんなで考えたんだ」
「彼女が急にできてもこれでバッチリ、安心だよー。最近の女の子達って、意外とおませさんだから」
あれ?
こいつらそんなに深く考えてくれていたのか?
そう言われてみると、そんな気もしてきたぞ?
いざ彼女ができて全然手出してくれないから、別れるなんてことはざらにある気がする。
「そ、そっか……だよな。てかさ、お前らって一緒にあーゆーの観たりすんの?」
「まぁ、その時々だけど回し観したり、一緒に観るときもあるよねー?」
村上がそう言うと、続けて辻が言う。
「学生の楽しみだ。本当はいけないけど……それがまたね」
「そっそ、見つかったらヤバイけど。鑑賞会とかマジ背徳感満載で刺激的ってかさ。大人の仲間入りした気分になれるんだ」
辻の言葉に同意するように、奥井が補足の声をあげていた。
俺は休日に体験したことを思い浮かべ、躊躇いつつも疑問を口にした。
「そうなのか? でもさ、一緒に観るときって、その……あ、アレが勃っちゃったらどうしてる?」
「んートイレ行くか、我慢できなきゃその場でやるかな?」
「ほら、同じ男同士だし? おっきしてるのは一緒だし?」
「最初は抵抗あったけど……みんなでヤレば怖くない的な?」
否定的ではない回答に肩の力が抜ける。
「そっか……なら、いいんだ……」
皆意外と考えは一緒らしい。悠斗にも普通と言われたが、さらに安心感を得ることができた。多数決で決めるものではないが、悠斗が特別変だったということでもないようだ。
そんな風に考え込む俺に、村上がニヤニヤした表情で言う。
「なに? 王子となんかあったん?」
「別にねーし!」
「まさか王子がどこで仕入れたのか聞いてくるとは思わなかったけど、柳ちゃん本当になにも知らないから、王子にやり方教えてあげてって頼んだんだ。だって……グフッ……皮剥き器って。俺マジで柳ちゃんが天使に見えたもん」
土曜日に村上と遭遇したときのことが脳裏に蘇り、なにも知らなかった自分が恥ずかしくて堪らなくなる。悠斗が急にあんな風になったのは、村上の入れ知恵といって間違いなさそうだ。
顔を真っ赤にしていると、担任が教室に入ってきた。村上はまだなにか聞きたそうにしていたが、俺は答えることなく早々に自分の席に着いた。
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