王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第1幕 物知り王子と無知な俺 〜高校一年生編〜

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「あぁーー、すげー怖かった!」

 鳥肌を立たせながら、顔は笑顔なちぐはぐな俺。
 ホラー映画は最高にスリルがある内容だった。おそらく今まで観た作品で一二を争う傑作だ。

「なぁ、風呂のシーンやばくなかったか? 俺、ちびるかと思った……」
「うん、あのシーンだよね? お湯に浸かっていると……長い黒髪がぶわって下から湧き出て、お湯から女の目の下辺りまでぬーって。止まったと思ったら目を見開いて、しかも白目剝いて血の涙流すとか寒イボ。音響もピッタリのタイミングだし、思わず瀬菜に抱きついちゃった♡」
「悠斗がいきなり抱きついて来るから、俺のが増し増しで怖かったんだぞ!」
「ごめん。瀬菜悲鳴上げていたもんね?」

 映画の感想を言い合いながら、ショッピングモールも覗いて行くことにした。欲しい物は特になかったが、ブランド店に立ち寄り無駄に試着してみたり、携帯ショップで最新機種を物色したりと、意外と楽しむことができた。
 夕食は悠斗が作ると申し出てくれたので、足りない食材を調達しに食品売り場へ。たまには和食にしようと、悠斗はポイポイとカゴに必要食材を入れていく。

「悠斗、もう献立決めたのか? なにも見なくてもチョイスできるなんて流石だな!」
「将来のために色々作ってみたら作る過程が意外と楽しくて、気付いたらメジャーなものは作れるようになったよ? だからかな? イメージすると必要な食材、すぐに出てくるのかな?」
「へー凄いな。俺なんてひとりが多くて作る機会だけはあるのに、全然センスないんだよなー」
「瀬菜、食べる専門だからね。……あっ! 肝心なゴボウ買わなきゃ」

 早速実践してくれるのか!
 悠斗が気に入ったら貰い物だけど、あげるのもありだな。
 俺の場合、宝の持ち腐れになっちゃうし!

 会計を済ませ、全部荷物を持とうとする悠斗の片方の手から荷物を分捕ると、女じゃねーと、あっかんべーしてやった。

 本当に過保護過ぎて、俺がダメ男になるじゃないか!

「なんか新婚さんみたいだよね。買い物袋ぶら下げて」
「健全な高校男子らしくはないな! 言っとくけど悠斗が嫁役だかんな!」

 急にぱたっと立ち止まる悠斗。
 振り向くと下を向いてプルプルしている。

「悠斗? おい、どうしたんだよ……」

 えっ! そんなに嫁役やだったのか?
 なんなら俺が嫁役でいいよ!
 なんもできないけど……。

「なぁ、具合でも悪いのか?」

 俺の言葉にハッとしたと思えば、震えが止まりパッと顔を上げてきた。一瞬ドキッとしてしまう。シャボン玉が辺りに飛んでいると錯覚するような笑顔を見せるからだ。

「な、なんだよ、大丈夫か? ビックリするだろが、早く帰ろうぜ! 歩き回ったし腹減ってきた!」
「へへっ。うん、つい想像しちゃって……行こうか」

 なんの想像を繰り広げていたかは謎だが、悠斗の見せた微笑みにまさかドキドキするとは思わなった。爽やかイケメンはこれだから狡いと、火照る顔を勘付かれないように悠斗を促し、早歩きで家路についた。
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