王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第1幕 物知り王子と無知な俺 〜高校一年生編〜

01

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 人生おとぎ話のようには進まないものだ。
 もしゆうちゃんがゆうちゃんで居てくれたなら、俺の平凡な日常も少しはましになっていたかもしれない。そう、あんなモノがついていたばっかりに……。
 いや、待てよ? これは夢で、現実世界の俺は、ゆうちゃんとラブラブな日常を謳歌しているはずだ。小鳥のように囁く優しい声で、今日も俺を目覚めさせてくれる──。

「──な──っ、瀬菜、起きて?」
「んっ……ゆうちゃん……」

 可愛い俺のゆうちゃん……俺の──。

「もう、瀬菜ってば!」
「ちんこ……は、付いていちゃ……らめら……」

 女の子には必要ないよ?
 夢でも俺に悪戯しちゃダメなんだから。

「……ちんこ⁇ なに寝ぼけているの……おーきーろー」

 眉を寄せ唸っていると、身体を激しく揺さぶられる。

「学校遅刻しちゃうよ‼」
「んーっ……俺が取ってあげる……からねー……えへへ…………ん? ヤバイ! 学校! ゆうちゃんッ!」

 パッチっと目を見開くと、彼女のゆうちゃんではなく、幼馴染の悠斗が苦笑いで俺を見下ろしていた。その現実に大きなため息を吐き出す。どうやら現実世界はやはり甘くはないようだ。

「はぁ~……はよ。悠斗……」
「うん、おはよう。一体どんな夢見ていたの? それに早くしないと遅刻しちゃうよ。制服用意しておくから、顔洗って歯磨きしておいで? 朝ご飯は……歩きながらバナナかな」

 あぁ──最悪の目覚めだ……。
 昔の捨て去りたい黒歴史の夢を見るなんて……。

 幼い日の遠い記憶。丁度こんな暑い季節だった気がする。
 俺と悠斗は出会った頃、それは色々な勘違いもあったが、変わらず仲のいい友人関係を築いている。小学校、中学校と隣にはいつも悠斗が居た。
 頭のいい悠斗とは、中学が最後の学生生活になると俺は思っていた。けれど悠斗は高校になった今でもこうして俺の隣に居る。家から歩いて二十分ほどの私立白桜南はくおうみなみ高等学校に今年の四月から通い出した。
 クラスは別々になってしまったが、こうして毎朝甲斐甲斐しく起こしに来てくれる。俺の家族は三人。単身赴任のオヤジとお医者様な不規則な勤務のおふくろ。そんな家庭環境で暮らす俺を、隣のよしみで立花家が自然とサポートしてくれているのだ。

「お待たせ!」
「はい、鞄」
「えへへっ、いつもありがとうな!」
「ふふっ……どういたしまして」

 ニコッと微笑む朝から眩しいキラキラスマイルの悠斗を、鍵を閉めて見上げると、以前よりも見上げる位置が変わったような気がする。毎日会っているというのに気付くということは、悠斗はまだまだ成長中のようだ。

「そういや悠斗、最近また背伸びた?」
「どうかな? 入学したときの測定は、百八十三センチだった。そんなにあるとは思えないけどね。瀬菜はあんまり変わらないね」
「どうせチビだよ! 卒業する頃には悠斗越えしてっから!」
「ふふっ、楽しみにしているね」

 こうして朝と帰りは大体一緒に登下校し、たわいのない会話をする。割と平穏な日々を過ごしている……のだが……。
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