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「えっ……いいの? 俺なんも用意してねぇ」
「大したものじゃないよ。お世話になってるお礼みたいな?」
「……あんがと……そんじゃ遠慮なく」
胸の中に投げられたのはラッピングされた小さな紙袋だった。今すぐ開けたい衝動に駆られたが、時間がなく渋々ロッカーへと仕舞い込みフロアへと向かった。
昼間は常連のお客さんも見かけ、写真を一緒に撮ったりとプチサンタ姿に喜んで貰えた。夜になるとムードのある灯りと、店の中を飾ったライトアップがクリスマスらしさを演出している。ドレスアップした上品な女性が多く、控えめに接してくれるのがありがたい。それでもお酒が入るとやはりプライベートを根掘り葉掘り聞かれてしまう。笑顔でやんわりと逃げるが、いい加減頰が引きつりそうだ。
こんなときこそ双子の出番ではないのか? そう思うが肝心な双子は冬馬に初めて会ったときから店には顔を出していない。もちろんプライベートでも会っていないし、連絡すら寄越さない始末。
「……調子が狂うな……」
大きなため息を漏らすと一気に疲労が襲ってくる。時計に目を向けるが視界がぼやけて確認できない。くらりとするとなにか温かい物体に額がぶつかる。
「お疲れ様、棉紅利。明日のシフトだけどお前どうする? 長丁場だったしヘルプも確保できたから休みでも問題ないぞ?」
神の声だろうか?
朦朧とする頭が幻聴を聴かせているのかもしれない。
「……お~い。お前大丈夫か? 明日はゆっくり休め」
「店長……好きです」
ヘロヘロと店長の胸の中に項垂れると、逞しい腰に腕を回しムギュと抱きつき感謝を伝える。どうやら幻聴ではなかったようだ。最高のクリスマスプレゼントを貰えた気分である。
「まだちょい早いけど、上がっていいぞ。タイムカードはおまけで俺が押しておく」
「……えっ? 俺クビっすか?」
「違うよ。むしろ頑張ってくれたご褒美だ。ここのところ毎日フルで入ってくれていただろ? お前にばかり負担掛けて悪かったと俺も反省しているんだ」
「──うぅ……てんじょ~マジ神っす」
店長の神の一声で疲れが吹き飛んだ気分だ。帰って速攻ベッドにダイブしたい。今にも眠ってしまいそうな瞼を擦り着替えを済ませると、そっとお客さん用の出入り口から外へと出る。
眠くても俺の頭はまだ動いてくれていた。そう、逃亡である。
従業員用の裏口から出るのはいけないと俺の本能は伝えていた。冬馬に気付かれないように下準備も万端だ。リバーシブルのモッズコートは見た目を変え、冬の必需品のマスクと普段被らないニットキャップで変装した。
賑わう街を横切ると、眠気覚ましに缶コーヒーを片手に駅のホームのベンチに腰を下ろした。
少し自意識過剰過ぎただろうか。けれどどうしてか今日は会いたくなかった。クリスマスという甘いイベントで流されてしまう自分を想像してしまう。
あいつら……怒っているかな……。
バレるのも時間の問題だ。俺を捕獲できなかった冬馬はもしかすると双子に説教を食らっているかもしれない。
「大したものじゃないよ。お世話になってるお礼みたいな?」
「……あんがと……そんじゃ遠慮なく」
胸の中に投げられたのはラッピングされた小さな紙袋だった。今すぐ開けたい衝動に駆られたが、時間がなく渋々ロッカーへと仕舞い込みフロアへと向かった。
昼間は常連のお客さんも見かけ、写真を一緒に撮ったりとプチサンタ姿に喜んで貰えた。夜になるとムードのある灯りと、店の中を飾ったライトアップがクリスマスらしさを演出している。ドレスアップした上品な女性が多く、控えめに接してくれるのがありがたい。それでもお酒が入るとやはりプライベートを根掘り葉掘り聞かれてしまう。笑顔でやんわりと逃げるが、いい加減頰が引きつりそうだ。
こんなときこそ双子の出番ではないのか? そう思うが肝心な双子は冬馬に初めて会ったときから店には顔を出していない。もちろんプライベートでも会っていないし、連絡すら寄越さない始末。
「……調子が狂うな……」
大きなため息を漏らすと一気に疲労が襲ってくる。時計に目を向けるが視界がぼやけて確認できない。くらりとするとなにか温かい物体に額がぶつかる。
「お疲れ様、棉紅利。明日のシフトだけどお前どうする? 長丁場だったしヘルプも確保できたから休みでも問題ないぞ?」
神の声だろうか?
朦朧とする頭が幻聴を聴かせているのかもしれない。
「……お~い。お前大丈夫か? 明日はゆっくり休め」
「店長……好きです」
ヘロヘロと店長の胸の中に項垂れると、逞しい腰に腕を回しムギュと抱きつき感謝を伝える。どうやら幻聴ではなかったようだ。最高のクリスマスプレゼントを貰えた気分である。
「まだちょい早いけど、上がっていいぞ。タイムカードはおまけで俺が押しておく」
「……えっ? 俺クビっすか?」
「違うよ。むしろ頑張ってくれたご褒美だ。ここのところ毎日フルで入ってくれていただろ? お前にばかり負担掛けて悪かったと俺も反省しているんだ」
「──うぅ……てんじょ~マジ神っす」
店長の神の一声で疲れが吹き飛んだ気分だ。帰って速攻ベッドにダイブしたい。今にも眠ってしまいそうな瞼を擦り着替えを済ませると、そっとお客さん用の出入り口から外へと出る。
眠くても俺の頭はまだ動いてくれていた。そう、逃亡である。
従業員用の裏口から出るのはいけないと俺の本能は伝えていた。冬馬に気付かれないように下準備も万端だ。リバーシブルのモッズコートは見た目を変え、冬の必需品のマスクと普段被らないニットキャップで変装した。
賑わう街を横切ると、眠気覚ましに缶コーヒーを片手に駅のホームのベンチに腰を下ろした。
少し自意識過剰過ぎただろうか。けれどどうしてか今日は会いたくなかった。クリスマスという甘いイベントで流されてしまう自分を想像してしまう。
あいつら……怒っているかな……。
バレるのも時間の問題だ。俺を捕獲できなかった冬馬はもしかすると双子に説教を食らっているかもしれない。
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