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風呂から上がり髪を乾かしていると、プ~ンと芳しい匂いが漂ってきた。その匂いは俺の腹を直撃し、時間と共にどんどん濃くなっていく。
口の中に溜まりだす唾をゴクリと飲み込むと、まるでエアー食事をとっているような疑似体験に腹の虫が暴れだす。昨夜からなにも食べていないのだ。
早く着替えて家に帰ろう。
帰りがけにおしゃれカフェで食べるのも悪くない。
ん……? あれ? これはおかしいぞ……。
「おいっ! 双子共! 俺の荷物をどこへやった!!」
キッチンで飯の支度をする双子ーズに、名前も呼ぶのも面倒で一括りに呼び付ける。
俺に与えられた服といえば、どうやらボクサーパンツ一枚と、先ほど羽織っていた彼シャツのような、異様にデカイワイシャツ一枚だけ。
反省の色が全く窺えない二人に、服を返せと抗議の声を上げる。この際外に出られればなんでもいいのだ。
「寄越さないなら、今すぐお前らが履いているそのスウェットを寄越せ!」
「まぁまぁ、雪ちゃん。そう言わないで取り敢えず椅子に座って、ご飯一緒に食べようよ」
「そうだよ? 昨日の夜から食べてないよね。お腹減ったでしょ? お水も飲んでくれなかったし」
ダイニングテーブルには、大きなお皿に盛り付けられた食事が並べられていた。湯気が立ち上がり、見た目だけでも美味しそうだ。
椅子を引き「まだフラフラしてるし、そんな状態で帰すのは心配」と、座れと促す蒼海。眉尻を下げ「もう少し休んでからにしたら? お願いだよ」と、新しいペットボトルを用意する森永。
そんな俺の身を案じる二人の態度に、深い息を吐き出すと素直に椅子に腰掛けた。
「……分かったよ。けど飯食ったら帰るから」
どおりでお腹が空いている訳だ。時計を見るとすでに昼の三時になろうとしている。休日は夜ふかしし昼夜逆転することもあるが、こんな時間まで寝ることはあまりない。
食べたら帰ると伝えたしお腹もかなり空いている。けれど箸を持つ俺の手は、膝に置かれたままで動いてはいなかった。
「雪ちゃん。食べないの? 今日のは結構自信あるんだけどな」
「佳月の作る食事はなんでも美味しいよ? 冷めない内にね?」
「……食べるよ。そりゃ、食べますとも。怪しいもの入ってないか観察してんの」
「雪ちゃんがそう考えると思ったから、こうして大皿にしたんじゃない」
「なら、個別に用意したお味噌汁とお水は……ね? ほら、僕も飲んだし安心でしょ?」
「……ごめん。いただきます」
口の中に溜まりだす唾をゴクリと飲み込むと、まるでエアー食事をとっているような疑似体験に腹の虫が暴れだす。昨夜からなにも食べていないのだ。
早く着替えて家に帰ろう。
帰りがけにおしゃれカフェで食べるのも悪くない。
ん……? あれ? これはおかしいぞ……。
「おいっ! 双子共! 俺の荷物をどこへやった!!」
キッチンで飯の支度をする双子ーズに、名前も呼ぶのも面倒で一括りに呼び付ける。
俺に与えられた服といえば、どうやらボクサーパンツ一枚と、先ほど羽織っていた彼シャツのような、異様にデカイワイシャツ一枚だけ。
反省の色が全く窺えない二人に、服を返せと抗議の声を上げる。この際外に出られればなんでもいいのだ。
「寄越さないなら、今すぐお前らが履いているそのスウェットを寄越せ!」
「まぁまぁ、雪ちゃん。そう言わないで取り敢えず椅子に座って、ご飯一緒に食べようよ」
「そうだよ? 昨日の夜から食べてないよね。お腹減ったでしょ? お水も飲んでくれなかったし」
ダイニングテーブルには、大きなお皿に盛り付けられた食事が並べられていた。湯気が立ち上がり、見た目だけでも美味しそうだ。
椅子を引き「まだフラフラしてるし、そんな状態で帰すのは心配」と、座れと促す蒼海。眉尻を下げ「もう少し休んでからにしたら? お願いだよ」と、新しいペットボトルを用意する森永。
そんな俺の身を案じる二人の態度に、深い息を吐き出すと素直に椅子に腰掛けた。
「……分かったよ。けど飯食ったら帰るから」
どおりでお腹が空いている訳だ。時計を見るとすでに昼の三時になろうとしている。休日は夜ふかしし昼夜逆転することもあるが、こんな時間まで寝ることはあまりない。
食べたら帰ると伝えたしお腹もかなり空いている。けれど箸を持つ俺の手は、膝に置かれたままで動いてはいなかった。
「雪ちゃん。食べないの? 今日のは結構自信あるんだけどな」
「佳月の作る食事はなんでも美味しいよ? 冷めない内にね?」
「……食べるよ。そりゃ、食べますとも。怪しいもの入ってないか観察してんの」
「雪ちゃんがそう考えると思ったから、こうして大皿にしたんじゃない」
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