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そうだ……あれはなにかを使われて。
無理矢理呼び覚まされた快感だ……。
俺が自ら望んで喜んでいた訳ではない……。
悔しい? いや……違う……。
悲しい? それも違う……。
蒼海に対しての感情が不安定に揺らめいている。
俺は……俺達はこの先どうなってしまうのか……。
天井を見上げながら考え込むと、室内が見たことのない空間だった。照明は落とされ、閉められたカーテンから日の光が仄かに射し込んでいる。
シングルサイズの蒼海のベッドでもなく、やけに大きなベッドで眠っていた。ベッドの脇にサイドテーブルが置かれ、壁には大型のテレビが設置されている。
そのほかにあるものといえば、大型のクローゼットぐらいだ。ここは蒼海のマンションなのだろうか。それともどこか全く別の異なる場所なのか。
昨夜からの予想外な展開に、自分の置かれた状況さえも不明確なのだ。
「…………家、家に帰らないと」
こんな訳の分からない場所には居たくはなかった。自分が最も安全で安心できる場所に今すぐ飛んで行きたい。自己防衛本能が自然と痛む腰を奮い立たせながら、立ち上がれと命令してくる。
そんな俺の思いを嘲笑うかのように、部屋の扉がゆっくりと開く音が聞こえ、静かな足音が二つ近付き動きを封じていった。
ギシッとベッドが軋むと、俺を中心に両サイドのスプリングが沈んでいく。折角浮かした腰が弾みによって、またベッドにストンと落ちてしまう。
逃れられない……そう直感すると、萎れそうな花のように首をもたげて俯いてしまう。
「雪ちゃん。おはよう。身体は大丈夫?」
「おはよう。雪ちゃん。大きな声が聞こえたよ? 嫌な夢でも見たの?」
「…………」
左右から伸びた手が前髪をすくい上げ、俺の顔色を窺っている。
やはり蒼海が二人居る。なにかの薬物による幻覚だったのではと思いもした。けれど昨夜のことは夢でも幻覚でもないようだ。
「ゆーきちゃん。まだ眠い?」
「それとも、具合悪い?」
「…………」
「だんまりだね。それに、震えている」
「寒い? これ、僕のシャツ。ちょっと雪ちゃんには大きいかも」
フワリと掛けられたシャツに自分がまだ裸だったと驚き、ワイシャツの合わせを手繰り寄せ、身体ごと抱き締める。ドロドロにされた身体は、サラリとし綺麗に清められていた。
雪ちゃん雪ちゃんと、二人に名前を呼ばれ質問されるが、どう反応すればいいというのだ。
「喉渇いてる? はい、お水。飲める?」
「ちょっとでも飲まないと脱水症状になるよ?」
差し出されたペットボトルをジッと見つめると、プイッと顔を背ける。けれど背けたところで両側に蒼海が居たと、ため息を漏らした。
「……飲めるか……また変なもん入っているかもしれない……」
「フッ、入っていないよ」
「僕達、ずいぶん信用なくなったね」
反省もあったものでもない。謝罪すらしないというのか。
無理矢理呼び覚まされた快感だ……。
俺が自ら望んで喜んでいた訳ではない……。
悔しい? いや……違う……。
悲しい? それも違う……。
蒼海に対しての感情が不安定に揺らめいている。
俺は……俺達はこの先どうなってしまうのか……。
天井を見上げながら考え込むと、室内が見たことのない空間だった。照明は落とされ、閉められたカーテンから日の光が仄かに射し込んでいる。
シングルサイズの蒼海のベッドでもなく、やけに大きなベッドで眠っていた。ベッドの脇にサイドテーブルが置かれ、壁には大型のテレビが設置されている。
そのほかにあるものといえば、大型のクローゼットぐらいだ。ここは蒼海のマンションなのだろうか。それともどこか全く別の異なる場所なのか。
昨夜からの予想外な展開に、自分の置かれた状況さえも不明確なのだ。
「…………家、家に帰らないと」
こんな訳の分からない場所には居たくはなかった。自分が最も安全で安心できる場所に今すぐ飛んで行きたい。自己防衛本能が自然と痛む腰を奮い立たせながら、立ち上がれと命令してくる。
そんな俺の思いを嘲笑うかのように、部屋の扉がゆっくりと開く音が聞こえ、静かな足音が二つ近付き動きを封じていった。
ギシッとベッドが軋むと、俺を中心に両サイドのスプリングが沈んでいく。折角浮かした腰が弾みによって、またベッドにストンと落ちてしまう。
逃れられない……そう直感すると、萎れそうな花のように首をもたげて俯いてしまう。
「雪ちゃん。おはよう。身体は大丈夫?」
「おはよう。雪ちゃん。大きな声が聞こえたよ? 嫌な夢でも見たの?」
「…………」
左右から伸びた手が前髪をすくい上げ、俺の顔色を窺っている。
やはり蒼海が二人居る。なにかの薬物による幻覚だったのではと思いもした。けれど昨夜のことは夢でも幻覚でもないようだ。
「ゆーきちゃん。まだ眠い?」
「それとも、具合悪い?」
「…………」
「だんまりだね。それに、震えている」
「寒い? これ、僕のシャツ。ちょっと雪ちゃんには大きいかも」
フワリと掛けられたシャツに自分がまだ裸だったと驚き、ワイシャツの合わせを手繰り寄せ、身体ごと抱き締める。ドロドロにされた身体は、サラリとし綺麗に清められていた。
雪ちゃん雪ちゃんと、二人に名前を呼ばれ質問されるが、どう反応すればいいというのだ。
「喉渇いてる? はい、お水。飲める?」
「ちょっとでも飲まないと脱水症状になるよ?」
差し出されたペットボトルをジッと見つめると、プイッと顔を背ける。けれど背けたところで両側に蒼海が居たと、ため息を漏らした。
「……飲めるか……また変なもん入っているかもしれない……」
「フッ、入っていないよ」
「僕達、ずいぶん信用なくなったね」
反省もあったものでもない。謝罪すらしないというのか。
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