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第8章 想いに×砂糖は清らかであれ5%
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尾鷹の背中を瞳に映すと夢と現実が交差する。
(このあとは……那津が血の海に沈んで……)
腕を伸ばすが届かない。いばらに絡まれたように脚が動かない。
このままでは尾鷹をまた助けられない……そう思った途端に全身から血の気が引き、目眩にへにゃりとくず折れた。
「──郁哉ッ!」
「……へ、平気……だよ」
駆け寄る尾鷹に支えられヘラリと笑い掛けると、ガチガチと歯を鳴らしていた。
肩もガタガタと震え始める。「あれ……? おかしいな……」と呟き、無理矢理笑顔を作るが上手くいかない。
「──ッ、真っ青だ……無理をするな。ちっとも平気じゃないでしょ。怖い思いをさせた……」
「……俺、怖かった……凄く、怖かった……っ」
「ああ、誰だってあんな乱暴にされたら……」
「違うッ! あんなのちっとも怖くない!」
犯されれば確かに心に残る痛みになる。それを永遠に引きずるかもしれない。けれど穢れた身体でもきっと尾鷹が癒やしてくれる。
「那津が血溜まりに沈んでいく悪夢を毎日見ると、罪悪感で一杯だった。カズ君から那津が死んだって聞いたとき、これから起こることよりも絶望した。……俺はっ、那津がッ、那津がいなくなることが怖かったッ! 凄く、凄く──怖かったんだ……っ」
うっ……と顔を歪ませると、ポロポロと大粒の涙が溢れ出す。
尾鷹の腕が郁哉を包み背を軋ませるほどにかき抱いた。
「郁哉……俺はここにいるッ」
「ふ……っ、うぅ……っ、な……つ」
背を撫でられ抱擁が解かれると、尾鷹は郁哉の頬を大きな掌で包み込んだ。
唇が目尻に触れ、とめどなく溢れる涙が吸い取られていく。
「郁哉、大丈夫だよ。俺はいるでしょ?」
「けどッ……俺のせいで那津にっ……痛い思いさせた……っ。俺が那津の人生奪ってしまうかもしれなかったッ。謝って済むことじゃないッ。全部っ俺がッ!」
肩を喘がせながら悲痛な声を上げる郁哉に、尾鷹はどこまでも優しい声で囁いだ。
「あれぐらいなんともないさ。俺が郁哉を守りたくてしたことだよ。お前が罪を償う必要はないんだ。それに、郁哉は俺を助けてくれたでしょ? 郁哉の想い……ちゃんとここに届いた」
尾鷹は郁哉の掌を導き、シャツを捲り上げ肌を露わにすると、薄く線を引いた傷口に触れさせふわりと微笑んだ。
「郁哉、お前を愛しているよ」
真っ直ぐに郁哉を見つめながら尾鷹はそう言った。
今度ははっきりと郁哉の耳に届いた。
「──うっ、那津っ、……俺もッ!」
郁哉は尾鷹に飛び付き溢れる愛情を全身で伝えた。
「酷いこと言ってごめんなさぃ……っ」
「ああ、俺も……郁哉に隠しごとはしない。俺の全てを話す。……嘘を付いてしまったこと、どうか許して欲しい」
抱き着きながら郁哉はコクコクと頷く。
スリスリと尾鷹の首筋に頬擦りする郁哉に、擽ったそうにクスクスと尾鷹が笑う。
「郁哉、こっち向いて」
「ん……っ、う──ンッ……」
ゆっくりと顔を上げると唇と唇が重なる。
少し塩っぱくて甘い甘い優しい口付け。
想いが通じ合った最高の瞬間だった──。
(このあとは……那津が血の海に沈んで……)
腕を伸ばすが届かない。いばらに絡まれたように脚が動かない。
このままでは尾鷹をまた助けられない……そう思った途端に全身から血の気が引き、目眩にへにゃりとくず折れた。
「──郁哉ッ!」
「……へ、平気……だよ」
駆け寄る尾鷹に支えられヘラリと笑い掛けると、ガチガチと歯を鳴らしていた。
肩もガタガタと震え始める。「あれ……? おかしいな……」と呟き、無理矢理笑顔を作るが上手くいかない。
「──ッ、真っ青だ……無理をするな。ちっとも平気じゃないでしょ。怖い思いをさせた……」
「……俺、怖かった……凄く、怖かった……っ」
「ああ、誰だってあんな乱暴にされたら……」
「違うッ! あんなのちっとも怖くない!」
犯されれば確かに心に残る痛みになる。それを永遠に引きずるかもしれない。けれど穢れた身体でもきっと尾鷹が癒やしてくれる。
「那津が血溜まりに沈んでいく悪夢を毎日見ると、罪悪感で一杯だった。カズ君から那津が死んだって聞いたとき、これから起こることよりも絶望した。……俺はっ、那津がッ、那津がいなくなることが怖かったッ! 凄く、凄く──怖かったんだ……っ」
うっ……と顔を歪ませると、ポロポロと大粒の涙が溢れ出す。
尾鷹の腕が郁哉を包み背を軋ませるほどにかき抱いた。
「郁哉……俺はここにいるッ」
「ふ……っ、うぅ……っ、な……つ」
背を撫でられ抱擁が解かれると、尾鷹は郁哉の頬を大きな掌で包み込んだ。
唇が目尻に触れ、とめどなく溢れる涙が吸い取られていく。
「郁哉、大丈夫だよ。俺はいるでしょ?」
「けどッ……俺のせいで那津にっ……痛い思いさせた……っ。俺が那津の人生奪ってしまうかもしれなかったッ。謝って済むことじゃないッ。全部っ俺がッ!」
肩を喘がせながら悲痛な声を上げる郁哉に、尾鷹はどこまでも優しい声で囁いだ。
「あれぐらいなんともないさ。俺が郁哉を守りたくてしたことだよ。お前が罪を償う必要はないんだ。それに、郁哉は俺を助けてくれたでしょ? 郁哉の想い……ちゃんとここに届いた」
尾鷹は郁哉の掌を導き、シャツを捲り上げ肌を露わにすると、薄く線を引いた傷口に触れさせふわりと微笑んだ。
「郁哉、お前を愛しているよ」
真っ直ぐに郁哉を見つめながら尾鷹はそう言った。
今度ははっきりと郁哉の耳に届いた。
「──うっ、那津っ、……俺もッ!」
郁哉は尾鷹に飛び付き溢れる愛情を全身で伝えた。
「酷いこと言ってごめんなさぃ……っ」
「ああ、俺も……郁哉に隠しごとはしない。俺の全てを話す。……嘘を付いてしまったこと、どうか許して欲しい」
抱き着きながら郁哉はコクコクと頷く。
スリスリと尾鷹の首筋に頬擦りする郁哉に、擽ったそうにクスクスと尾鷹が笑う。
「郁哉、こっち向いて」
「ん……っ、う──ンッ……」
ゆっくりと顔を上げると唇と唇が重なる。
少し塩っぱくて甘い甘い優しい口付け。
想いが通じ合った最高の瞬間だった──。
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