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第8章 想いに×砂糖は清らかであれ5%
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化粧をした途端女性にしか見えない美人ママは、連日客からセクハラを受ける……らしい。女性が苦手と女装で身を守っているようだが、それで男性に手を出されるのもいかがなものか。
本人曰く好みならウエルカムだそうだ。
「いっく~ん。ヘルプ入ってくんね?」
「嫌です」
「即答かよ!」
「なるべく外出するなって、先生言ってたじゃん。また募集かければすぐに見つかるよ」
「時給も悪くねぇし、まかないは美味い。ホワイト対応なのになにが気に入らないんだろうな? まぁ、取り敢えず俺寝るわ」
呑気にあくびをしながら輝は寝室へと姿を消した。
郁哉は輝が眠る頃に活動を始める。
必要最低限の荷物は七瀬が運び込んでくれていた。基本的な生活は今までとあまり変わりはないが、家の外に出ることが少なくなった。
授業はネット講義でカバーし、大学に行くときには七瀬が車を手配してくれた。
VIP待遇なのには訳がある。
それは事件の犯人がまだ捕まっていないからだ。愉快犯によるものか、私怨によるものか。真実は尾鷹と共にあの日の闇から抜け出せていない。
今郁哉にできることはただ一つ。自ら身を守り尾鷹の回復を待つだけだった。
──輝が大荒れしてから三日ほど経った頃だった。
いつものように悪夢で目覚めると、ゲストルームの扉が勢い良く開いた。
血相を変えて部屋に足を踏み入れる輝に、郁哉は嫌なものを感じ身構えた。
「いっくん! 大変だ!」
「……どうしたの?」
大きく頷く輝に、郁哉は慌ててベッドから抜け出すと輝に駆け寄った。
「……もしかして……悪い知らせ?」
「悪いなんてもんじゃないよ……」
「えっ……まさか……」
夢見が悪いだけに、郁哉は冷や汗を背中に感じながら青褪めていく。
輝は郁哉の両肩を掴むと眉間に皺を刻みながら呟いた。
「そう、そのまさかなんだ。いいか? よく聞くんだ。今夜は大事な稼ぎどきだってのに、肝心のバイト君がまだ見つからない。これじゃ売上どころか店だって開けられない」
ブチリ……っとなにかが切れた音が頭に響いた。
「はあ? そんなの知らねぇよ!」
切れたのは郁哉の堪忍袋だ。
温厚な郁哉でも輝の無神経さに腸が煮えくりかえる。
「いっくん、この事態を飲み込めない?」
「そんなもん飲み込めるか! 人の気持ちも知らないで!」
怒りに任せ怒鳴りつけていると、輝の人差し指が郁哉の唇に触れ言葉を遮らせた。
「気持ちなら知ってるけどなぁ~。例えば今、なっちゃんになにかあったと焦ったこと、ひとりで居るとき死人みたいに落ち込んでいることも。あとは……毎日悪夢にうなされて目を覚ましてるとか?」
どう? とでも言うように郁哉の図星をついてくる。
まったく持ってその通りだった。
グッと息を詰めると輝の目を見ていられず、視線を泳がせながら俯いた。
本人曰く好みならウエルカムだそうだ。
「いっく~ん。ヘルプ入ってくんね?」
「嫌です」
「即答かよ!」
「なるべく外出するなって、先生言ってたじゃん。また募集かければすぐに見つかるよ」
「時給も悪くねぇし、まかないは美味い。ホワイト対応なのになにが気に入らないんだろうな? まぁ、取り敢えず俺寝るわ」
呑気にあくびをしながら輝は寝室へと姿を消した。
郁哉は輝が眠る頃に活動を始める。
必要最低限の荷物は七瀬が運び込んでくれていた。基本的な生活は今までとあまり変わりはないが、家の外に出ることが少なくなった。
授業はネット講義でカバーし、大学に行くときには七瀬が車を手配してくれた。
VIP待遇なのには訳がある。
それは事件の犯人がまだ捕まっていないからだ。愉快犯によるものか、私怨によるものか。真実は尾鷹と共にあの日の闇から抜け出せていない。
今郁哉にできることはただ一つ。自ら身を守り尾鷹の回復を待つだけだった。
──輝が大荒れしてから三日ほど経った頃だった。
いつものように悪夢で目覚めると、ゲストルームの扉が勢い良く開いた。
血相を変えて部屋に足を踏み入れる輝に、郁哉は嫌なものを感じ身構えた。
「いっくん! 大変だ!」
「……どうしたの?」
大きく頷く輝に、郁哉は慌ててベッドから抜け出すと輝に駆け寄った。
「……もしかして……悪い知らせ?」
「悪いなんてもんじゃないよ……」
「えっ……まさか……」
夢見が悪いだけに、郁哉は冷や汗を背中に感じながら青褪めていく。
輝は郁哉の両肩を掴むと眉間に皺を刻みながら呟いた。
「そう、そのまさかなんだ。いいか? よく聞くんだ。今夜は大事な稼ぎどきだってのに、肝心のバイト君がまだ見つからない。これじゃ売上どころか店だって開けられない」
ブチリ……っとなにかが切れた音が頭に響いた。
「はあ? そんなの知らねぇよ!」
切れたのは郁哉の堪忍袋だ。
温厚な郁哉でも輝の無神経さに腸が煮えくりかえる。
「いっくん、この事態を飲み込めない?」
「そんなもん飲み込めるか! 人の気持ちも知らないで!」
怒りに任せ怒鳴りつけていると、輝の人差し指が郁哉の唇に触れ言葉を遮らせた。
「気持ちなら知ってるけどなぁ~。例えば今、なっちゃんになにかあったと焦ったこと、ひとりで居るとき死人みたいに落ち込んでいることも。あとは……毎日悪夢にうなされて目を覚ましてるとか?」
どう? とでも言うように郁哉の図星をついてくる。
まったく持ってその通りだった。
グッと息を詰めると輝の目を見ていられず、視線を泳がせながら俯いた。
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