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第7章 砂に落ちた砂糖は赤黒く塗れる0.1%
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カランと氷が溶けグラスを鳴らすと、赤と橙色の液体がグラデーションに混ざり合っていく。
隣に座る七瀬はグラスを手にし、琥珀色の液体を黙念しながら揺らしていた。
「……その男性というのは、細身でシルバーフレームの眼鏡をを掛けた、神経質そうな人物でしたか?」
七瀬は郁哉の説明なしに渦中の人物像を口にする。七瀬の推理に驚きながらもコクリと頷く。
「先生のお知り合いですか?」
「まぁ、顔見知り程度ですかね……。凩君が会った男は、和泉希俐という人物かと」
「その……和泉さんは何者ですか?」
「坊っちゃんのお父上の秘書です。六年ほど前から坊っちゃんのお世話を……まぁ、世話と言えば聞こえはいいですがね。早い話、監視役ですよ」
「……監視……なぜそんな……」
「坊っちゃんの家庭環境はご存知ですか?」
「家族構成だけ……少し……」
複雑だとは言っていたが、実の父親から監視までされているとは思ってもいなかった。
「お父上は堅物な御仁でして。坊っちゃんは今ではああですが、昔はやんちゃな時期があったんです。見兼ねたお父上は、和泉を監視と報告役にあてがったのですが……近頃どうにも暴走気味でして、三ヶ月ほど前に坊っちゃんから役目を絶たれたんです」
身元が判明し安堵するが、郁哉に対するあの態度は好ましいものではない。
「先生、あの人は那津に、なんていうか……好意でも……」
「……ほかにもなにか言われましたか?」
コクリと頷き大まかな経緯を話す。
尾鷹のことが好きだからこそ分かる。あの目は恋敵でも見るような嫉妬を含ませたものだった。
(那津は……あの人とも身体の関係を……)
ズキンッと胸に刺さる痛みに、ドロリとした黒い感情が心臓を握り潰す。
過去の尾鷹と今の尾鷹。なにも知らない自分。
「……それは酷い。確かに彼は、坊っちゃんに心酔している傾向があります。要は醜い嫉妬でしょうね」
「あんなゴミみたいに見られたのは初めてです。俺、なにも言い返せなかった。凄く悔しいです……」
頬を膨らませ怒りを露にする郁哉に、七瀬は笑い声を上げる。
「そんなに笑わないでくださいよ!」
「いやぁ……失礼。凩君が怒る姿は新鮮でして」
「それと先生! あのチョコは一体なんなんですか!」
郁哉がそう言うと、七瀬は明らかに目を泳がせ笑い声を治めていった。
「あーその、はい、チョコレートのことは謝罪します……」
「──えっ?」
有名店のチョコレートのはずだ。七瀬がなぜ謝罪を口にするのか郁哉には分からなかった。
驚きを隠せずにいると七瀬は躊躇いながら答えた。
「そのぉ……、坊っちゃんが精力大勢なのは、すでにご存知かと思いますが、少々過ぎるんですよ。それを抑えるために、チョコを毎日食べるよう私から指示を出しています」
「チョコで精力を抑えられるんですか!?」
隣に座る七瀬はグラスを手にし、琥珀色の液体を黙念しながら揺らしていた。
「……その男性というのは、細身でシルバーフレームの眼鏡をを掛けた、神経質そうな人物でしたか?」
七瀬は郁哉の説明なしに渦中の人物像を口にする。七瀬の推理に驚きながらもコクリと頷く。
「先生のお知り合いですか?」
「まぁ、顔見知り程度ですかね……。凩君が会った男は、和泉希俐という人物かと」
「その……和泉さんは何者ですか?」
「坊っちゃんのお父上の秘書です。六年ほど前から坊っちゃんのお世話を……まぁ、世話と言えば聞こえはいいですがね。早い話、監視役ですよ」
「……監視……なぜそんな……」
「坊っちゃんの家庭環境はご存知ですか?」
「家族構成だけ……少し……」
複雑だとは言っていたが、実の父親から監視までされているとは思ってもいなかった。
「お父上は堅物な御仁でして。坊っちゃんは今ではああですが、昔はやんちゃな時期があったんです。見兼ねたお父上は、和泉を監視と報告役にあてがったのですが……近頃どうにも暴走気味でして、三ヶ月ほど前に坊っちゃんから役目を絶たれたんです」
身元が判明し安堵するが、郁哉に対するあの態度は好ましいものではない。
「先生、あの人は那津に、なんていうか……好意でも……」
「……ほかにもなにか言われましたか?」
コクリと頷き大まかな経緯を話す。
尾鷹のことが好きだからこそ分かる。あの目は恋敵でも見るような嫉妬を含ませたものだった。
(那津は……あの人とも身体の関係を……)
ズキンッと胸に刺さる痛みに、ドロリとした黒い感情が心臓を握り潰す。
過去の尾鷹と今の尾鷹。なにも知らない自分。
「……それは酷い。確かに彼は、坊っちゃんに心酔している傾向があります。要は醜い嫉妬でしょうね」
「あんなゴミみたいに見られたのは初めてです。俺、なにも言い返せなかった。凄く悔しいです……」
頬を膨らませ怒りを露にする郁哉に、七瀬は笑い声を上げる。
「そんなに笑わないでくださいよ!」
「いやぁ……失礼。凩君が怒る姿は新鮮でして」
「それと先生! あのチョコは一体なんなんですか!」
郁哉がそう言うと、七瀬は明らかに目を泳がせ笑い声を治めていった。
「あーその、はい、チョコレートのことは謝罪します……」
「──えっ?」
有名店のチョコレートのはずだ。七瀬がなぜ謝罪を口にするのか郁哉には分からなかった。
驚きを隠せずにいると七瀬は躊躇いながら答えた。
「そのぉ……、坊っちゃんが精力大勢なのは、すでにご存知かと思いますが、少々過ぎるんですよ。それを抑えるために、チョコを毎日食べるよう私から指示を出しています」
「チョコで精力を抑えられるんですか!?」
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