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第6章 積もる砂糖は雪のよう88%
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しおりを挟む寒さに身じろぎすると温かなものに触れる。ぬくもりに頬擦りすると、身体を包み込むように引き寄せられた。
瞼を開け、うっすらと射し込む光に夜が去ったのを知る。
「おはよ」
「……はょ」
掠れた声で挨拶に答えると、チラリと視線を上向かせる。
いつ眠ったかなど覚えていない。
昨日の昼から何度もセックスをした。玄関からリビングへそれから浴室で、最終的にベッドへと。
何度も空イキをさせられ、浴室では盛大に精を吐き出した。なにやら精液とは違う液体も出していたような気がする。
恥ずかしさに顔を伏せ尾鷹の胸に蹲ると、擽ったそうにクスクスと笑われる。
「ソマリみたいだ。身体は?」
「俺は犬じゃない。那津はいつも手加減がない」
「フッ、その割に沢山喘いで気持ち良さそうにしていたのは、俺の気の所為?」
「うぅ……とても気持ち良かったです」
「いい回答だ。寒くない? 外は雪が降ってる」
カーテン越しの窓は光が射し込むものの薄暗い。チラチラとドットのような模様が落ちていく。
どうりで寒い訳だ。けれどベッドの中はポカポカしている。
「寒くないよ。……雪積もるかな」
「もう積もり始めているよ。ベッドに籠もるには丁度いいね」
「えっ~! 俺、バルコニーで雪遊びしたい。静岡じゃ降っても中々積もらないからさ」
「ふ~ん。元気だね」
「へへっ、一緒に雪だるま作ろうよ!」
はしゃぐ郁哉を見つめながら、尾鷹はひとり言をブツブツ呟いている。
「犬は庭を駆け回るし……散歩も必要か。セックスだけじゃ機嫌を損ねるしな……」
「なに? 寒いから嫌とか?」
「いいよ。あとで湯たんぽになってくれるんでしょ? 雪だるまでもかまくらでも作ろう」
「かまくらは無理だろ……」
冗談なのか本気なのか良く分からない尾鷹を置き去りに、興奮する郁哉は飛び起き身支度を整える。
「郁哉ってタフだよね」
「俺、元気が取り柄だし! ほら、那津も起きた起きた!」
ベッドから中々抜け出さない尾鷹に服を用意し手渡すと、先に食事をしてからだと叱られてしまう。
食事を済ませバルコニーに出ると、一面真っ白なフワフワな雪が積もっていた。
うずうずしながら足を踏み込むと、サクッと独特な感触に頬を緩めた。一番乗りに特別なものを感じる。
「ねぇ~早く~!」
「子供みたいだ……昨日はあんなに可愛くて色っぽかったのに……。けど、これも悪くはないか……」
郁哉を部屋から眺める尾鷹を手招きし呼び寄せる。ひとりで遊んでいても面白くはない。
「これは俺。那津も自分を作って」
「はいはい。──冷たっ!」
「そりゃ雪だもん。冷たいに決まってるじゃん。よし! できた!」
小さな雪だるまに満足すると、尾鷹も隣にそれを置いた。少し歪な形だが腕に見立てた割り箸が、手を繋いでいるように見える。
(こんな風になれたらいいな……)
ヘラリと笑う郁哉に尾鷹が顎を上向かせキスをしてくる。
「寒い……もうベッドに戻ろう」
髪に積もった雪を払われ寒さに震える尾鷹に苦笑いすると、差し出された掌に指を絡める。
すっかり冷えた身体を温め合うように、寄り添いながら部屋へと戻っていった。
雪は深々と降り積もる。
二つの雪だるまは時間と共に造形を失っていく。
翌日、その場所には小さな白い山ができていた。
柔らかな雪は、仲睦まじい姿を誰にも邪魔されないように隠そうとしてくれたのか……。
それとも──。
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