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第6章 積もる砂糖は雪のよう88%
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「遊びに見えますか? 残念ながら身を引くのはお断りします。お姉さんが郁哉を思うように、俺も郁哉を大切にしたい。それは本当です。けど俺と同じように郁哉もそう思ってくれるのかは、分かりませんが……」
「どういうこと?」
怪訝そうな顔付きで穂奈美は尾鷹を見る。
「さあ? 郁哉の本心を聞いたことはないので。それに、お姉さんが言うように、俺はだいぶ歪な人間ですから」
クスッと笑い瞼を閉じながらお茶を啜る。そんな尾鷹の姿を無言で見つめていた穂奈美は、深い息を盛大に吐き出していた。
「いっくんもだけど、貴方も大概ね。馬鹿みたい。いいわ……聞かない。聞いても私には貴方の真っ黒なそれ、背負えそうにないもの。どの道決めるのはあの子だわ」
自分に言い聞かせるように穂奈美は呟く。郁哉はもう小さな子供ではないのだ。
「それはどうも。お姉さんは魔女ですか?」
真面目に確認する尾鷹に、穂奈美は目を拡げるとクスクスと笑い出す。
「貴方そういう冗談言えるのね! ただの看護師。けど昔から嫌なものを感じるの。説明できないけど直感で。こうなんていうか……全身ザワザワってね。貴方のはそれとも少し違うけど」
人が発する負のオーラが肌を刺激するということなのか。穂奈美は両腕を擦りながら震える素振りを見せる。
化学では説明できない現象は、世の中には不思議と存在する。
「違う……ですか。確かにそうかもしれませんね。カズという男は嫌なものに入りましたか? 神社に行く前に会ったんです」
「それ、宮下和貴のことね」
昔を思い出したのか、嫌悪感丸出しな顔付きをしてくる。
「いつもいっくんに付き纏っていたわ。イヤらしい目付きして気持ち悪い男よ。高校の頃、確か退学になって家出したって聞いていたけど……そう、戻っていたのね。貴方が一緒で良かったわ」
「良く今まで無事だったか疑問でしたが、お姉さんが遠ざけていたんですか?」
「そうよ。だってあんなに可愛いでしょ。周りが放っておかないわ」
「ええ、本人に自覚がないので余計に」
「あら、良く分かってるじゃない」
初めて意見が合ったと互いに笑い合う。
「そろそろ夜這いに行ってもいいですか?」
「駄目って言っても行くんでしょ?」
「ええ」
呆れた様子で穂奈美は苦笑いを浮かべる。尾鷹の潔さに肩透かしを食らったような顔付きだ。
「どうせ明日になれば貴方の腕の中なら大差ないわ。好きになさい」
湯呑を片付け廊下に出ると穂奈美が夜空を眺めていた。就寝の挨拶をしその場をあとにしようとすると、尾鷹の背中に静かに釘を刺してくる。
「いい、添い寝だけよ。変なことはしないで」
流石に心得ている。けれど郁哉を抱き締めたらどうなるか予測はできない。釘を刺してくれたのは丁度良かったかもしれない。
頷く尾鷹に穂奈美は背を向け歩き出す。
「ああ、そうだお姉さん。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
尾鷹の言葉にピタリと足を止め「ええ、おめでとう……」と振り向くことなく短く呟く穂奈美に苦笑いすると、尾鷹も背を向けぬくもりを求め軽やかに足を進めた。
「どういうこと?」
怪訝そうな顔付きで穂奈美は尾鷹を見る。
「さあ? 郁哉の本心を聞いたことはないので。それに、お姉さんが言うように、俺はだいぶ歪な人間ですから」
クスッと笑い瞼を閉じながらお茶を啜る。そんな尾鷹の姿を無言で見つめていた穂奈美は、深い息を盛大に吐き出していた。
「いっくんもだけど、貴方も大概ね。馬鹿みたい。いいわ……聞かない。聞いても私には貴方の真っ黒なそれ、背負えそうにないもの。どの道決めるのはあの子だわ」
自分に言い聞かせるように穂奈美は呟く。郁哉はもう小さな子供ではないのだ。
「それはどうも。お姉さんは魔女ですか?」
真面目に確認する尾鷹に、穂奈美は目を拡げるとクスクスと笑い出す。
「貴方そういう冗談言えるのね! ただの看護師。けど昔から嫌なものを感じるの。説明できないけど直感で。こうなんていうか……全身ザワザワってね。貴方のはそれとも少し違うけど」
人が発する負のオーラが肌を刺激するということなのか。穂奈美は両腕を擦りながら震える素振りを見せる。
化学では説明できない現象は、世の中には不思議と存在する。
「違う……ですか。確かにそうかもしれませんね。カズという男は嫌なものに入りましたか? 神社に行く前に会ったんです」
「それ、宮下和貴のことね」
昔を思い出したのか、嫌悪感丸出しな顔付きをしてくる。
「いつもいっくんに付き纏っていたわ。イヤらしい目付きして気持ち悪い男よ。高校の頃、確か退学になって家出したって聞いていたけど……そう、戻っていたのね。貴方が一緒で良かったわ」
「良く今まで無事だったか疑問でしたが、お姉さんが遠ざけていたんですか?」
「そうよ。だってあんなに可愛いでしょ。周りが放っておかないわ」
「ええ、本人に自覚がないので余計に」
「あら、良く分かってるじゃない」
初めて意見が合ったと互いに笑い合う。
「そろそろ夜這いに行ってもいいですか?」
「駄目って言っても行くんでしょ?」
「ええ」
呆れた様子で穂奈美は苦笑いを浮かべる。尾鷹の潔さに肩透かしを食らったような顔付きだ。
「どうせ明日になれば貴方の腕の中なら大差ないわ。好きになさい」
湯呑を片付け廊下に出ると穂奈美が夜空を眺めていた。就寝の挨拶をしその場をあとにしようとすると、尾鷹の背中に静かに釘を刺してくる。
「いい、添い寝だけよ。変なことはしないで」
流石に心得ている。けれど郁哉を抱き締めたらどうなるか予測はできない。釘を刺してくれたのは丁度良かったかもしれない。
頷く尾鷹に穂奈美は背を向け歩き出す。
「ああ、そうだお姉さん。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
尾鷹の言葉にピタリと足を止め「ええ、おめでとう……」と振り向くことなく短く呟く穂奈美に苦笑いすると、尾鷹も背を向けぬくもりを求め軽やかに足を進めた。
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