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第6章 積もる砂糖は雪のよう88%
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「おかえりなさい。凩君久しぶりです」
「先生ごめんなさい。お待たせしました」
リビングで寛ぐ七瀬を見るなり遅刻した謝罪を忘れず、早々に診察をお願いする。
尾鷹から検査の結果を聞いていたものの、専門的なことは医者から聞いたほうが心から安心できる。
前回の検査結果の資料を渡され説明を受けると、それとは別に頭の片隅にある不安を口にする。
「あの、先生。お尻のほうは……なにか分かりましたか?」
「いいえ、今回の血液検査ではなんとも……」
「そうですか。普通の人と違うなんて、俺の身体、大丈夫なんでしょうか……」
「数値や診察をする限り問題はないですよ。生活に支障が出るような体調不良はありますか?」
「それは全くないです。なんというか……元気過ぎる感じで、砂糖依存症になる前よりも調子がいいです」
そう……びっくりするほど元気なのだ。
気力、体力、精力とパワーアップしている気がしてならない。
「結構。定期的に私も診察しますから、そんな心配そうな顔をしないでください。体調が優れないときは遠慮なく連絡を」
「はい。あの、次回から俺が先生のラボに伺いますよ?」
「あーいや……それは……」
苦笑いしながら視線を泳がせる七瀬に、首を傾げていると尾鷹がお茶を手にソファーに腰掛けた。
「透のラボは資料の山で診察なんてできやしないよ」
「そういうことでして……あぁ、ジンジャーティーですね。こりゃ冬にはいいお茶で。坊っちゃん、カゼはどうです?」
「那津、風邪引いたの?」
「ハハ、大した症状ではないですよ。臆病ってやつでして」
「オク病……ですか? それってどんな風邪なんですか?」
ジトーっと冷ややかな顔で会話を聞いていた尾鷹は、郁哉にしなだれ肩に頭を預けると大きな溜息を吐き出した。
「俺はどうやら療養が必要らしい。郁哉も帰省するなら、俺も温泉に浸かりに行こうかな」
「……そっか、旅行行くのか」
「旅行……まぁ、そうなるね」
近くで一緒に過ごしたいと思っていた矢先に、冬休みは暫く会えないのかと落ち込む。
ここ三ヶ月は郁哉に付きっきりの尾鷹だ。たまにはひとりでゆっくり羽を伸ばしたいと思うのも無理はない。
「連絡取れる場所ならいいけど……」
「はぁ? なに言ってるの。郁哉の実家に行くつもりだけど、不都合でもある? 温泉有名なんでしょ」
自分が居ると問題があるのかと訝しむ尾鷹に、郁哉はポカンとしてしまう。
声を潜めて笑う七瀬は「そりゃいいですね。私も温泉でゆっくりしたいですよ」と他人事だ。
「透、お前は運転手」
「坊っちゃん……また勝手な。年末の忙しい時期に図体のデカイ男が二人も増えたら、凩家だって困りますよ。ねぇ、凩君!」
「いいえ先生! 家なんかで良ければ是非! 前に友達二人を連れて帰りましたが問題なかったんで! 普段お世話になってますし! 俺、案内します!」
「本当に……いいんで?」
「ふふ~ん。決まりだ」
自分が話を纏めたと得意気な顔をしながら、尾鷹はまるで最初から決めていたような素振りでスケジュールをつらつらと伝えていた。
けれどその提案は郁哉にとってありがたく、七瀬を巻き込んだことに若干うしろめたさを感じていたのだった。
「先生ごめんなさい。お待たせしました」
リビングで寛ぐ七瀬を見るなり遅刻した謝罪を忘れず、早々に診察をお願いする。
尾鷹から検査の結果を聞いていたものの、専門的なことは医者から聞いたほうが心から安心できる。
前回の検査結果の資料を渡され説明を受けると、それとは別に頭の片隅にある不安を口にする。
「あの、先生。お尻のほうは……なにか分かりましたか?」
「いいえ、今回の血液検査ではなんとも……」
「そうですか。普通の人と違うなんて、俺の身体、大丈夫なんでしょうか……」
「数値や診察をする限り問題はないですよ。生活に支障が出るような体調不良はありますか?」
「それは全くないです。なんというか……元気過ぎる感じで、砂糖依存症になる前よりも調子がいいです」
そう……びっくりするほど元気なのだ。
気力、体力、精力とパワーアップしている気がしてならない。
「結構。定期的に私も診察しますから、そんな心配そうな顔をしないでください。体調が優れないときは遠慮なく連絡を」
「はい。あの、次回から俺が先生のラボに伺いますよ?」
「あーいや……それは……」
苦笑いしながら視線を泳がせる七瀬に、首を傾げていると尾鷹がお茶を手にソファーに腰掛けた。
「透のラボは資料の山で診察なんてできやしないよ」
「そういうことでして……あぁ、ジンジャーティーですね。こりゃ冬にはいいお茶で。坊っちゃん、カゼはどうです?」
「那津、風邪引いたの?」
「ハハ、大した症状ではないですよ。臆病ってやつでして」
「オク病……ですか? それってどんな風邪なんですか?」
ジトーっと冷ややかな顔で会話を聞いていた尾鷹は、郁哉にしなだれ肩に頭を預けると大きな溜息を吐き出した。
「俺はどうやら療養が必要らしい。郁哉も帰省するなら、俺も温泉に浸かりに行こうかな」
「……そっか、旅行行くのか」
「旅行……まぁ、そうなるね」
近くで一緒に過ごしたいと思っていた矢先に、冬休みは暫く会えないのかと落ち込む。
ここ三ヶ月は郁哉に付きっきりの尾鷹だ。たまにはひとりでゆっくり羽を伸ばしたいと思うのも無理はない。
「連絡取れる場所ならいいけど……」
「はぁ? なに言ってるの。郁哉の実家に行くつもりだけど、不都合でもある? 温泉有名なんでしょ」
自分が居ると問題があるのかと訝しむ尾鷹に、郁哉はポカンとしてしまう。
声を潜めて笑う七瀬は「そりゃいいですね。私も温泉でゆっくりしたいですよ」と他人事だ。
「透、お前は運転手」
「坊っちゃん……また勝手な。年末の忙しい時期に図体のデカイ男が二人も増えたら、凩家だって困りますよ。ねぇ、凩君!」
「いいえ先生! 家なんかで良ければ是非! 前に友達二人を連れて帰りましたが問題なかったんで! 普段お世話になってますし! 俺、案内します!」
「本当に……いいんで?」
「ふふ~ん。決まりだ」
自分が話を纏めたと得意気な顔をしながら、尾鷹はまるで最初から決めていたような素振りでスケジュールをつらつらと伝えていた。
けれどその提案は郁哉にとってありがたく、七瀬を巻き込んだことに若干うしろめたさを感じていたのだった。
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