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第5章 砂糖の美味しい食し方85%
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尾鷹の少年時代の寂しさとは異なり、郁哉の寂しさなと比べられるものではないが、甘いものは笑い合って食べてこそ、より一層美味しくなるというものだ。
「郁哉? これからは一緒に行けるでしょ」
ぼんやりとする郁哉にそう言い微笑む尾鷹の唇に釘付けになる。肉厚で柔らかいことはすでに承知済みだが、アルコールで体温が上がっているのか赤く色付き妙に艶めかしい。
ゴクリと唾を飲み込むと、もう一つしたいことが頭をよぎる。
手にしたグラスの中に入った白い芳醇な液体を一気に飲み干すと、七瀬から貰ったチョコレートに視線を向ける。
「……郁哉?」
急に黙り込む郁哉に酔が回ったと勘違いする尾鷹は「水持ってこようか?」と立ち上がろうとする。
尾鷹のシャツの裾をキュッと掴みその場に留めると、郁哉はボソリと呟いた。
「那津、このチョコ食べてもいい?」
「ああ、折角貰ったし食べよう。ワインにも合うよ」
シックな黒い箱を開けると、真っ赤な艶のある半円型の小さな粒が並んでいる。インパクトのあるチョコレートは、まるで真っ赤なルージュを引いた小悪魔のように蠱惑的だ。
ひと粒摘み唇に乗せると、尾鷹のシャツを引き寄せ首に腕を廻す。そんな郁哉の行動に驚きを隠せない尾鷹は、ゴクリと喉を鳴らしつつ郁哉の好きにさせていた。
頬を染める郁哉より、唇に挟まれたチョコレートは赤く存在を示している。それはまるで郁哉が赤いルージュを引いているようにも見える。
「凄い強烈だな……そんな誘い方、一体どこで覚えたの?」
複雑そうな面持ちの尾鷹に郁哉はサッと視線を逸し潤んだ瞳でチラリと尾鷹を見上げると、チョコを挟んだ半開きの唇から甘い息を吐き出した。
「まぁいいさ……それじゃ遠慮なく。いただきます」
ペロリと唇を舐めた尾鷹はチョコにキスをし、郁哉の唇ごと奪っていった。
互いの間で転がるチョコは、コーティングされた真っ赤な膜を溶かし、ルビーカカオベースの酸味を口腔に拡げていく。
ちゅく、くちゅと唾液が混ざる音を奏でながら塊は次第に溶け、プチッと弾け中から蜜のような濃厚な液体を溢れさせた。
「──んッ!」
零れる……そう思うと、より深く唇を塞がれた。
とろりとりろと甘い汁が喉を通り過ぎていく。
鼻から抜ける息さえも甘い匂いを漂わせる。
「ふっ、ん……っ、ふぅ……」
長い口付けにクラクラとするのはアルコールのせいだろうか。仕掛けたのは郁哉だが、返り討ちにあったようにくたりと身体の力が抜けてしまう。
甘いキスに惚けた双眸で尾鷹を見れば、余裕な様子で「ごちそうさま」と言いクスッと笑われてしまう。
経験値でいうなら到底尾鷹に勝てるとは思えない。
膨れっ面で睨んだのち、挑発するように口角を上げ背中に回していた左腕をスーッと下へ落としていく。
そんな郁哉に対して尾鷹は興味津々に口元を緩めている。次はなにをしてくれるの? とでも言いたげだ。
首筋に唇を寄せキスを落とし舌を這わせる。
左手でスウェット越しに兆し掛けている尾鷹に触れると、ピクリと身体を震わせていた。
「郁哉? これからは一緒に行けるでしょ」
ぼんやりとする郁哉にそう言い微笑む尾鷹の唇に釘付けになる。肉厚で柔らかいことはすでに承知済みだが、アルコールで体温が上がっているのか赤く色付き妙に艶めかしい。
ゴクリと唾を飲み込むと、もう一つしたいことが頭をよぎる。
手にしたグラスの中に入った白い芳醇な液体を一気に飲み干すと、七瀬から貰ったチョコレートに視線を向ける。
「……郁哉?」
急に黙り込む郁哉に酔が回ったと勘違いする尾鷹は「水持ってこようか?」と立ち上がろうとする。
尾鷹のシャツの裾をキュッと掴みその場に留めると、郁哉はボソリと呟いた。
「那津、このチョコ食べてもいい?」
「ああ、折角貰ったし食べよう。ワインにも合うよ」
シックな黒い箱を開けると、真っ赤な艶のある半円型の小さな粒が並んでいる。インパクトのあるチョコレートは、まるで真っ赤なルージュを引いた小悪魔のように蠱惑的だ。
ひと粒摘み唇に乗せると、尾鷹のシャツを引き寄せ首に腕を廻す。そんな郁哉の行動に驚きを隠せない尾鷹は、ゴクリと喉を鳴らしつつ郁哉の好きにさせていた。
頬を染める郁哉より、唇に挟まれたチョコレートは赤く存在を示している。それはまるで郁哉が赤いルージュを引いているようにも見える。
「凄い強烈だな……そんな誘い方、一体どこで覚えたの?」
複雑そうな面持ちの尾鷹に郁哉はサッと視線を逸し潤んだ瞳でチラリと尾鷹を見上げると、チョコを挟んだ半開きの唇から甘い息を吐き出した。
「まぁいいさ……それじゃ遠慮なく。いただきます」
ペロリと唇を舐めた尾鷹はチョコにキスをし、郁哉の唇ごと奪っていった。
互いの間で転がるチョコは、コーティングされた真っ赤な膜を溶かし、ルビーカカオベースの酸味を口腔に拡げていく。
ちゅく、くちゅと唾液が混ざる音を奏でながら塊は次第に溶け、プチッと弾け中から蜜のような濃厚な液体を溢れさせた。
「──んッ!」
零れる……そう思うと、より深く唇を塞がれた。
とろりとりろと甘い汁が喉を通り過ぎていく。
鼻から抜ける息さえも甘い匂いを漂わせる。
「ふっ、ん……っ、ふぅ……」
長い口付けにクラクラとするのはアルコールのせいだろうか。仕掛けたのは郁哉だが、返り討ちにあったようにくたりと身体の力が抜けてしまう。
甘いキスに惚けた双眸で尾鷹を見れば、余裕な様子で「ごちそうさま」と言いクスッと笑われてしまう。
経験値でいうなら到底尾鷹に勝てるとは思えない。
膨れっ面で睨んだのち、挑発するように口角を上げ背中に回していた左腕をスーッと下へ落としていく。
そんな郁哉に対して尾鷹は興味津々に口元を緩めている。次はなにをしてくれるの? とでも言いたげだ。
首筋に唇を寄せキスを落とし舌を這わせる。
左手でスウェット越しに兆し掛けている尾鷹に触れると、ピクリと身体を震わせていた。
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