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第5章 砂糖の美味しい食し方85%
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ブンブンと激しく首を左右に振りマイナス思考を追いやる。
(イメージはバッチリのはずだ! やらなきゃハートは掴めない! 頑張れ俺!!)
自身を奮い立たせるように喝を入れると時刻を確認する。間もなく十九時を回ろうとしている。
簡単なレシピを選んだものの、一品だけでは味気ない。料理でハートを掴めないにしても、あと二品は作りたいところだ。
調理を終えたらシャワーを浴び、汗を流し清い身体で尾鷹を迎えたい。
ひとり意気込みながら段取りを巡らせると、タブレットを切り替え次の料理に取り掛かった。
お風呂から上がりリビングに向かうと、郁哉は立ち止まり珍獣にでも遭遇したかのように驚いていた。
書斎の前に尾鷹が佇んでいただけだが、先ほどまで居なかった人物が数分で出現すれば驚くのも無理はない。
「ただいま……ん? なに?」
「あ……いや……」
出鼻をくじかれてしまった。
当初の予定では、帰宅した尾鷹に労いの言葉を掛け、積極的にキスでも仕掛けようとシュミレーションしていたのだ。
どうにも計画通りにいかないものだ。
ガクリと肩を落としながら、意外と早く帰ってきた尾鷹に「おかえり」と、いつも通りに言葉だけで留めておいた。
「ああ、これお土産」
「ありがとう。って! うおぉ~!! これ、ショコラナグモのだ。凄い! 良く買えたね?」
「貰い物だよ。透のラボに行っていたんだ」
「あっ……それで……」
郁哉の前を通り過ぎる尾鷹から、仄かに消毒液の匂いがしていた。七瀬のラボの実態を知らぬ郁哉だが、体調不良で病院に掛かった訳ではないのだと胸を撫で下ろす。
「夕飯もう食べた?」
「ううん、実は苦戦してて……さっきできたとこ。汗かいたから先に風呂入ってた。用意しとくから、那津も先にシャワー浴びてきなよ」
クンクンと服の匂いを嗅ぐ尾鷹は「そのほうがいいみたい」と、そのまま浴室に向かていった。
ダイニングテーブルに温め直した料理を並べ終わると、尾鷹がシャワーを浴び終え戻ってきた。
「美味しそう。イタリアンだね」
「へへ……少しは上達したかな?」
「見た目は完璧。味は……楽しみにしておく。イタリアンなら丁度いいね。少し飲まない? 買ってきたんだ」
コクリと頷くと尾鷹がワインボトルとグラスを手に戻る。良く冷えた白ワインがグラスに注がれていく。
乾杯をしひと口飲むと、ピーチと柑橘系の味わいがさらりと喉を通り過ぎていく。フルーティーで爽やかなワインは甘味が強く、郁哉でも飲みやすいものだった。
「味も上達したね。凄く美味しいよ」
「マジ!? 良かったぁ~」
まさか家飲みするとは考えてもいなかったが、簡単な料理だからこそおつまみにもなる。
褒めて貰えたことにホッとすると、空になりそうなグラスにワインを注ぎ足してくれる。
「あんまり飲んだら酔っ払っちゃうよ。甘いのにさっぱりしているからゴクゴク飲んじゃう」
「家だし酔っ払っても構わないよ」
「そうだけど、俺あんま強くないんだ」
「知ってる。優しく介抱するけど?」
前回の失態を指しているのか、尾鷹はクスクスと笑う。つい先週のことだがずいぶん前の出来事に思える。
(イメージはバッチリのはずだ! やらなきゃハートは掴めない! 頑張れ俺!!)
自身を奮い立たせるように喝を入れると時刻を確認する。間もなく十九時を回ろうとしている。
簡単なレシピを選んだものの、一品だけでは味気ない。料理でハートを掴めないにしても、あと二品は作りたいところだ。
調理を終えたらシャワーを浴び、汗を流し清い身体で尾鷹を迎えたい。
ひとり意気込みながら段取りを巡らせると、タブレットを切り替え次の料理に取り掛かった。
お風呂から上がりリビングに向かうと、郁哉は立ち止まり珍獣にでも遭遇したかのように驚いていた。
書斎の前に尾鷹が佇んでいただけだが、先ほどまで居なかった人物が数分で出現すれば驚くのも無理はない。
「ただいま……ん? なに?」
「あ……いや……」
出鼻をくじかれてしまった。
当初の予定では、帰宅した尾鷹に労いの言葉を掛け、積極的にキスでも仕掛けようとシュミレーションしていたのだ。
どうにも計画通りにいかないものだ。
ガクリと肩を落としながら、意外と早く帰ってきた尾鷹に「おかえり」と、いつも通りに言葉だけで留めておいた。
「ああ、これお土産」
「ありがとう。って! うおぉ~!! これ、ショコラナグモのだ。凄い! 良く買えたね?」
「貰い物だよ。透のラボに行っていたんだ」
「あっ……それで……」
郁哉の前を通り過ぎる尾鷹から、仄かに消毒液の匂いがしていた。七瀬のラボの実態を知らぬ郁哉だが、体調不良で病院に掛かった訳ではないのだと胸を撫で下ろす。
「夕飯もう食べた?」
「ううん、実は苦戦してて……さっきできたとこ。汗かいたから先に風呂入ってた。用意しとくから、那津も先にシャワー浴びてきなよ」
クンクンと服の匂いを嗅ぐ尾鷹は「そのほうがいいみたい」と、そのまま浴室に向かていった。
ダイニングテーブルに温め直した料理を並べ終わると、尾鷹がシャワーを浴び終え戻ってきた。
「美味しそう。イタリアンだね」
「へへ……少しは上達したかな?」
「見た目は完璧。味は……楽しみにしておく。イタリアンなら丁度いいね。少し飲まない? 買ってきたんだ」
コクリと頷くと尾鷹がワインボトルとグラスを手に戻る。良く冷えた白ワインがグラスに注がれていく。
乾杯をしひと口飲むと、ピーチと柑橘系の味わいがさらりと喉を通り過ぎていく。フルーティーで爽やかなワインは甘味が強く、郁哉でも飲みやすいものだった。
「味も上達したね。凄く美味しいよ」
「マジ!? 良かったぁ~」
まさか家飲みするとは考えてもいなかったが、簡単な料理だからこそおつまみにもなる。
褒めて貰えたことにホッとすると、空になりそうなグラスにワインを注ぎ足してくれる。
「あんまり飲んだら酔っ払っちゃうよ。甘いのにさっぱりしているからゴクゴク飲んじゃう」
「家だし酔っ払っても構わないよ」
「そうだけど、俺あんま強くないんだ」
「知ってる。優しく介抱するけど?」
前回の失態を指しているのか、尾鷹はクスクスと笑う。つい先週のことだがずいぶん前の出来事に思える。
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