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第4章 甘い砂糖には裏がある75%
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冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、ソファーに気怠げに座り明るみ始めた外の景色を眺めた。
間もなく朝日が登り始める時間帯だ。それにもかかわらず尾鷹はスマホをタップしコール音を鳴らした。
『……はい……坊っちゃん……今何時だと?』
数コール鳴らすと溜息と共に寝起きの声が不機嫌そうに答える。尾鷹はその姿を想像し、クスッと笑い電話の相手に話し掛けた。
「優しく起こしてやったんだ。いい目覚めだろ?」
『……全く……最近人使いが荒くないですか?』
「似非飼い犬が使えないからな。他に信頼できる奴がいないんだ」
『良く言いますね……それで? 今日はこんな朝っぱらからなんのご用で?』
「一つ交渉に行って欲しいところがある。内容と場所は先にメールしておいた」
『あーはいはい、暫しお待ちを……』
電話の相手──七瀬透は、電話の向こうからギィィとスプリングの音を響かせ、カタカタと叩くような音を立てていた。
きっとまたベッドに横にならず、最近新しく購入した自慢のゲーミングチェアーで寝落ちしていたのだろう。
『……坊っちゃん、この内容いくらなんでもあんまりだ。私の管轄外では? こう見えて私は多忙なんですよ。それに近場ですし、坊っちゃんならこれぐらい簡単なことでしょうが……』
「俺はうさぎちゃんの面倒を見なきゃいけない。それに少し眠りたいしな」
『人を起こしといてそりゃないですよ……』
「管轄外は承知の上だよ。その代わり、欲しがっていた検体を提供するけど?」
ガタッ! と大きな音が鼓膜を叩き、尾鷹はスマホを耳から遠ざけた。
『ほっ、ほっ、本当ですね! 約束ですよ!』
「ああ……分かったから落ち着けよ。耳が痛いだろ?」
『交渉成立です。それじゃあ早速行くとしますかね。昼過ぎには片付くかと』
「それは頼もしいね。期待してるよ」
『終わり次第そちらに伺いますからね! 絶対ですよ!』
「ああ、だから……分かったって。よろしく頼むよ」
七瀬透は優秀だ。それは仕事ができるだけではない。少々……いや、だいぶ変人なところはあるが、天才特有の天性のものだと諦めている。
四年前にたまたま立ち寄ったバーで出合い意気投合した。酒に溺れ堕落していた七瀬を引き入れたのは、むしろ尾鷹にとって幸運だったのかもしれない。
和泉のように裏がなく、尾鷹を信頼し誠実に接してくれる男だ。尾鷹の周りには早々いない貴重な人間だった。
通話を終えると複雑な顔付きで、空になったペットボトルをクシャリと握り潰す。
(さてと……あっちは透に任せておけば問題ないな。けど……怒るだろうな……)
寝室の扉に視線を流すと、今にも郁哉が顔を真っ赤に染めながら自分に罵声を浴びせる姿が目に浮かぶ。けれどそんな姿でも郁哉は可愛らしいに違いない。
やっと素直に身体を開くようになったが、逃げられてしまうだろうか……と、尾鷹はこれから起こるであろうことに、楽しそうに頬を緩ませていた。
間もなく朝日が登り始める時間帯だ。それにもかかわらず尾鷹はスマホをタップしコール音を鳴らした。
『……はい……坊っちゃん……今何時だと?』
数コール鳴らすと溜息と共に寝起きの声が不機嫌そうに答える。尾鷹はその姿を想像し、クスッと笑い電話の相手に話し掛けた。
「優しく起こしてやったんだ。いい目覚めだろ?」
『……全く……最近人使いが荒くないですか?』
「似非飼い犬が使えないからな。他に信頼できる奴がいないんだ」
『良く言いますね……それで? 今日はこんな朝っぱらからなんのご用で?』
「一つ交渉に行って欲しいところがある。内容と場所は先にメールしておいた」
『あーはいはい、暫しお待ちを……』
電話の相手──七瀬透は、電話の向こうからギィィとスプリングの音を響かせ、カタカタと叩くような音を立てていた。
きっとまたベッドに横にならず、最近新しく購入した自慢のゲーミングチェアーで寝落ちしていたのだろう。
『……坊っちゃん、この内容いくらなんでもあんまりだ。私の管轄外では? こう見えて私は多忙なんですよ。それに近場ですし、坊っちゃんならこれぐらい簡単なことでしょうが……』
「俺はうさぎちゃんの面倒を見なきゃいけない。それに少し眠りたいしな」
『人を起こしといてそりゃないですよ……』
「管轄外は承知の上だよ。その代わり、欲しがっていた検体を提供するけど?」
ガタッ! と大きな音が鼓膜を叩き、尾鷹はスマホを耳から遠ざけた。
『ほっ、ほっ、本当ですね! 約束ですよ!』
「ああ……分かったから落ち着けよ。耳が痛いだろ?」
『交渉成立です。それじゃあ早速行くとしますかね。昼過ぎには片付くかと』
「それは頼もしいね。期待してるよ」
『終わり次第そちらに伺いますからね! 絶対ですよ!』
「ああ、だから……分かったって。よろしく頼むよ」
七瀬透は優秀だ。それは仕事ができるだけではない。少々……いや、だいぶ変人なところはあるが、天才特有の天性のものだと諦めている。
四年前にたまたま立ち寄ったバーで出合い意気投合した。酒に溺れ堕落していた七瀬を引き入れたのは、むしろ尾鷹にとって幸運だったのかもしれない。
和泉のように裏がなく、尾鷹を信頼し誠実に接してくれる男だ。尾鷹の周りには早々いない貴重な人間だった。
通話を終えると複雑な顔付きで、空になったペットボトルをクシャリと握り潰す。
(さてと……あっちは透に任せておけば問題ないな。けど……怒るだろうな……)
寝室の扉に視線を流すと、今にも郁哉が顔を真っ赤に染めながら自分に罵声を浴びせる姿が目に浮かぶ。けれどそんな姿でも郁哉は可愛らしいに違いない。
やっと素直に身体を開くようになったが、逃げられてしまうだろうか……と、尾鷹はこれから起こるであろうことに、楽しそうに頬を緩ませていた。
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