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第3章 砂糖を湯煎で溶かしたら55%
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どうやら触れてはいけないことだったらしい。
シャツに染み付いた香水の匂いは、まるで原液を鼻から吸い上げているような強烈さがある。
「うわっ! 最悪! どんだけ密着してたんだよ!」
他人の、しかも尾鷹の情事など想像したくもない。
尾鷹が相手にするほどだ、きっと色気たっぷりの絶世の美女に違いない。
「最悪なのは俺だ。なんなんだお前は! 人を喜ばせたり不機嫌にさせたり!」
それはこっちのセリフだ……と言おうにも、なんの嫌がらせなのか、尾鷹は塗り付けるように郁哉の頭にシャツを激しくガシガシと擦りつけてくる。
「うわああっ! 臭いッ! やめろッ!! 折角風呂入ったのに! 匂い付くってばッ!!」
「ああ、そうだね。丁度いい。ほら、入るぞ」
「えっ! 嫌だよッ!!」
腕を掴まれるとヒョイッと軽々郁哉を肩に担ぎ、浴室へと強制的に連行されてしまう。ウエイトの軽い郁哉だが、女のように軽々持ち上げられるのは腹が立つ。
頭に血が上りクラクラしながらも「降ろせ馬鹿ッ!!」と叫びポカポカ尾鷹の背中を叩いた。
深夜だというのに男二人で一体なにをしているのか。
抵抗虚しく手慣れた動作で服をもがれ浴室内へと押し込まれる。
一度は抱かれ見られまくった身体だが、恥ずかしさこの上ない。なにより今身体を晒すのは、尾鷹が抱いてきたであろう女と比べられるようで惨めでならない。
肌を隠そうにも逃げ場などなく、シャワーも浴びずに張られた湯の中へと飛び込む。
郁哉を追うように堂々と彫刻のように鍛えられた裸体を晒し、尾鷹が浴室内に入ってくる。すぐにシャワーの音がし、チラリと見れば郁哉のことなど眼中にない様子で身体や髪を洗い上げていた。
「……なんで俺まで……」
乳白色のお湯に口元まで浸かりぼやいていると、早々に全身を洗い終えた尾鷹が浴槽に入ってくる。
お湯が尾鷹を中心に波紋を立たせ静かに揺れている。
二人で入っても十分余裕のあるバスタブに向い合せで足を伸ばすと、尾鷹の身体の一部に触れ慌てて膝頭を抱える。
「郁哉は髪洗わないの?」
「とうの昔に洗ったし。そもそも那津のせいじゃん……」
「洗ってあげようか?」
「……別にいい」
「女臭くてもいいの?」
ムッとしながら尾鷹を睨むと、腕の辺りを掴まれ引き寄せられる。
浴槽に足を滑らせると、尾鷹の胸の中に顔を埋めていた。
尾鷹から香水の匂いは消えたものの、記憶として鮮明に蘇ってきてしまう。その不快な匂いを上書きするように、尾鷹の体臭を肺に送り込んだ。
スンスンと郁哉の髪に鼻を寄せる尾鷹は「意外と匂い付いてないね。郁哉の匂いがする」と、恥ずかしげもなく言ってくる。
「なら俺、もう上がっていいよね」
「折角だし付き合ってよ。裸の付き合いっていうでしょ?」
「……なにそれ……勝手だな」
くるりと身体を返し膨れっ面で離れようとすると、抱き留めるようにうしろから腕を回してきた。
シャツに染み付いた香水の匂いは、まるで原液を鼻から吸い上げているような強烈さがある。
「うわっ! 最悪! どんだけ密着してたんだよ!」
他人の、しかも尾鷹の情事など想像したくもない。
尾鷹が相手にするほどだ、きっと色気たっぷりの絶世の美女に違いない。
「最悪なのは俺だ。なんなんだお前は! 人を喜ばせたり不機嫌にさせたり!」
それはこっちのセリフだ……と言おうにも、なんの嫌がらせなのか、尾鷹は塗り付けるように郁哉の頭にシャツを激しくガシガシと擦りつけてくる。
「うわああっ! 臭いッ! やめろッ!! 折角風呂入ったのに! 匂い付くってばッ!!」
「ああ、そうだね。丁度いい。ほら、入るぞ」
「えっ! 嫌だよッ!!」
腕を掴まれるとヒョイッと軽々郁哉を肩に担ぎ、浴室へと強制的に連行されてしまう。ウエイトの軽い郁哉だが、女のように軽々持ち上げられるのは腹が立つ。
頭に血が上りクラクラしながらも「降ろせ馬鹿ッ!!」と叫びポカポカ尾鷹の背中を叩いた。
深夜だというのに男二人で一体なにをしているのか。
抵抗虚しく手慣れた動作で服をもがれ浴室内へと押し込まれる。
一度は抱かれ見られまくった身体だが、恥ずかしさこの上ない。なにより今身体を晒すのは、尾鷹が抱いてきたであろう女と比べられるようで惨めでならない。
肌を隠そうにも逃げ場などなく、シャワーも浴びずに張られた湯の中へと飛び込む。
郁哉を追うように堂々と彫刻のように鍛えられた裸体を晒し、尾鷹が浴室内に入ってくる。すぐにシャワーの音がし、チラリと見れば郁哉のことなど眼中にない様子で身体や髪を洗い上げていた。
「……なんで俺まで……」
乳白色のお湯に口元まで浸かりぼやいていると、早々に全身を洗い終えた尾鷹が浴槽に入ってくる。
お湯が尾鷹を中心に波紋を立たせ静かに揺れている。
二人で入っても十分余裕のあるバスタブに向い合せで足を伸ばすと、尾鷹の身体の一部に触れ慌てて膝頭を抱える。
「郁哉は髪洗わないの?」
「とうの昔に洗ったし。そもそも那津のせいじゃん……」
「洗ってあげようか?」
「……別にいい」
「女臭くてもいいの?」
ムッとしながら尾鷹を睨むと、腕の辺りを掴まれ引き寄せられる。
浴槽に足を滑らせると、尾鷹の胸の中に顔を埋めていた。
尾鷹から香水の匂いは消えたものの、記憶として鮮明に蘇ってきてしまう。その不快な匂いを上書きするように、尾鷹の体臭を肺に送り込んだ。
スンスンと郁哉の髪に鼻を寄せる尾鷹は「意外と匂い付いてないね。郁哉の匂いがする」と、恥ずかしげもなく言ってくる。
「なら俺、もう上がっていいよね」
「折角だし付き合ってよ。裸の付き合いっていうでしょ?」
「……なにそれ……勝手だな」
くるりと身体を返し膨れっ面で離れようとすると、抱き留めるようにうしろから腕を回してきた。
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