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後編
8 魔王
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真太郎、雄一、そして柏木の三人は、熱海の険しくも長い坂道を駆け足で登っていた。
――この世界は妻の憧れの世界なのです。
視力を失い続け、やがて光を閉ざした瞳の憧れと約束。
この世界は永遠そのものだったけれど、突如現れた思わぬ運命の壁。それはまぎれもない出雲の駄菓子屋の存在だった。
男と女はどうにかして遠ざけようとした。美琴の力と体を借り、少女には背負いきれない負荷もかけた。
でも、それは間違っている。
女がそう言った。男もうなずいた。しかし、もう美琴の心の刃は止まらない。器になりやすい少女の心――男と女の憧れの世界には、すでに出雲の駄菓子屋に集まった他の霊たちも入り込んでいたのだから。
遠くで波の音が聞こえた気がした。真太郎はこの無音の世界の中でも、見慣れた熱海の町の面影を重ね、聞こえもしない音を頭の中で塗り付けたのだ。
人の心の隙間に霊が憑依する。そんな話なら、今まで嫌というくらい真太郎は聞いてきた。しかし、まさか自分が隙間に入り込んでしまうなんて……。
――きっと、あなたのその不思議で立派なお力のせいでございましょう。
大作は例の如く優しい笑みをもって真太郎に語りかけた
「あなたの近くに居ると、心が落ち着いて不思議と安心するのです」
しかし、それを快く思わない者たちもいるのだと大作は付け加えた。それが、大西に憑依した悪霊なのだろう。
真太郎たちは今、大西のもとに向かっている。大西の居場所、そして美琴が大西に連れ去られたことを男から聞いたのだ。
大作の妻、愛子は、この世界を維持するための義眼を求めて美琴を追う。
美琴の持つ義眼だ。この世界が暗くなっているのは、愛子が義眼を持っていないからなのだ。ぽっかり開いた空の穴は、地平線を越えはじめ、世界のすべてを包みこもうとする勢いである。
さて、物語はまさに終盤。消えかかる視界の暗幕に隠れているのは、果たしてハッピーエンドかバッドエンドか。
ひとり旅が趣味の雄一は夢の中で見た浜辺の景色を思い出した。二人仲睦まじい姿に、突如入る無情のひびに、いくら能天気な雄一であっても、怒りを隠せずにいた。
大西が待つ場所。来宮神社。熱海の守り神でもある大楠木は、樹齢二〇〇〇年も越え、太古の息吹を吐きながら、この地で圧倒的な存在感を示している。神々しくもあるこの大楠木には、数々の神話や伝説を纏い、人々の世代を繰り返し追い続けていた。
気が付くと熱海の町を一望できる(はずの)場所まで登り、線路下のトンネルをくぐると、ついに大西の居る神社へ続く参道への入り口が見えてきた。
自然の中に溶け込む朱色の鳥居も、この世界では色を失っていて、風化した石像のようにただ三人を招いているようであった。
大西は三人の到来を予期しているのであろうか。悪霊の狙いはこの世界の持ち主である愛子だ。美琴の持つ義眼でおびき出し、そして侵略する。
道中は無言であった。聞こえてくるのは鳴き声のような地鳴りだけ。彼らも自ずと理解している。そろそろエンディングだ。そして幕を下ろすためには、今まで以上の試練を越えねばならない。緊張と怒りとが混じった三人は、顔を合わすこともなく、ただ同じ方向を向いて砂利道を進む。
参道を抜けると、本堂が見えてきた。普段は観光客で賑わうこの場所も、今は神さえもいないのだ。
「楠木さまはあっちです」
大楠木は、本堂を左手に入った奥に立っている。よく見ると、看板も立っていた。案内をする真太郎も緊張を隠せない。嫌に喉が渇く。汗は無いけれど、今更転んだ時の肩が痛くなってきた。
不思議な力――真太郎が店番の時、決まって怪現象は起きない。特に自分で気にしたことはないけれど、自分でも薄々気がついていた。
真太郎はあの店が好きだった。暇ではあるけれど、居心地の良い時間が流れ、妙に落ち着く。それは、一人でない「何か」と一緒に居る安心感なのかもしれない。
「さあ、いよいよだ」
青年の隣で、雄一はあたかも小学生の遠足のような足取りで、本堂の裏の大楠へ歩き出す。マイペース。鼻歌さえも聞こえてきそうな雄一の後姿を見て、真太郎は彼の奇妙な雰囲気に背中を押された気がした。
それは柏木も顔を引き締める。向かう先には、愛娘の美琴がいるのかもしれないのだから。
砂利道を音を立てながら三人は歩く。普段の世界ならば、青く高い空に、緑の葉っぱが輝き、白の本堂と朱色の鳥居がさらに世界を鮮やかに染める。
だが、ここは異世界だ。憧れの世界――視野が奪われ、黒く支配された寂しい世界。
それももうすぐ終わる。
「邪魔者たちが……」
大楠木の前で振り返る大西の顔が曇った。物語の主人公たちは、ついに魔王にたどり着いたのだ。
大西と対峙する三人。
「美琴!」
大西の後ろには、大楠木にもたれて座る美琴がいた。意識はない。樹齢2000年を超える御神木に守られ、心地よく眠っているようにも見える。
「お前!」
怒りの刀を抜いて、大西に飛び掛かろうとした柏木を大西が制止する。
「そこまで!」
地鳴りが一層大きくなった。さっきまでとは違い、足元の大地も揺れている。真太郎はバランスを必死に取りながら、美琴の側に小さな「黒い渦」が出来ていることに気が付いた。
「さあ、おいで!」
大西が叫ぶと、その黒い渦から何かが出てくるのではないか。
カラカラカラ……。
柏木はその聞いたことのある音に背筋が凍った。からくり人形。柏木がこの世界で目覚めたホテルにて、絶対的な危機に陥れた小さな脅威。
大西は口元に不敵な笑みを浮かべると、現れたからくり人形が、例の如く甲高い声をあげた。
「さあさあ! 皆さん遊びましょう! これから始めるメインイベント! 見逃さない訳にはいかないよ! さあ寄って寄って!」
凸凹の地面を器用に動きながら美琴の側へ駆けていく。
「ちょうど良い。お前たち邪魔者もいずれ消すんだ……」
大西の体に、女の霊が重なる。恨めしそうなクマのできた眼。すでに大西の意識はない。傀儡の肉体は、完全に女のものとなっていた。
からくり人形は、小さくも脆い両腕で器用に美琴の手を掴むと、ゆっくりと引きずり始めたではないか。まるで飾りのような両腕のどこにそんな力があるのだろうか。
美琴はまだ目を開けない。ひっぱられる先はからくり人形が現れたその黒い渦だと気が付いた時、柏木の止まっていた足が動いた。
「美琴!」
からくり人形は美琴を連れて黒い渦に入っていく。柏木は無理やり足を動かして跡を追う。思い切って渦に飛び込むと、すぐに黒い渦は、柏木こと消えてしまったではないか。
大楠木の前には、真太郎、雄一、そして気味の悪い笑みを浮かべた大西が睨みあっている。
「持ち主から始末しようと思っていたけれど、おびき出されたのはお前たちか」
大西はポケットからピンクの巾着袋を取り出した。振ると、カランと音が鳴る。
美琴と柏木を苦しめ、奇妙な縁で雄一も巻き込んだその巾着には、白無垢の女の義眼が入っているのだ。
世界を見たいという憧れがついに世界を創造した。今では義眼を失い、ついには世界が暗闇に侵され始める。
真太郎もその巾着袋を知っている。供養式の前日。大西が帰って今度こそ店仕舞をしようとしたときに柏木紳士が訪ねてきたのだ。真太郎が中身は何かと聞くと、柏木は「目だ」と答えた。
「あれを取り返したら良いんだな?」
「はい」
裏路地で少女が落とした巾着袋。雄一もあの時すぐに追いかけていればと少しだけ後悔し始めている。だが、それも「運命」。思わず乗った暗黒行の汽車なのに、雄一自らが運転席に座ろうとしているのだ。
雄一が地面を蹴ると、それに続いて真太郎も駆け出す。目指すは大西。目的は巾着袋。
大西は二人の猛突撃にただ立っているだけであった。不敵な笑みを浮かべながら。
もう少しで大西に触れられる、巾着袋に手が届くというところ。しかし、何かにぶつかってしまった。
そして、自分たちの突撃と同じ力で跳ね返され、走り始めた位置よりも遠くに戻されてしまったではないか!
――この世界は妻の憧れの世界なのです。
視力を失い続け、やがて光を閉ざした瞳の憧れと約束。
この世界は永遠そのものだったけれど、突如現れた思わぬ運命の壁。それはまぎれもない出雲の駄菓子屋の存在だった。
男と女はどうにかして遠ざけようとした。美琴の力と体を借り、少女には背負いきれない負荷もかけた。
でも、それは間違っている。
女がそう言った。男もうなずいた。しかし、もう美琴の心の刃は止まらない。器になりやすい少女の心――男と女の憧れの世界には、すでに出雲の駄菓子屋に集まった他の霊たちも入り込んでいたのだから。
遠くで波の音が聞こえた気がした。真太郎はこの無音の世界の中でも、見慣れた熱海の町の面影を重ね、聞こえもしない音を頭の中で塗り付けたのだ。
人の心の隙間に霊が憑依する。そんな話なら、今まで嫌というくらい真太郎は聞いてきた。しかし、まさか自分が隙間に入り込んでしまうなんて……。
――きっと、あなたのその不思議で立派なお力のせいでございましょう。
大作は例の如く優しい笑みをもって真太郎に語りかけた
「あなたの近くに居ると、心が落ち着いて不思議と安心するのです」
しかし、それを快く思わない者たちもいるのだと大作は付け加えた。それが、大西に憑依した悪霊なのだろう。
真太郎たちは今、大西のもとに向かっている。大西の居場所、そして美琴が大西に連れ去られたことを男から聞いたのだ。
大作の妻、愛子は、この世界を維持するための義眼を求めて美琴を追う。
美琴の持つ義眼だ。この世界が暗くなっているのは、愛子が義眼を持っていないからなのだ。ぽっかり開いた空の穴は、地平線を越えはじめ、世界のすべてを包みこもうとする勢いである。
さて、物語はまさに終盤。消えかかる視界の暗幕に隠れているのは、果たしてハッピーエンドかバッドエンドか。
ひとり旅が趣味の雄一は夢の中で見た浜辺の景色を思い出した。二人仲睦まじい姿に、突如入る無情のひびに、いくら能天気な雄一であっても、怒りを隠せずにいた。
大西が待つ場所。来宮神社。熱海の守り神でもある大楠木は、樹齢二〇〇〇年も越え、太古の息吹を吐きながら、この地で圧倒的な存在感を示している。神々しくもあるこの大楠木には、数々の神話や伝説を纏い、人々の世代を繰り返し追い続けていた。
気が付くと熱海の町を一望できる(はずの)場所まで登り、線路下のトンネルをくぐると、ついに大西の居る神社へ続く参道への入り口が見えてきた。
自然の中に溶け込む朱色の鳥居も、この世界では色を失っていて、風化した石像のようにただ三人を招いているようであった。
大西は三人の到来を予期しているのであろうか。悪霊の狙いはこの世界の持ち主である愛子だ。美琴の持つ義眼でおびき出し、そして侵略する。
道中は無言であった。聞こえてくるのは鳴き声のような地鳴りだけ。彼らも自ずと理解している。そろそろエンディングだ。そして幕を下ろすためには、今まで以上の試練を越えねばならない。緊張と怒りとが混じった三人は、顔を合わすこともなく、ただ同じ方向を向いて砂利道を進む。
参道を抜けると、本堂が見えてきた。普段は観光客で賑わうこの場所も、今は神さえもいないのだ。
「楠木さまはあっちです」
大楠木は、本堂を左手に入った奥に立っている。よく見ると、看板も立っていた。案内をする真太郎も緊張を隠せない。嫌に喉が渇く。汗は無いけれど、今更転んだ時の肩が痛くなってきた。
不思議な力――真太郎が店番の時、決まって怪現象は起きない。特に自分で気にしたことはないけれど、自分でも薄々気がついていた。
真太郎はあの店が好きだった。暇ではあるけれど、居心地の良い時間が流れ、妙に落ち着く。それは、一人でない「何か」と一緒に居る安心感なのかもしれない。
「さあ、いよいよだ」
青年の隣で、雄一はあたかも小学生の遠足のような足取りで、本堂の裏の大楠へ歩き出す。マイペース。鼻歌さえも聞こえてきそうな雄一の後姿を見て、真太郎は彼の奇妙な雰囲気に背中を押された気がした。
それは柏木も顔を引き締める。向かう先には、愛娘の美琴がいるのかもしれないのだから。
砂利道を音を立てながら三人は歩く。普段の世界ならば、青く高い空に、緑の葉っぱが輝き、白の本堂と朱色の鳥居がさらに世界を鮮やかに染める。
だが、ここは異世界だ。憧れの世界――視野が奪われ、黒く支配された寂しい世界。
それももうすぐ終わる。
「邪魔者たちが……」
大楠木の前で振り返る大西の顔が曇った。物語の主人公たちは、ついに魔王にたどり着いたのだ。
大西と対峙する三人。
「美琴!」
大西の後ろには、大楠木にもたれて座る美琴がいた。意識はない。樹齢2000年を超える御神木に守られ、心地よく眠っているようにも見える。
「お前!」
怒りの刀を抜いて、大西に飛び掛かろうとした柏木を大西が制止する。
「そこまで!」
地鳴りが一層大きくなった。さっきまでとは違い、足元の大地も揺れている。真太郎はバランスを必死に取りながら、美琴の側に小さな「黒い渦」が出来ていることに気が付いた。
「さあ、おいで!」
大西が叫ぶと、その黒い渦から何かが出てくるのではないか。
カラカラカラ……。
柏木はその聞いたことのある音に背筋が凍った。からくり人形。柏木がこの世界で目覚めたホテルにて、絶対的な危機に陥れた小さな脅威。
大西は口元に不敵な笑みを浮かべると、現れたからくり人形が、例の如く甲高い声をあげた。
「さあさあ! 皆さん遊びましょう! これから始めるメインイベント! 見逃さない訳にはいかないよ! さあ寄って寄って!」
凸凹の地面を器用に動きながら美琴の側へ駆けていく。
「ちょうど良い。お前たち邪魔者もいずれ消すんだ……」
大西の体に、女の霊が重なる。恨めしそうなクマのできた眼。すでに大西の意識はない。傀儡の肉体は、完全に女のものとなっていた。
からくり人形は、小さくも脆い両腕で器用に美琴の手を掴むと、ゆっくりと引きずり始めたではないか。まるで飾りのような両腕のどこにそんな力があるのだろうか。
美琴はまだ目を開けない。ひっぱられる先はからくり人形が現れたその黒い渦だと気が付いた時、柏木の止まっていた足が動いた。
「美琴!」
からくり人形は美琴を連れて黒い渦に入っていく。柏木は無理やり足を動かして跡を追う。思い切って渦に飛び込むと、すぐに黒い渦は、柏木こと消えてしまったではないか。
大楠木の前には、真太郎、雄一、そして気味の悪い笑みを浮かべた大西が睨みあっている。
「持ち主から始末しようと思っていたけれど、おびき出されたのはお前たちか」
大西はポケットからピンクの巾着袋を取り出した。振ると、カランと音が鳴る。
美琴と柏木を苦しめ、奇妙な縁で雄一も巻き込んだその巾着には、白無垢の女の義眼が入っているのだ。
世界を見たいという憧れがついに世界を創造した。今では義眼を失い、ついには世界が暗闇に侵され始める。
真太郎もその巾着袋を知っている。供養式の前日。大西が帰って今度こそ店仕舞をしようとしたときに柏木紳士が訪ねてきたのだ。真太郎が中身は何かと聞くと、柏木は「目だ」と答えた。
「あれを取り返したら良いんだな?」
「はい」
裏路地で少女が落とした巾着袋。雄一もあの時すぐに追いかけていればと少しだけ後悔し始めている。だが、それも「運命」。思わず乗った暗黒行の汽車なのに、雄一自らが運転席に座ろうとしているのだ。
雄一が地面を蹴ると、それに続いて真太郎も駆け出す。目指すは大西。目的は巾着袋。
大西は二人の猛突撃にただ立っているだけであった。不敵な笑みを浮かべながら。
もう少しで大西に触れられる、巾着袋に手が届くというところ。しかし、何かにぶつかってしまった。
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