上 下
28 / 28
第七章 第四の復讐

27話 重なり

しおりを挟む
「あれ。雪は?」
私の隣にやってきた海斗は首をかしげた。

「…そこにいるわよ」
私が崖の下を指差すと、海斗は顔色を変えた。
「お、落ちたのか!?」
「いいえ。私が落としたの」
「は?…何で、そんな事を」
「何でって?私が優美だからよ。」
「何言って…」
「私から全てを奪った人達に思い知らせてやるのよ。私はあんたを許さない。あの日のことも、言い寄ってきた今も」
海斗を睨みつけると、彼は私に詰め寄ってきた。
「だったら!復讐する相手は俺だろ!?雪は関係ない」
「そうね。関係ないから良いのよ。だって、大事なものを奪われる方が苦しいでしょ?」
「お前……」
「いいの?このままじゃ雪ちゃん死ぬわよ。」
「このっ……悪魔め」 
吐き捨てるように言うと、海斗は雪を助けるために崖の下へと降りて行った。

私は皐月に電話をかけた。
「事が済んだわ。」
『ではボディーガードをつれて参ります』
「……ええ」
『どうかなさいました?』
「いいえ。もう切ってちょうだい」
『かしこまりました』


海斗が波にさらわれていく姿を、私はじっと見つめた。
後悔している訳ではない。どうしてかつての私は、こんな男に惹かれていたのだろうと考えていたのだ。
「お待たせ致しました」
皐月に声をかけられた。
「…行きましょうか」
「はい」

私が海に目をやると、一瞬波の間から雪の姿が見えた。
「あの子を…雪ちゃんを助けなさい」
私はボディーガードの男達にそう命じた。無意識だった。
「乙葉様…?」
「早くなさい。聞こえなかったの!?」
「は、はい!只今」
男達は慌てて海へと駆け出した。
「乙葉様、よろしいのですか?」
皐月が言った。
「自分でも分からないの。おそらく…」
海で溺れる雪と、火事に巻き込まれた宙が重なったのだろう。


「まだ息はありますが、危ないかもしれません」
男達に抱き抱えられている雪は、辛うじて生きていた。
病院で命を落とすかもしれない。
私は雪を腕に抱いた。
「あなたは運がいいわ。宙と重なりさえしなければ、私はあのまま復讐をやり遂げられたのにね。」

雪を抱いたまま車に戻ろうとした私の目の前に、1人の女性が現れた。
「その子、溺れたんですか?びしょ濡れで苦しそうじゃないですか。良かったらこのタオル使います?」

そう言う彼女を見た私は、驚いて声を掛けそうになった。

「美雪ちゃん」と。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(22件)

パラソル
2019.02.11 パラソル
ネタバレ含む
夢華彩音
2019.02.12 夢華彩音

忘れないで~(*_*)

解除
パラソル
2019.02.10 パラソル
ネタバレ含む
夢華彩音
2019.02.11 夢華彩音

( ᐛ )ヘヘッ

解除
パラソル
2018.12.18 パラソル
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

虚像のゆりかご

新菜いに
ミステリー
フリーターの青年・八尾《やお》が気が付いた時、足元には死体が転がっていた。 見知らぬ場所、誰かも分からない死体――混乱しながらもどういう経緯でこうなったのか記憶を呼び起こそうとするが、気絶させられていたのか全く何も思い出せない。 しかも自分の手には大量の血を拭き取ったような跡があり、はたから見たら八尾自身が人を殺したのかと思われる状況。 誰かが自分を殺人犯に仕立て上げようとしている――そう気付いた時、怪しげな女が姿を現した。 意味の分からないことばかり自分に言ってくる女。 徐々に明らかになる死体の素性。 案の定八尾の元にやってきた警察。 無実の罪を着せられないためには、自分で真犯人を見つけるしかない。 八尾は行動を起こすことを決意するが、また新たな死体が見つかり…… ※動物が殺される描写があります。苦手な方はご注意ください。 ※登場する施設の中には架空のものもあります。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。 ©2022 新菜いに

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。