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第七章 第四の復讐
27話 重なり
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「あれ。雪は?」
私の隣にやってきた海斗は首をかしげた。
「…そこにいるわよ」
私が崖の下を指差すと、海斗は顔色を変えた。
「お、落ちたのか!?」
「いいえ。私が落としたの」
「は?…何で、そんな事を」
「何でって?私が優美だからよ。」
「何言って…」
「私から全てを奪った人達に思い知らせてやるのよ。私はあんたを許さない。あの日のことも、言い寄ってきた今も」
海斗を睨みつけると、彼は私に詰め寄ってきた。
「だったら!復讐する相手は俺だろ!?雪は関係ない」
「そうね。関係ないから良いのよ。だって、大事なものを奪われる方が苦しいでしょ?」
「お前……」
「いいの?このままじゃ雪ちゃん死ぬわよ。」
「このっ……悪魔め」
吐き捨てるように言うと、海斗は雪を助けるために崖の下へと降りて行った。
私は皐月に電話をかけた。
「事が済んだわ。」
『ではボディーガードをつれて参ります』
「……ええ」
『どうかなさいました?』
「いいえ。もう切ってちょうだい」
『かしこまりました』
海斗が波にさらわれていく姿を、私はじっと見つめた。
後悔している訳ではない。どうしてかつての私は、こんな男に惹かれていたのだろうと考えていたのだ。
「お待たせ致しました」
皐月に声をかけられた。
「…行きましょうか」
「はい」
私が海に目をやると、一瞬波の間から雪の姿が見えた。
「あの子を…雪ちゃんを助けなさい」
私はボディーガードの男達にそう命じた。無意識だった。
「乙葉様…?」
「早くなさい。聞こえなかったの!?」
「は、はい!只今」
男達は慌てて海へと駆け出した。
「乙葉様、よろしいのですか?」
皐月が言った。
「自分でも分からないの。おそらく…」
海で溺れる雪と、火事に巻き込まれた宙が重なったのだろう。
「まだ息はありますが、危ないかもしれません」
男達に抱き抱えられている雪は、辛うじて生きていた。
病院で命を落とすかもしれない。
私は雪を腕に抱いた。
「あなたは運がいいわ。宙と重なりさえしなければ、私はあのまま復讐をやり遂げられたのにね。」
雪を抱いたまま車に戻ろうとした私の目の前に、1人の女性が現れた。
「その子、溺れたんですか?びしょ濡れで苦しそうじゃないですか。良かったらこのタオル使います?」
そう言う彼女を見た私は、驚いて声を掛けそうになった。
「美雪ちゃん」と。
私の隣にやってきた海斗は首をかしげた。
「…そこにいるわよ」
私が崖の下を指差すと、海斗は顔色を変えた。
「お、落ちたのか!?」
「いいえ。私が落としたの」
「は?…何で、そんな事を」
「何でって?私が優美だからよ。」
「何言って…」
「私から全てを奪った人達に思い知らせてやるのよ。私はあんたを許さない。あの日のことも、言い寄ってきた今も」
海斗を睨みつけると、彼は私に詰め寄ってきた。
「だったら!復讐する相手は俺だろ!?雪は関係ない」
「そうね。関係ないから良いのよ。だって、大事なものを奪われる方が苦しいでしょ?」
「お前……」
「いいの?このままじゃ雪ちゃん死ぬわよ。」
「このっ……悪魔め」
吐き捨てるように言うと、海斗は雪を助けるために崖の下へと降りて行った。
私は皐月に電話をかけた。
「事が済んだわ。」
『ではボディーガードをつれて参ります』
「……ええ」
『どうかなさいました?』
「いいえ。もう切ってちょうだい」
『かしこまりました』
海斗が波にさらわれていく姿を、私はじっと見つめた。
後悔している訳ではない。どうしてかつての私は、こんな男に惹かれていたのだろうと考えていたのだ。
「お待たせ致しました」
皐月に声をかけられた。
「…行きましょうか」
「はい」
私が海に目をやると、一瞬波の間から雪の姿が見えた。
「あの子を…雪ちゃんを助けなさい」
私はボディーガードの男達にそう命じた。無意識だった。
「乙葉様…?」
「早くなさい。聞こえなかったの!?」
「は、はい!只今」
男達は慌てて海へと駆け出した。
「乙葉様、よろしいのですか?」
皐月が言った。
「自分でも分からないの。おそらく…」
海で溺れる雪と、火事に巻き込まれた宙が重なったのだろう。
「まだ息はありますが、危ないかもしれません」
男達に抱き抱えられている雪は、辛うじて生きていた。
病院で命を落とすかもしれない。
私は雪を腕に抱いた。
「あなたは運がいいわ。宙と重なりさえしなければ、私はあのまま復讐をやり遂げられたのにね。」
雪を抱いたまま車に戻ろうとした私の目の前に、1人の女性が現れた。
「その子、溺れたんですか?びしょ濡れで苦しそうじゃないですか。良かったらこのタオル使います?」
そう言う彼女を見た私は、驚いて声を掛けそうになった。
「美雪ちゃん」と。
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