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第一章 ソレイユ地区 “始まり”
1話 嫌われ者
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ここはシュトラール王国の首都であるソレイユ地区。
この王国にはソレイユ地区以外に12個の地区が存在する。
そして、各地区ごとに大きなお城が建てられているのだ。
当然、首都であるソレイユ地区にはシュトラール王国を治める王族が暮らしている。
実はこの王国では、本名を名乗ることが禁じられているのだ。
じゃあどうするのかって?
私達シュトラール国民は皆コードネームを使っている。本名で呼ぶことができるのは身内あるいは信頼している人物のみ。
たとえそれに該当していたとしても、人が多い場所ではコードネームを使わなければならない。
だから、本名を教えてもらうということは信頼されている証でもあるのだ。
この王国の特徴はもう一つある。それは火、水、木、土、天、闇、光属性のうち一種類を持っていることだ。
光属性は王族だけの能力。
そして闇は異質な属性で、危険視されている。
ただし、ほとんどの人々の能力は大して強くない。ほんの少し日常で役立つ程度だ。
攻撃あるいは周囲を巻き込むほど強い力の持ち主は、王族又は十二支に限られている。
そして、その力(魔力)のことをマギアと呼んでいる。
序盤の説明はここまでにしておこう。
ほら、もうすぐ主人公がバイト先の本屋から帰るところだ。
「お先に失礼します。」
ミネはまだ残っている社員に軽く頭を下げた。
更衣室に向かおうと彼らに背を向けると、ひそひそ話が聞こえてきた。
「どうして店長はミネを採用したんだろうな」
「さぁね。私だったら即追い返してたわ。」
「十二支の“猫”だからな」
「しかもあの子、闇属性でしょ。」
「あぁ。」
「私だって不本意よ」
「あ、店長。いらしたんですね」
「不本意…というと?」
「ミネは私の友人、ジュファの娘なのよ。…友人に頭を下げられたら断れないじゃない。……仕事は出来るからまだマシってとこかしら」
そのやりとりを聞いていたミネは更衣室でため息をついた。
私が十二支の猫だから…
私が闇属性だから……
それだけの理由で皆から腫れ物扱いされる。
それだけ…か。
わからないこともない。
十二支から外された…邪魔な存在。
異質で、危険視されている闇。
私には嫌われて避けずまれる要素が十分にある。
「早く着替えて帰ろっと」
大急ぎで着替えを済ませて家に帰ると、オートンヌが出迎えてくれた。
「おかえり吉乃。…ちょっといいかしら」
「どうしたの?」
「お父さんが大事な話があるんですって」
「…え?何?お母さんは知ってるの?」
「………えぇ」
オートンヌは気まずそうな顔をした。
ミネは首をかしげてリビングに入った。
リビングといっても狭い空間に小さな机が置いてあるだけで窮屈だ。
ミネの家。……生駒家はその日暮らしていくのがやっとの生活をしている。要は貧乏人ということだ。
「お父さん。ただいま」
ミネは笑顔で言った。
「おかえり。…吉乃、ちょっと座りなさい」
「……はい」
ミネはジュファの前に腰を下ろした。
「少し前に…お前は16歳になったな」
「そうだよ。もう私成人だからね」
「…吉乃が成人したらずっと言おうと思っていたことがあるんだ」
「うん?」
ジュファはため息をついて、重い口を開いた。
「お前は……私達の実の娘ではないんだ」
この王国にはソレイユ地区以外に12個の地区が存在する。
そして、各地区ごとに大きなお城が建てられているのだ。
当然、首都であるソレイユ地区にはシュトラール王国を治める王族が暮らしている。
実はこの王国では、本名を名乗ることが禁じられているのだ。
じゃあどうするのかって?
私達シュトラール国民は皆コードネームを使っている。本名で呼ぶことができるのは身内あるいは信頼している人物のみ。
たとえそれに該当していたとしても、人が多い場所ではコードネームを使わなければならない。
だから、本名を教えてもらうということは信頼されている証でもあるのだ。
この王国の特徴はもう一つある。それは火、水、木、土、天、闇、光属性のうち一種類を持っていることだ。
光属性は王族だけの能力。
そして闇は異質な属性で、危険視されている。
ただし、ほとんどの人々の能力は大して強くない。ほんの少し日常で役立つ程度だ。
攻撃あるいは周囲を巻き込むほど強い力の持ち主は、王族又は十二支に限られている。
そして、その力(魔力)のことをマギアと呼んでいる。
序盤の説明はここまでにしておこう。
ほら、もうすぐ主人公がバイト先の本屋から帰るところだ。
「お先に失礼します。」
ミネはまだ残っている社員に軽く頭を下げた。
更衣室に向かおうと彼らに背を向けると、ひそひそ話が聞こえてきた。
「どうして店長はミネを採用したんだろうな」
「さぁね。私だったら即追い返してたわ。」
「十二支の“猫”だからな」
「しかもあの子、闇属性でしょ。」
「あぁ。」
「私だって不本意よ」
「あ、店長。いらしたんですね」
「不本意…というと?」
「ミネは私の友人、ジュファの娘なのよ。…友人に頭を下げられたら断れないじゃない。……仕事は出来るからまだマシってとこかしら」
そのやりとりを聞いていたミネは更衣室でため息をついた。
私が十二支の猫だから…
私が闇属性だから……
それだけの理由で皆から腫れ物扱いされる。
それだけ…か。
わからないこともない。
十二支から外された…邪魔な存在。
異質で、危険視されている闇。
私には嫌われて避けずまれる要素が十分にある。
「早く着替えて帰ろっと」
大急ぎで着替えを済ませて家に帰ると、オートンヌが出迎えてくれた。
「おかえり吉乃。…ちょっといいかしら」
「どうしたの?」
「お父さんが大事な話があるんですって」
「…え?何?お母さんは知ってるの?」
「………えぇ」
オートンヌは気まずそうな顔をした。
ミネは首をかしげてリビングに入った。
リビングといっても狭い空間に小さな机が置いてあるだけで窮屈だ。
ミネの家。……生駒家はその日暮らしていくのがやっとの生活をしている。要は貧乏人ということだ。
「お父さん。ただいま」
ミネは笑顔で言った。
「おかえり。…吉乃、ちょっと座りなさい」
「……はい」
ミネはジュファの前に腰を下ろした。
「少し前に…お前は16歳になったな」
「そうだよ。もう私成人だからね」
「…吉乃が成人したらずっと言おうと思っていたことがあるんだ」
「うん?」
ジュファはため息をついて、重い口を開いた。
「お前は……私達の実の娘ではないんだ」
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