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恋人関係

看病しましょう

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あの後、側近の人がお医者さんを呼んでくるまで、私はゼブラさんのそばに居た。
何が原因で倒れたのかわからないから、下手に動かせなくて…でも、身体に手を当てたときに鼓動が聞こえたので、死んじゃったりしてなくて、一先ずはほっとした。

お医者さんが到着したら、騎士たちがゼブラさんを部屋まで運んで…私も番ということで、同行させてもらった。
側近の人(ソルトさん)が私がゼブラさんの番だと周囲に説明すると、みんなとても驚いていたけど、そこから対応がとても丁寧になった。
(初めはソルトさんと一緒にいる知らない人間って感じだっただけで、失礼なことはされてないけどね)


ゼブラさんの容態をお医者さんが調べてる間、みんなが固唾を飲んで見守る。
何か大きな病気でなければ良いんだけど…

聴診器を外したお医者さんは、ゼブラさんから距離を取って、ソルトさんに話しかけた。

「身体の衰弱が少し…。それよりも、寝不足ですな。心当たりはありませんか?」


寝不足…!?

思わずソルトさんに目を向けると、彼は少し気まずそうに視線を斜め下に向けた。

「食事は、番様お手製のパンのみここ1ヶ月食べておりました。ただ…この4日は執務に追われて水分のみです。睡眠は10日とっておられませんでした」

「ええ!?」

思わず声が出た。

ツッコミどころが満載だ。

なんで!?どうして!!?

ご飯は!?10日寝てないってどういうこと!?

「番様、竜人は人と身体の作りが違うので…人ほど柔ではありません。ただ、10日寝ていないのは、流石の竜人でも耐えられるものではありませんが…」

お医者さんはそうフォローするけど、フォローになってない!

「な、なんでそんな無茶を…」

私がそう呟いたら、周囲は気まずそうに黙った。

その光景を見て、察した。




原因は…私か。









私はベッドの側の椅子に座って、ゼブラさんの手を握りながら、ソルトさんにいろんなことを聞いた。

ゼブラさんは元々多忙な人だった。
私と出会って一度は生きることを諦めかけてなんとか立ち直ったのを、みんなが喜んだ。
ただ私とのデートのために毎日7.8時間分は仕事を溜めていて…
その溜まった仕事を睡眠時間を削ることでこなしていた。
それでも溜まる仕事にどんどん睡眠時間を削って身体も衰弱していって、今日には長距離飛べないくらい弱っちゃって、それでも寝てはいられないから、明日私と会うためだけに無理をしながら仕事をして、終わったところで気を失ったんだと…。

そして…私のお店から買ったパンを全て自分一人で食べて、私を時々見守ることで、番を囲う本能と戦っていたのだという。




あーだめだ。

これ、今の生活を続けてたら、ゼブラさん死んじゃうやつ。




「ソルトさん、どうしたらゼブラさんは早く元気になりますか?」

「番様がそばにいてくだされば、皇帝はすぐに元気になりますよ」

取り繕ってくれてるだけなのか分からないけど、そう言ってくれるなら、今の私にできることはそれしかない。
ソルトさんや他の人たちは、何かあったら呼ぶことを条件に、私とゼブラさんを二人きりにしてくれた。

ゼブラさんが目を覚ましたら、私が一番にお迎えしたかったし…
ゼブラさんを目の前にして、今後の人生を考えたかったからだ。


といっても、改めて時間をかけて考えることはほとんどない。

この状況を説明したら、家族も納得してくれるだろう。
準備も急いですれば、数日でなんとかなるし。
問題は、彼の許可だけだ。


疲れ切った顔をしているゼブラさんの頬に手を添える。
毎日一緒にいたけどゼブラさんの不調に気づかなかった…
それがとても悔しい。

彼女なのに、私はゼブラさんのことをほとんど知らない。
知りたいことはすぐ教えてくれる彼に甘えて、でも本当に大切なことはほとんど聞いてこなかった。

ちゃんと、彼と話さないといけない。


「側にいたら元気になる…んだよね」

私に出来ることは、本当に少ない。
この身しか差し出せない。

ならば、出来る限りのことをしよう。


ソルトさんの冗談かもしれないけど、私は少しでもゼブラさんを癒したかった。

この身体は番の匂いとか本能とか分からないけど、衝動的に私は身体が動いた。

靴を脱いで、広いベッドに上がる。
ゼブラさんの横に並んで、彼の身体にそっと寄り添った。

「ゼブラさん、元気になってね」

私の元気を少しでも彼に分け与えるように、私はゼブラさんの身体にぴたりとくっついて、彼の名前を何度も呼んだ。
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