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死亡フラグを回避しよう
しおりを挟む状況は理解できないけど、死亡フラグが立っていることはわかる。
私が生き残るには、目の前のこの人をなんとかしないといけない。
なんとかしないと、数秒後に死んでしまう…!
「手を離すよ?お願いだから、目を閉じていてくれ。…痛くしたくないから。」
これ、目を開けたままだったら痛く殺されるの?
怖すぎるわ…!!
でも、目を閉じたままであっても、すぐに殺されそうだ。
そうなれば、迷っている時間はなかった。
「あ、あの!手をどかすの待ってもらっても良いですか?」
男の手がピクリと止まった。
「…なんで?」
少しだけ鼻声でそう問われたが、泣きたいのはこっちである。
なぜ死にそうな私が泣けなくて、殺そうとしてる人が泣いているのか。
意味がわからない。
「いや、ちょっと話が見えないので…手をどかす前に、いろいろ、教えてもらいたいんです。」
だって手をどかしたら貴方私を殺すでしょ?
理由もわからず殺されるのは嫌だ。
私の訴えが相手に通じたのか、男は私の目を押さえる手に少し力を入れた。
「絶対、絶対に嫌がらないって約束できるなら…」
あれ、意外と言うことを聞いてくれた。
精神的にイッちゃってる人ってわけでもないのか?
一先ず私の寿命が数分延びたようで安心して、私は言葉を慎重に選んだ。
男の言っていたことを思い出す。
その中で気になることはいくつもあるけど…
さっき目を見た時に、気づいたことがあった。
「あなた、獣人なんですか?」
ごくり、と目の前の男から音がした。
ま、まずいことを聞いたか?
選択を誤ったのか?
と焦る中、たっぷり間を置いて、男は冷静に返事をした。
「…私のことが気になるのか?」
そりゃ気にならないわけないでしょ。
私を殺そうとしてる人ですよ。
身に覚えもなければ、目の前の男の声は聞き覚えのない声だから余計に意味がわからないんだ。
…でも、私の憶測が当たっているなら、この言葉を言えば男は教えてくれるだろう。
「気になります。教えて下さい。」
「き、君が私を…っ!あぁ、君が望むのならば、私のことはいくらでも教えよう…!」
男は息が再び荒くなったが、これでまた時間を稼げた。
声からして、歳をとってる人じゃないんだよね。
若めというか…でも低い声。
若い女の子を強姦したい男でもないよね、襲うどころか殺そうとしてるし。…あぁ、殺した後に手を出すのかな?でもすぐに後を追うとか言ってたしなぁ…
って、なんか冷静に考えるどころか思考が脱線し始めた。
怖いのは怖いんだけど…
…でもこの人、多分しっかり話したらなんとか殺さないでいてくれそうなんだよね…
なぜかというと…
「私は、君の言う通り獣人だ。…ちょっとメジャーじゃないが、そ、その証拠に…、君から、…っ、つ、番の匂いも感じる。あ、あぁでも、だからこうしてここに君を閉じ込めているわけじゃないんだ…本能だけじゃないんだ…!一目惚れしたんだ!君の目も、髪も、肌も、全てに私は惹かれたんだ…!君の声も、とても綺麗だ。可愛らしくもある。私の鼓膜を振動させる君の音が、とても愛おしく感じるよ…!」
やばいやばい、変なスイッチ入っちゃったよ。
まぁでも、これでわかった。
この人、多分あれだよね。
私と番の人なんだ。
私は人間だから分からないけど、獣人は番ってものをとても重要視するくらいだから。確か…本能でもうその人がいないと狂っちゃうくらいだったような…
個人差があるとか聞いたこともあるけど、大なり小なり番は重要な存在だったはず。
この目の前の獣人さんの様子を見てると、かなり重度の方っぽいけど。
でも私たちが番なら、やはり分からないことがある。
「もう一つ聞いても良いですか?」
まだ何か私の良いところ?をブツブツと呟く獣人さんに、もう一つ聞いても良いかお願いしてみた。
すると、獣人さんは快く快諾してくれた。
ちょっと危ない橋を渡るけど、これを聞かないと状況把握ができないままだ。
私は勇気を出して、二つ目の質問をした。
「何で私を殺そうとしているんですか?」
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