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ヴィルヘルム殿下は息を飲んだものの表情はさほど変わらず、ただあたりの空気だけがピーンと張りつめたモノへと変わりました。途端に背中に突き刺さる視線と圧し掛かる重圧に私の呼吸が止まりそうです。

「何時から気付いていたんだ?」

「あら、おかしなことを仰られますのね。
 殿下は素性をお隠しになるおつもりがありませんでしたよね?」

他国の皇族の方に対応するのに今までと同じ態度という訳にはいかず、王太子妃教育の成果をここぞとばかりに発揮し、社交界用の表情と口調を使い全身に気を配ります。

「あぁ……確かに隠すつもりは無かった。
 どのあたりで気付いたのか知りたいのは単純な好奇心だ」

「そうですね……。まず皇国の方だというのは言葉や髪色ですぐに解りました。
 次いで瞳の色で皇族所縁ゆかりの方なのだろうとは思っておりました。
 そのうえで兄君のお名前がウィル様で弟君の名前がギル様となると
 第二皇子のヴィルヘルム殿下と第三皇子のギルベルト殿下が
 年齢や様々な条件に合致する事に気付きました。
 なのでお名前をお聞きした時点で可能性だけは……。
 決定的な確信を得たのは、つい先程のこと。
 ヴィルヘルム殿下が「ジェラルド殿」と王太子殿下をお呼びになった時に……」

ヴィルヘルム殿下の髪の色は夜空のような濃い藍色です。それをアスティオス皇国では勝色かちいろと呼んでいるのですが、皇族の場合のみ同じ色にも関わらず敬意をもって「軍勝色ぐんかちいろ」と呼ばれます。これは皇国が信仰している猛き男神が軍神とも称されているからで、皇家はその軍神の守護下にあるという意味があります。

そして皇国に行けば比較的よく見る髪色とは違い、殿下たちの不思議な瞳の色は皇族の血が流れている人にのみ現れる色です。紺から朱色へとグラデーションする瞳の色は夜明けの色をそのまま映したかのような色合いです。この瞳は世界広しといえどアスティオス皇家の血を引いた人にしか現れず、その事もあってアスティオス皇家は煌家と呼ばれたり「暁」という異名で呼ばれたりします。

魔境の森を挟んでいる為に隣国とはいえ距離があるアスティオス皇国とモディストス王国ですが、歴史を遡れば王国はもともと皇国の一部でした。その為に言葉もよく似ていますし、今でも他の国に比べれば交流の頻度は高めです。なので王太子妃教育で他国の王族や有名貴族を教えられた際には、真っ先にアスティオス皇家の方を覚えさせられました。ただ姿絵は何故か見せてもらえなかったので直ぐに判断はせず、あくまでもかなり高い可能性として捉えていました。

その可能性を確定へと変えたのは、ヴィルヘルム殿下がジェラルド殿下を「殿」と呼んだことでした。殿下でもなく様でもない、殿呼びは自分と同格か格下相手への呼び方です。一国の王太子に対してそんな呼び方が出来る方は限られています。

「あぁ、なるほど。気を付けてはいたんだがなぁ。
 それから俺は確かに第二皇子という肩書きを持ってはいるが、
 ここにいるのは冒険者のウィルだ。だから口調や態度を改める必要はないぜ?」

ふっとヴィルヘルム殿下の纏う空気が緩みました。それを感じて私もホッと息をつきます。そんな訳はないのですが、なんだか久しぶりに呼吸をした気分です。

「ありがとうございます。
 でしたら今まで通りウィルさんとお呼びしても?」

「勿論だ。むしろその名前しか俺は名乗ってないぜ?
 何にしても大変だったな。ジェラルド殿と最後に会ったのは8年程前だが、
 とても素直で元気な子供だった。それが悪い方へと働いたか……」

8年前となればジェラルド殿下はまだ10歳です。皇国のヴィルヘルム殿下は確か御年22歳のはずなので当時は14歳。ヴィルヘルム殿下からすれば、ジェラルド殿下はまだまだ小さい子供に見えた事でしょう。

「それで瘴気を退けるという魔力はどのようにして使うんだ?
 今ここで使う事はできるのか??」

「そうですね、簡単にいえば私の魔力を込めたモノを持っていれば
 その魔力が続く限り瘴気が寄ってこない……といった感じでしょうか」

流石に大地に結界を張って王国全土を瘴気から守っていたというのは言えません。国防に関する事を他国の人に話すなんて、何かと良くして頂いた陛下に対する裏切りのような気がして良心が痛みますし、ジェラルド殿下たちに対して確かに思うところはありますが、だからといって無関係の人たちまで巻き込むような災難を望む訳がありません。

「なるほど。じゃぁ常に身につけていられる装飾品の方が良いか。
 うーーん、俺のでやって欲しいところだが、
 瘴気の影響を一番受けているのはエルだからなぁ……。
 ちょっとエルのイヤーカフで試してくれないか?」

「それは構いませんが……。
 自分で言うのも何ですが、どうしてそんなに信じてくれるんです?
 荒唐無稽すぎて信じてもらえないかもと思いながら話していたんですが」

ここで俯いてしまうのが私の悪い癖です。ですが今までずっと誰からも話しを聞いてもらえず、また私の聞いてもらおうとする努力が足りず……。そんな人生を送ってきたので、誰かが私の話をきちんと最後まで聞いてくれているという現状に理解が追いつきません。むしろ不信感すら湧き上がってくる始末です。

「何故って……。いや俺はリアも知っての通り皇族なんだよ。
 その為に面従腹背な輩とも渡り合わなきゃならないし、
 何だったらそう言う奴らを自陣営に取り込むぐらいの気概が求められる。
 その為に人の言葉の裏や心の動きを見極める観察眼を
 小さい頃から教えられてきたし、身につけてきた。

 そんな俺からすれば、リア。君はとても分かりやすいよ。
 俺達に害意がないのは一目瞭然で、疑いの余地なんて欠片も無いぐらいだ。
 常に不安で寂しいけれど、自分に自信が無い所為で自分から手を伸ばせない。
 もちろん魔境に落されたという現状がそうさせているのもあるんだろうが、
 俺からすれば助けてあげたい可愛い女の子でしか」

「も、もう良いですっっ!!!」

赤くなれば良いのか青くなれば良いのか、ウィルさんの言葉に自分の感情がぐちゃぐちゃになってしまいます。皇子であるヴィルヘルム殿下の言葉を途中で遮るなんて不敬極まりありませんが、それ以上は聞いていられません。

勿論、私だってちゃんと解っています。ウィルさんの言う「可愛い」は小さい子供に言う「可愛い」と同じ意味だという事ぐらい。ですが今までそんなことを言われたことがなかったので免疫がなく、一気にパニックになってしまいました。

いきなり言葉を遮られたウィルさんは面食らって目を丸くしてしまいましたが、そのままハハハと明るく笑うと、ポンポンと頭を撫でてきました。ほら、やっぱり小さい子供扱いなんです、私はちゃんと解っていますよ。


━━━]━━━━━━━━━-


「私のイヤーカフをですか?」

嫌そうな顔をしつつもエルさんはウィルさんに促され、渋々左耳のイヤーカフを外しました。ローズブロンドの間からちらちらと見えていたのはプラチナのシンプルなイヤーカフで、小さな青い石がついていました。右耳にも同じデザインで赤い色の石がついたイヤーカフがあり、それも外そうとしてくれたのですが、とりあえず1つあれば十分です。

「いえ、此方だけで大丈夫です。それでは……」

そのイヤーカフをぎゅっと右手で握って、更にその右手を左手で握り目を瞑ります。結界能力は秘匿しなくてはならないうえに、人前で目を瞑るなんて無防備すぎると王国内では禁止されていましたが、ウィルさんを信じて目を瞑りました。

自分の中で何かがグルグルと回転し、その速度が高まりきるとその渦が光へと変わりました。その光を自分の掌の中にあるイヤーカフへと移動させるように意識を集中し、光の渦の全てをその中へと押し込むようにして魔力を籠めていきます。

どれぐらいの時間がかかったのか……。
毎回、この作業をするときは時間の感覚が解らなくなるのですが、今までと同じぐらいの時間がかかったのだとしたら10分程のはずです。その10分の集中を終えて掌を開くとそこにはうっすらと光を帯びたイヤーカフがあり、その光は見ている間にも徐々に収まっていきました。

「魔力を籠め終わりました」

そう言ってエルさんにイヤーカフを返します。それを胡散臭そうに見て、少し躊躇ってから指先で汚いものでも触るかのように突っついて、ようやく持ち上げるエルさん。かなり警戒されています。

いったい何が始まるんだ?と言わんばかりに覗き込んでくるギルさんやアンディさんですが、ウィルさん以外は事情を知らないので警戒されても仕方がありません。先に説明をした方が良いのでは?とウィルさんには言ったのですが、言葉で言うよりも実際に体験した方が解りやすいだろ?と言われてしまいました。

「持っているだけじゃ効果はないのか?」

「はい、不必要な魔力の消耗を避ける為に条件付けをしてあります。
 そのイヤーカフの発動条件は【エルさんの耳に装着したら】ですね」

私とウィルさんがそうやって会話している間に、意を決しています!とばかりに覚悟を決めた表情のエルさんがイヤーカフを耳に装着しました。途端にエルさんの身体を淡い光が包むと同時に、リーーンリーーーンと澄んだ音が辺りに響きました。これは陛下やジェラルド殿下が初めて対瘴気の指輪を身につけた時にも起こった現象で、既に体内に取り込まれてしまっている瘴気を浄化している時に起こる現象です。澄んだ音が鳴る度に険しかったエルさんの顔が少しずつ変わっていき、眉間に深く何本も刻まれていた皺が一本ずつ消えていきます。

そうして体内の瘴気の浄化が終われば光と音が消え、その後は結界が瘴気が入ってくるのを防いでくれるのです。エルさんの浄化も陛下たちと同じように進んだようで、眉間からはすっかり皺が消えて表情は何故か呆けたものへと変わっていました。

「おい、どうだ??」

心配と期待が混じったウィルさんの声にハッとしたエルさんは、ギュンッという音がしそうな勢いで私の方へと向き直ったと思ったら

「本当に申し訳ないっっっっ!!!!!」

と膝におでこがくっつきそうな程に腰を曲げて謝罪をし始めました。その勢いに思わずのけぞってしまいます。

「えっ?! いや、あの……」

「瘴気の所為とはいえ、貴女には大変な失礼を致しました。
 心よりの謝罪を……」

「だ、大丈夫ですから。瘴気の影響である事は理解していますし、
 先程も言いましたがお互い様ですから!」

頭を下げるどころじゃない姿勢に、私の方も慌ててしまいます。そんな私とエルさんの謝罪合戦のような光景を見たウィルさんはノンビリしたもので、

「おっ、いつものエルだな」

と笑いながらエルさんの背中をバンバンと叩きます。

「ゲホッ! ウィル!! 自分の腕力を自覚して加減してくださいと
 いつも言っているのに貴方って人は……」

咳き込みながらも苦情を言うエルさんに、ウィルさんは「すまん」と謝ってしょんぼりとしてしまいました。なんだかウィルさんが大型犬に見えてきます。

ウィルさんからすれば、瘴気に敏感に影響されるエルさんが本当に心配だったのでしょう。謝りつつも「良かった良かった」と心の底から安堵したような表情です。

「エル、瘴気の影響を全く感じないのですか?」

「えぇ……。驚くほどに感覚がクリアになっています。
 魔境に入って以来、頭が割れそうな程の痛みや不快感が常にありましたが、
 それらが全て……名残すらなく、嘘のように消えてしまっています。
 同時に常にあった苛立ちや、負の感情が暴走しそうな気配も消えました……。
 このような能力は我らが皇国でも女神の聖国でも前例がありません」

ギルさんとエルさんという4人の中でも魔力の扱いに長ける2人が、「ありえない」だとか「信じられない」といった言葉を繰り返しながらも、お互いの知識や情報を確認しあっています。

「リア、それは俺のような魔力がさほど高くない者でも利用可能な力だろうか?」

スッと私のすぐ横に来たアンディさんが真剣な表情で聞いてきました。エルさんが極力瘴気の影響を避けるようなルートや野営地を選んでは居ても、影響を全く受けないなんて事は不可能です。

現に私もいつも以上に疑心暗鬼になったり、不安になったりしているように思います。まだウィルさんが居るから何とか正常な判断が出来ていますが、もしウィルさんや皆さんが居なければ、例え落下死を免れたとしても生存するための正常な判断ができずに、不安と寂しさと恐怖に押し潰されてしまっていたでしょう。

「出来ますよ。何時も身につけているアクセサリーはありますか?」

私よりずっと背が高いアンディさんを見上げてそう答えます。ところがそんな私に、待ったをかけたのは、他でもないウィルさんでした。

「いや、待て。
 魔力を籠めるって事は、それだけ魔力を消耗するって事だ。
 瘴気の影響を回避できるという事に心が逸ってしまい、
 君の身体の負担に思い至らなかった俺の迂闊さを心から謝罪する。
 本当にすまなかった。だが、これ以上の魔力使用は避けるべきだ」

今度はウィルさんに頭を下げられてしまい、再び私は慌ててしまいました。王国で使っていた魔力量に比べれば、これぐらいなら大した負担ではありません。ですがそれを説明する訳にもいきませんし……。

「そうだな。俺も判断力が落ちていたようだ。すまない。
 リアの身体の負担を一番に考えるべきだった」

なんてアンディさんにまで頭を下げられたら、私は一体どうすれば良いのか……。今まで誰かに頭を下げられた事なんてなかったので、本当にどうすれば良いのか解らず、困ってしまってギルさんに助けを求めるような視線を向けてしまいます。

そんな私の視線に気付いたのか、エルさんと議論をしていたギルさんが

「2人ともらしくないですよ。
 リアが困ってしまっているじゃないですか」

と2人の肩を叩いて頭を上げるように促してくれました。どうやらウィルさんやアンディさんには判断力の低下として瘴気の影響が現れているらしく、何時もに比べて自分で解るほどに判断力が落ちているようです。

……エルさんが心配するのも激しく納得してしまいます。

「とりあえず、朝食を食べたら出発しましょう。
 リアの靴すら無い状態を考えると、安全な地までリアを送ってから
 再び魔境へ調査に戻った方が良さそうですし」

そうギルさんが仕切り直し、ようやく私を含めた5人は落ち着いて話をする事が出来るようになりました。朝食を食べながら、ウィルさんが

「俺の素性がリアにばれてた」

と晴れ晴れとした顔で言った時には瘴気の影響ではない頭痛がしましたが、他の三人は「そんな事だろうと思いましたよ」とサラリと流してしまうあたり、全員が素性を隠し通すつもりでは無かったようです。これはアスティオス皇家や貴族の在り方が原因なのだそうです。成人した男性(たまに女性も)は冒険者か兵士になる事が義務付けられていて、ウィルさんやギルさんは冒険者を選んだのだとか。そして冒険者や兵士をしている間は、例え皇族や貴族であっても一個人として扱うというのが当然という価値観があるらしく……。なんだか凄い国です。

そしてウィルさんたちが魔境にやってきた理由。それはここ数年、魔境から溢れ出てくるモンスターの数がどんどんと増えてきている謎を調査する為だそうです。

……それって……まさか……私が王国に結界を張った所為なのでしょうか?

嫌な汗が背中を伝います。ですが例え王国に結界があっても、この広い樹海を南にも北にも自由に行けるのに、東にだけ行く理由にはならない気がして大丈夫だと自分に言い聞かせます。

どこまでも保身に走ってしまう自分が、本当に情けなくて……。
それを口に出す勇気を持てない事が、もっともっと情けなくて……。

そんな情けない私なのにも関わらず、私の身の上を知ったギルさんもエルさんもアンディさんも本当に心の底から怒ってくれて、

「いや、ありえない。皇族……じゃなくて、王族か。
 王族の一員としてその言動はありえない。僕と同じ年なんだよね?」

とギルさんが憤れば

「何かしら魔力で操られていたとでも言われなければ説明できない
 阿呆……いや、馬鹿……いや、無能っぷりですね」

と全然、侮蔑の言葉を隠しきれていない……というより隠す気のないエルさん。

「しかも女性を力づくで床に押さえつけたと??
 そんな男が騎士候補?? ……騎士を何だと思っているだ」

とフレデリック様の騎士としてはあってはならない行動に、アンディさんは今にも剣を抜きそうな程に怒りを身体に漲らせます。

そうやって私の為に怒ってくださる人がいる……。
それがどれほどに心強く、嬉しく、涙がこぼれそうになるほどに幸せな事か、
私は生まれて初めて知る事ができました。


━━━]━━━━━━━━━-


朝食を終え、そろそろ出発するかと腰を上げたその時。エルさんがバッと空を見上げました。それからワンテンポ遅れて他の三人も空を……それも遥か西の空を、生い茂った木々の隙間から見通すように目を凝らして見詰めます。

「ど、どうしたのですか?」

事態が飲み込めていないのは私だけのようです。どうしたものかと悩んでいたら

「アンディ、リアを抱えろ!」

とウィルさんが指示をだし、それを受けてアンディさんがオロオロとする私をガッとまるで荷物のように抱え上げました。余りにも強く持ち上げられたので呼吸が苦しくてツライのですが、今は苦情なんて言える雰囲気ではありません。

「風の魔法力、その数……巨大なのが20と、通常が20」

エルさんがワンドを掲げて目を瞑ったと思ったら、どうやら何かしらの手段で遠くから近づいてくる存在を感知していたようです。

「この巨大な魔力、おそらくワイバーンだ!!」

「ワイバーンが20って事は、モディストスの飛竜騎士団か。
 ……リア、君を探しているんだろう。……君はどうしたい?」

エルさんの探知を受けて、ウィルさんが私の気持ちを聞いてくれました。

私は誰かからこうして「どうしたいのか」と気持ちを聞いてもらった事はありませんでした。そして自分の気持ちを伝える事も、なかなかできませんでした。

「王太子殿下の暴走を知った陛下が私を探しているのだと思います。
 でも……、陛下は私に良くしてくださいましたが……それでも……

 私は、もう、王国には戻りたくありません!!!」

涙がポトリと零れ落ちます。王国に居た時、どれほどツライ事があっても人前では泣くものかと堪えてきた涙が、今は堪えきれずに零れ落ちてしまいます。

「あぁ、解った。なら俺は昨晩のアスティオス神への誓言に則り、
 君が嫌がる事をしないという誓言の通り、君の意思を尊重して守り抜こう」

そうウィルさんが宣言し、アンディさんはゴツゴツした、でもとても優しい手で涙を拭ってくれました。そうして私達は背後からどんどんと迫ってくる飛竜の気配から逃げるように、東に向かって全速力で魔境を駆けていくのでした。
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