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第十二章 再会
あとがき
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あとがき
あとがき
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
私は、この物語を書き始めた当初は”メリー・バッドエンド”もしくは”バッドエンド”を迎えるつもりでした。どんなに人を想って行動したとしても他者の心を救うことは難しくて、自分を肯定することも難しい。そんなままならない気持ちや世界を書きたいと、そう思いながら書きました。
『絵の中の人々』は少し寝かしていた時期があるのですが、その頃に私自身の心に大きな変化があり、その結果として結末も変わりました。
この物語は常に死を意識して書いています。それこそ死を迎えれば後はどうにもなりません。残された人もどうすることも出来ません。その虚しさとも言える孤独をどうにかしたいと、私は主人公と共に旅に出ることにしました。
シズリは極めて自我の強い普通の女性です。悲しく寂しい時間が彼女を消極的にしてしまいましたが、本来は良く見かける様なパワフルなおばあちゃんです。
世界の正体を知った彼女が乙女を救いたいと一生懸命に考えるようになったのは、彼女が母親だったことが大きいです。近年では母親の愛というものでさえも繊細な話題であることは理解しています。しかし、この物語は男主人公でも良かったのです。そうすれば主人公が秘める心の一端に父親の愛を描いたと思います。
その反対に、精霊やシズリ以外の賢者は性別も年齢も、色を失うようにして手放してしまいました。結局、私は他者を簡単には救えないと考えながらも、人を想うということを、自身が書く物語の中でさえ否定できませんでした。
私は自身の中にどんな思想があるかなんてことは語る気はありません。
ただ、この物語の中では他人との違いは差異であり、鼓動を打つことがない命も人間や他の動物と同等であるということをしつこいくらいに書き続けました。そして物語には沢山の色を登場させるように意識しました。その色たちを美しい過去を思い出す為のスパイスにも使いました。そうすると過去も未来もカラーシートの内容は変わらない筈なのに、歴史を作り、物事を分けて考えようとすると何かしら価値がついてしまうのです。だからこそ、私はこの世界にある全てのものは”等しく価値は無い”と考えています。とはいえ、価値がないものを蔑ろにするのとは違います。何故なら、蔑ろにすることも価値を付け、そうした振る舞いや扱いをして良いと判断した結果の行動となるからです。そして誰もが持っている自分だけの”美しい思い出”もまた価値なんぞつけるべきものではないのです。
過去の悲惨は仄暗い色で描き、未来の希望は明るい色で描くことはこの物語の中では正しい色使いをしているとはいえません。洋服や靴、建物は姿を変えるけど、人間の姿は変わりません。花も、魚も、大まかな姿からは変わりません。今日、新たに開発されたものも明日には過去になります。未来こそ夢を見させてくれるおとぎ話であり、過去こそ私たちが生きている時間なのだと。だから過去の見たままのものや感じたままのことを伝え、それが残っていくことは”美しい”と私は思っています。どんなに時が経とうとも色だけは変わらないものですから、過去も未来も、世界の生い立ちでさえも、世界にあるのは同じ色です。
「ただ在ることをつまらない人生」と捉えるか、「人生においてただ在ることは難しい」と捉えるかを考えた時に、この物語の世界では後者の「人生においてただ在ることは難しい」を採用しました。それは変化を嫌っているようにも思えますが、そういう意味ではありません。ただ在ることは感情もないような気分にさせられるようなもので、姿形、文化、習慣、色、その全てに付加価値はありません。価値を付けたがる生き物にとって、それがどれほど難しいことなのか、主人公は少しばかり理解できたのかと思います。
私は主人公である『シズリ』の言動に価値を付けまいと、彼女に様々な困難を与えようと様々な手を考えたものですから。
最も”人らしい”シズリは自身の身においたり、他者の身になって考えなくては割り切れない性格をしていますが、それで良いのです。世界の均衡を守る為には感情よりも変化を求めず維持することを重視しますが、世界を作っているのは心ですので。だから、シズリと他の賢者を対立軸にあるように分けて描きました。
そして『絵の中の人々』という世界にとっての正解”を作らないことで、「こうした方が平和だろう」とか、「こうしなければ不幸はなかったのに」とか、この物語の中で考えられたなら、それこそ『絵の中の人々』にピリオドは打たれないのだと思います。
今回、オリジナルの小説を書ききることが初めてで、物語を終わらせることの大変さを痛感いたしました。
物語を物語として捉えるだけではなくて、共感できる心があったり、読者自身が見た美しい光景をこの物語を通して思い出して貰えたりしたなら、私はそういった形でこの物語が誰かの心の中に残ってくれたら幸せです。
最後となりますが、SNSでのいいねやリツイート、各小説でのいいねや感想、ブックマーク。そしてファンアートを頂いたり、とても楽しく連載を進めることができました!
私にとって、とても大切で美しい作品である『絵の中の人々』を最後まで読んでくださり、そして大切にしてくださり本当にありがとうございました。心から感謝いたします。
追伸.
番外編や後日談、外伝なども更新していくので、今後ともよろしくお願いいたします。
そして最後の最後のお願いとなりますが、いいねやスタンプ、感想やブックマークよろしくお願いします!
2022.12.12 遥々岬
あとがき
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
私は、この物語を書き始めた当初は”メリー・バッドエンド”もしくは”バッドエンド”を迎えるつもりでした。どんなに人を想って行動したとしても他者の心を救うことは難しくて、自分を肯定することも難しい。そんなままならない気持ちや世界を書きたいと、そう思いながら書きました。
『絵の中の人々』は少し寝かしていた時期があるのですが、その頃に私自身の心に大きな変化があり、その結果として結末も変わりました。
この物語は常に死を意識して書いています。それこそ死を迎えれば後はどうにもなりません。残された人もどうすることも出来ません。その虚しさとも言える孤独をどうにかしたいと、私は主人公と共に旅に出ることにしました。
シズリは極めて自我の強い普通の女性です。悲しく寂しい時間が彼女を消極的にしてしまいましたが、本来は良く見かける様なパワフルなおばあちゃんです。
世界の正体を知った彼女が乙女を救いたいと一生懸命に考えるようになったのは、彼女が母親だったことが大きいです。近年では母親の愛というものでさえも繊細な話題であることは理解しています。しかし、この物語は男主人公でも良かったのです。そうすれば主人公が秘める心の一端に父親の愛を描いたと思います。
その反対に、精霊やシズリ以外の賢者は性別も年齢も、色を失うようにして手放してしまいました。結局、私は他者を簡単には救えないと考えながらも、人を想うということを、自身が書く物語の中でさえ否定できませんでした。
私は自身の中にどんな思想があるかなんてことは語る気はありません。
ただ、この物語の中では他人との違いは差異であり、鼓動を打つことがない命も人間や他の動物と同等であるということをしつこいくらいに書き続けました。そして物語には沢山の色を登場させるように意識しました。その色たちを美しい過去を思い出す為のスパイスにも使いました。そうすると過去も未来もカラーシートの内容は変わらない筈なのに、歴史を作り、物事を分けて考えようとすると何かしら価値がついてしまうのです。だからこそ、私はこの世界にある全てのものは”等しく価値は無い”と考えています。とはいえ、価値がないものを蔑ろにするのとは違います。何故なら、蔑ろにすることも価値を付け、そうした振る舞いや扱いをして良いと判断した結果の行動となるからです。そして誰もが持っている自分だけの”美しい思い出”もまた価値なんぞつけるべきものではないのです。
過去の悲惨は仄暗い色で描き、未来の希望は明るい色で描くことはこの物語の中では正しい色使いをしているとはいえません。洋服や靴、建物は姿を変えるけど、人間の姿は変わりません。花も、魚も、大まかな姿からは変わりません。今日、新たに開発されたものも明日には過去になります。未来こそ夢を見させてくれるおとぎ話であり、過去こそ私たちが生きている時間なのだと。だから過去の見たままのものや感じたままのことを伝え、それが残っていくことは”美しい”と私は思っています。どんなに時が経とうとも色だけは変わらないものですから、過去も未来も、世界の生い立ちでさえも、世界にあるのは同じ色です。
「ただ在ることをつまらない人生」と捉えるか、「人生においてただ在ることは難しい」と捉えるかを考えた時に、この物語の世界では後者の「人生においてただ在ることは難しい」を採用しました。それは変化を嫌っているようにも思えますが、そういう意味ではありません。ただ在ることは感情もないような気分にさせられるようなもので、姿形、文化、習慣、色、その全てに付加価値はありません。価値を付けたがる生き物にとって、それがどれほど難しいことなのか、主人公は少しばかり理解できたのかと思います。
私は主人公である『シズリ』の言動に価値を付けまいと、彼女に様々な困難を与えようと様々な手を考えたものですから。
最も”人らしい”シズリは自身の身においたり、他者の身になって考えなくては割り切れない性格をしていますが、それで良いのです。世界の均衡を守る為には感情よりも変化を求めず維持することを重視しますが、世界を作っているのは心ですので。だから、シズリと他の賢者を対立軸にあるように分けて描きました。
そして『絵の中の人々』という世界にとっての正解”を作らないことで、「こうした方が平和だろう」とか、「こうしなければ不幸はなかったのに」とか、この物語の中で考えられたなら、それこそ『絵の中の人々』にピリオドは打たれないのだと思います。
今回、オリジナルの小説を書ききることが初めてで、物語を終わらせることの大変さを痛感いたしました。
物語を物語として捉えるだけではなくて、共感できる心があったり、読者自身が見た美しい光景をこの物語を通して思い出して貰えたりしたなら、私はそういった形でこの物語が誰かの心の中に残ってくれたら幸せです。
最後となりますが、SNSでのいいねやリツイート、各小説でのいいねや感想、ブックマーク。そしてファンアートを頂いたり、とても楽しく連載を進めることができました!
私にとって、とても大切で美しい作品である『絵の中の人々』を最後まで読んでくださり、そして大切にしてくださり本当にありがとうございました。心から感謝いたします。
追伸.
番外編や後日談、外伝なども更新していくので、今後ともよろしくお願いいたします。
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2022.12.12 遥々岬
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