上 下
413 / 421
~最終章~◆◆◆物語はハッピーエンドが良いよね?◆◆◆

413ページ目…出来ちゃいました【6】

しおりを挟む
「俺は人間をやめるぞ、○ョ○ョーーー!」

 そう叫びながら、俺はダンジョンコアを起動させた。
 残念ながら、この場にいるメンバーで、このネタが分かるのは俺とプリンだけである。
 この時、ダンジョンを作成するにあたり、地下へ潜るタイプのダンジョン…迷宮型か、塔を登っていくダンジョン…タワー型かを選択させられた。
 なお、注意事項?として、お薦めは地下へ潜るタイプだった。
 理由としてだが、物理的に使える空間が、塔だと必然的に狭くなるからの様だ。

 ちなみに、俺が作り出すダンジョンはタワー塔型を選択する為、広さが足りなくならない様に、最初に広めの土地を確保した。
 もちろん、場所は町の外の為、未開拓地と言う事もあり商業ギルドの管轄かんかつから外れており、お金は無料タダだった。

 ただまぁ、本来であれば、その土地を使うと言う意味で、領主ないし国へ税金を収めないといけないのだろうが、そこに出来るのがダンジョンと言う事もあり、その事実を知る者が黙秘していれば、バレる事はない。
 そして、|バレない様にする工夫契約魔法は、完璧である。

 そんなこんなで、広大な土地にちっぽけな塔・・・・・・が完成する。
 我ながら、何とも小さな塔だと思う。
 ぶっちゃけ、この大きさなら、小さな港町の灯台の方が大きいのではないだろうか?

 何はともあれ、俺は冒険者ギルドのギルマスことラオンさんと、商業ギルドのギルマスことオーサさん、そして…プリンを連れて塔の中へと入っていった。

 塔の扉を開け中に入ると、まず飛び込んできたのが、目の前の台座の上に浮かぶ大きなクリスタル…ダンジョンコアである。

「んじゃ、いっちょやりますか!」

 俺は、そう言ってプリンの方を見る。

「はい、それでは…〖融合〗。」

 もはや、俺達二人の間には説明は不要で、プリンの身体がスライム化して俺の方へと飛んでくる。
 そして、俺の身体に纏わり付いたかと思うと、俺の身体に侵食するかの様に融合する。
 もっとも、それらの行為は一瞬で行われる為、見てる人には何が起きたか分からない事だろう。
 そして、その行為がもたらした結果は…強制的な〖魔王化〗である。

「な、何と…これが例の〖魔王化〗と言うヤツなのじゃな?」

 その禍々しい姿を初めて見たオーサさんが、少し引き気味で尋ねてくる。

「えぇ、これでも彼等にとっては、まだまだ本気ではないのですがね…。
 って言うか、オイッ!また強くなってるんじゃないか!?」

 初めて見るオーサさんは素直に驚く反面、その姿を見慣れたラオンさんは、その潜在する力ポテンシャルを感じ取ったのか、確認をする余裕まである様だ。
 ちなみに、この日の為に、オーサさんはラオンさん同様、契約魔法で俺の秘密や正体を秘匿する事を義務付けられている為、今は何を見せても問題無くなっている。
 まぁ、あくまで常識の範囲内ではあるが説明はしている…が、既に存在自体が非常識になっているので説得力がない台詞である。

「えぇ、一応、自力で制御出来るレベルですけどね。」

 魔王:エギンと戦いで大幅にパワーアップしてしまった為、恥ずかしながら、未だに完璧に制御出来ていない。
 正直な話、ダンジョンを新たに作る理由の一つが、この力の制御する為でもある。
 今までのダンジョンでも言える事だが、その制御をミスると大事故になりかねない。
 それ故、誰も使用していないダンジョンを新たに作り、そこで修業をする事に決めたのだ。
 それに自分のダンジョンであれば入り口を開放していなければ、誰も入ってこれないと言う利点もある。

「えっと…それじゃ、〖魔神化〗しますので、二人とも離れて貰って良いですか?」

 こちらの力は、〖魔王化〗以上に制御が出来ていない。
 下手に動くだけで、大事故どころか大惨事を引き起こす可能性があるのだ。
 それを分かっていながらも、これからの作業には必要な事である為、力を開放する。

「〖魔神化〗ッ!」

 内に秘めた力を全開放し、さらなる強化を発動させる。
 その瞬間、禍々しい力と神々しい力、二つが混じり合った力が辺りに溢れ出す。

「えっと…二人とも大丈夫ですか?」

 この〖魔神化〗の威圧感…〖神威カムイ〗とも言うべき力は、確実に見た者の精神力を削るであろう。
 その不安からか、俺は振り返って、二人に無事の確認をする。
 そこで見た物は…。

 座り込んで互いに抱き締め合い、ガクガクブルブルと震えつつも、必死に頭を上下に振る二人…。
 心無しかオーサさんの足元が濡れている様な…とりあえず、気の所為と言う事にして、見なかった事にする。
 何はともあれ、二人が無事なのが分かった為、正面…ダンジョンコアの方へ振り向くと、ゆっくりと歩き出す。
 下手に早く動くと、それだけで衝撃波が発生してしまいそうなので細心の注意が必要である。

「ふぅ…やっと付いた…。」

 僅か数メートルの距離を、俺は、たっぷり時間を掛けて歩き、コアへと辿り着く事が出来た。
 だが、本当の作業本番はこれからである。
 俺は、ダンジョンコアを操作して、ダンジョンポイントの補充を始める。
 通常であれば、ダンジョンに人や他の生き物が入り込む事により、少しずつ溜まっていく物である。
 しかし、俺がやろうとしているのは、ある種の裏技みたいな物である。

 莫大な魔力や生命力をコアに与える事で、通常よりもダンジョンポイントDPへの変換効率が悪く非効率ながらも、一気にダンジョンポイントを増やす事が出来る方法だったりする。
 そんな裏技を〖魔神化〗した俺が使おうとすると、どうなるか…。

『ビービー!ビービー!警告、エネルギーの異常上昇を確認、直ちに供給をストップして下さい!』

 速攻で、警告音が鳴り出したので、俺は慌てて供給を止める。
 まぁ、作りたてのダンジョンなので、ダンジョンコアの成長が出来ておらず、許容量キャパシティが少ないとは思っていたが、予想以上に少なかった様だ。
 いや、そうではなく〖魔神化〗が強過ぎるただけなのかもしれない。

 何はともあれ、今の補充で警告が出ると言う事は、十分なダンジョンポイントが溜まったはずなので、それを使い、さらにダンジョンコアを操作する。
 操作する内容は、もちろん…。

「拡張!」

 与えた全ダンジョンポイントを全て使い、ダンジョンの拡張を行う。
 『ズズズズズンッ!』と腹に響く様な音と共に、ダンジョンが拡張されていく。
 その大きさは、およそ500mと言った所だろうか?直径で…。

 なお、溜まっていたDPは、それでも使いきれなかったので今度は階層を増やす事にした。
 驚いたのは、タワー型だとダンジョンが下から生える様に追加された事だろうか…。
 てっきり、今の階層の上に新たな階層が追加されると思っていた為、失敗である。
 ちなみに、新しく出来た階層は、今の階層よりも少しだけ直径が大きかった。

 まぁ、よくよく考えてみれば、今いる階層がダンジョンコアの間なのだから、この上に階層が出来たとしてもダンジョンコアを守る事は出来ないのだ。
 そう考えれば、より守りやすくする為には、この階層の下に新たな階層を増やす必要があるのは明白だった。

 何はともあれ、ダンジョンポイントを消費したので、再度補充する。
 そして、補充が完了したら、拡張と改造を繰り返す。
 その途中で、ダンジョンコアのランクが上がり、許容量がアップしたりもした。

 更に、改造ついでに、大きくなり過ぎたダンジョンコアの部屋を適正な大きさまで小さくすると共に、新たに階層を増やしていく。
 なお、ダンジョンの拡張…とは言っても、別にこれ以上、塔の直径を増やすのではなく、周辺の土地もダンジョン化する。
 もっとも、そこは安全地帯…セーフティーゾーンとして、ダンジョン内の扱いではあるが魔物は出ない仕様にしておく。
 いや、例外として、環境保全の為に、お掃除用のスライムは出るには出るが、その存在は最低ランクの冒険者でも敵ではないし、近くに人がいたら出てこない仕様なので問題は無い筈だ。

 更に更に、二人のギルドマスターとの話し合いの結果、防犯を理由にダンジョンの領域としてギリギリの所に防壁を作る事にした。
 なお、防壁はダンジョンから魔物が溢れ出した場合、魔物を留めておく為の物であるが、俺のダンジョンなので溢れさせる事は、ありえないと断言出来る為、二人には、ダンジョンの領域を分かりやすくする為と説明している。
 まぁ、ダンジョンの領域内であれば、ある程度は、こちらで監視出来るので犯罪行為を防ぎやすくなる…とも教えている。

 何はともあれ、ラオンさんとオーサさんには先にお帰りしてもらい、俺達は、その日は時間の許す限りダンジョンの拡張を続け、メルトの町に帰っていくのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩に抱かれたくて尿道開発している僕の話

聖性ヤドン
BL
主人公の広夢は同じ学生寮に住む先輩・日向に恋をしている。 同性同士だとわかっていながら思い余って告白した広夢に、日向は「付き合えないが抱けはする」と返事。 しかしモテる日向は普通のセックスには飽きていて、広夢に尿道でイクことを要求する。 童貞の広夢に尿道はハードルが高かった。 そんな中、広夢と同室の五十嵐が広夢に好意を抱いていることがわかる。 日向に広夢を取られたくない五十嵐は、下心全開で広夢の尿道開発を手伝おうとするのだが……。 そんな三つ巴の恋とエロで物語は展開します。 ※基本的に全シーン濡れ場、という縛りで書いています。

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

【完結】11私は愛されていなかったの?

華蓮
恋愛
アリシアはアルキロードの家に嫁ぐ予定だったけど、ある会話を聞いて、アルキロードを支える自信がなくなった。

【R18】白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ姫君は甘い夜を過ごしたい~

瀬月 ゆな
恋愛
初恋の王子様の元に政略で嫁いで来た王女様。 けれど結婚式を挙げ、いざ初めての甘い夜……という段階になって、これは一年限りの白い結婚だなどと言われてしまう。 「白い結婚だなどといきなり仰っても、そんなの納得いきません。先っぽだけでもいいから入れて下さい!」 「あ、あなたは、ご自身が何を仰っているのか分かっておられるのですか!」 「もちろん分かっておりますとも!」 初恋の王子様とラブラブな夫婦生活を送りたくて、非常に偏った性の知識を頼りに一生懸命頑張る王女様の話。 「ムーンライトノベルズ」様でも公開しています。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

廃校カニバリズム

FUMUFUMU
ホラー
カニバリズム×廃校のホラー小説です。 読んでいただけたら幸せです。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

処理中です...