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~第七章:魔神復活編~

386ページ目…ラストバトル【3】

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「ぐわぁぁぁぁぁ!」

 たかがかすり傷、されど掠り傷とはよく言ったもので…攻撃した武器が、『七つの大罪』を断罪する為の武器:七天罰刀しちてんばっとうだったが故に、『七つの大罪』を全て持つ魔王エギンにとっては大ダメージになっているのかもしれない。
 とは言え、流石に、直撃ではなく少しばかり掠っただけの攻撃で、ここまで大騒ぎする魔王には、正直、死闘になる事を覚悟していた俺は、呆れ果てた。

「あ~、もう良いよ…もう、白けた。
 本当はプリン達の分も纏めて返すつもりだったけど、さっさと勝負決める事にしよう。」

 その結果、こんな茶番は、さっさと終わらせようと言う気持ちになった。
 俺はそう言うと、『奥の手』として使うつもりだった技能スキルを発動させる。
 これは、魔王エギンに不意打ちを喰らい、元の世界に戻る時に、偶然、見た・・事で手に入れた技能スキルである。

「ユニークスキル〖上書き〗を発動…。」

【このスキルは一度きりのスキルですがよろしいですか?】
【YES/NO】

「もちろん、YESだ。」

【了承を確認、ユニークスキル〖上書き〗を発動します。】

 次の瞬間、俺の身体に力が湧き出してくる。
 それもその筈、このスキルは相手のステータスの自分のステータスの追加し、自分のステータスを相手よりも強くするスキルなのだから…。

 元々は、しょぼかったステータスの魔王だったが、このスキルにより俺のステータスを上回る力を手に入れた。
 しかし、その後、プリンと〖融合〗して〖魔神化〗した俺は、〖神眼〗により隠蔽されていた魔王のスキルを完全に見る事が出来た。
 このスキルの確認で、偶然にも〖完全模倣パーフェクト・コピー〗が発動し、このスキルを手に入れていたのだ。

「ふむ…〖魔神化〗した時の二倍近いステータス…か、これは流石に慣れるまで注意が必要だな…。」

 その証拠に、軽く振るった腕からは意図せずして衝撃波が飛び出し、魔王を後ろへと吹き飛ばしてしまったのだ。
 こうなってくると、もう笑うしか無い。
 何せ、もう魔王には反撃する手段がないと言う事と同じ事なのだから…。

 しかしながら、俺達の反撃ターンは、これで終わりではない。
 そもそも、まだ魔王には大きな貸しがあるのだから…。

「さて、魔王エギンさんよ、貸した物は利子を付けて返して貰おうかな!」

 俺はそう言うと、もう一つのスキルを発動する。
 こちらは、エギンが俺の中から魔王・零の魂を奪い取ったスキルである。
 すると、先程とは逆に、現・魔王エギンの中から、俺の中に何かが流れ込んでくる。
 もっとも、その何かと言うのは、もちろん言わなくても分かる事だが、魔王・零の魂である。

「か、返せ!それは俺の物だ!!」
「いや、返せって言われてもさ…先に奪ったのはお前だろ?
 だったら、当然、奪い返される事も覚悟してるよな?」

 よく漫画などで『殺そうとするなら、殺される覚悟はしてるよな?』と…何かしたら、やり返されても文句言うなよ?的な台詞がある。
 まぁ、この世界で冒険者なんてしてると、魔物討伐で返り討ちにある事もあるので、それをリアルで感じる人もいただろう。

巫山戯ふざけるな!貴様に俺の何が分かる!
 気が付いたら、こんな変な世界に放り出され、しかも一人ぼっち、しかも子供の姿でだぞ!
 しかも、俺の中にいた彼奴は、俺が生き残るには力を貸す代わりに、望む物を手に入れろと言ってきたんだぞ!」
「へ~…俺の中の魔王は、何も言わなかったけど…そいつは何て言って来たんだ?」

 別に、どうでも良い事ではあるが、ゼロの魂が何と言ってきたのか気になった。

「あん?何でも昔愛した女の生まれ変わりを手に入れろと言ってたぞ?
 俺にはよく分からんが、さっきまでいた女…お前が取り込んだクソスライムに囚われていると言ってたが…。」
「へ~…。」

 人の大事な嫁プリンをクソスライム呼ばわりですか…興奮して分かっていないだけだろうが、既に弱体化していると言うのに、まったく本当に良い度胸をしているヤツだ。

「そうそう、エギン…お前にプレゼントがあったんだ、遠慮なく受け取ってくれや。」

 そう言うと、俺は自分の中にいるプリンに向けて〖念話〗で指示を出す。
 そう…〖魔神化〗と…次の瞬間、今まで以上に禍々しい姿になり、以前と比べると、ありえない程の力が湧き出してくる。

「あぁ、そうか…このステータスで〖魔神化〗すれば、当然、こうなるよな…。」

 考えてみれば当たり前なのだが、〖魔王化〗していた状態のステータスをエギンは手に入れていた。
 それをみんなと〖融合〗しているとは言え、そのステータスに劣っていたとは言え、かなり近いステータスを『通常ノーマル』状態で追加したのだ。
 この時点で、元々の〖魔王化〗のステータスの約二倍だった。

 それを、今度は魔王・零の魂の半分ではなく、完全な状態での〖魔神化・・・〗である。
 プリンは、俺の指示を、間違える事なく実行した。
 つまり、『通常』から『魔王化』ではなく、更に強力な『魔神化』である。

 増幅率は十倍どころか百倍はあるのではないだろうか?
 つまり、約二倍×百倍=約二百倍のステータスになる。

 単純計算で、HPだけでも500万超えの化け物である。
 と、言うか…こんな化け物、もう誰も倒せないのではないだろうか?
 いや、それ以前に、こんなステータスを持つ者が地上にいる時点で、色々と終わっている気がする。

「は、ははは…何だよそれ、もう終わりだ…こんな化け物に勝てる訳ないだろう…。」

 どうやら、ステータスを見る事が出来なくても、目の前にいる理不尽な存在の脅威は分かる様だ。

「あ~、うん…さっき、お前にやるって言ってたプレゼントだけどな、気が変わった。
 特別に、この世界からの追放にしといてやるよ。
 お前、元の世界に戻りたかったんだろ?」
「はぁ?それを信じろと?」
「あぁ、残念ながら、俺はお前とは違い嘘は言わない…ちゃんと地球・・に送り届けてやるよ。
 まぁ、その後の事は、一切保証しないけどな。」

 もちろん、元の世界に戻す事だけは約束はするが、だからと言って殺さないとは言っていない。
 こいつエギンがやらかした事は、許される事ではないからだ。

「あ、あぁ…それで本当に元の世界に戻れるんだな?」
「その点だけ・・は、保証するぞ。」
「………分かった、それで良い。
 元の世界に戻れるってんなら、俺は、こんな世界に用はない。」

 そりゃ、今のステータスのまま、元の世界で動き回れるなら無敵な存在になるだろう。
 それこそ、核爆弾で倒せるかどうか怪しいレベルだ。

「そうか…。」

 そこまで話した時、プリンが中から話しかけてきた。

〔ご主人様、よろしいのですか?〕
〔何が?〕
〔いえ、アレ・・を元の世界に戻す事がですが…。〕

 どうやら、プリンは既にエギンをゴミクズの様に認識した様で、呼び方が『アレ』となっている。
 まぁ、アレが元の世界に戻ったら、ばぁちゃんや後輩が心配なのだろう。

〔別に良いんじゃね?元々の依頼は現・魔王の討伐だけどさ。
 今のエギンは、もう魔王じゃないんだし…そう言う意味では現・魔王は討伐した事になるだろ?〕
〔えぇ…ですが、その代わりに、ご主人様が魔王になってしまいましたけど…ね。〕
〔まぁ、それに関しては、何とかなるだろ。
 そもそも、〖魔王化〗や〖魔神化〗で、色々やらかしちゃってるし…。
 それより、地球に返すとは言ったが、俺は一言も無事・・に帰すとは言ってないぞ?〕
〔え?それでは…。〕
〔あぁ、当然、プリンをクソスライム呼ばわりした罰は、しっかり受けて貰うけどな!〕

 それだけプリンに告げると、俺は魔法を詠唱する。

「世界と世界を繋ぐ門、我が意を受け、我の望みし世界の門を開け!
 願わくば、我が望みし時へと彼の者をいざなえ!〖魔法:次元転移門アナザーゲート〗!!」


 今回は、エギンを送り出すので、『我を誘え』を『彼の者を誘え』へと変更したが、基本となる効果はそのまま。
 但し、こちらは強制的にする為、エギンの足元に魔法が発動し、エギンは抵抗する暇もなく、その穴に落ちていく。
 こうして、エギンは、この世界から追放され地球へと旅立つ事となったのだった。



 一方、この世界を管理している女神は、大忙しで修復していた空間に、突如として、先程よりも大きな亀裂が開いた事により、修復が終了するまでの数日間、目の下にクマを作りつつ泣きながら徹夜作業を余儀なくされたのは、悲しい余談である…。
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