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~第七章:魔神復活編~

372ページ目…スラポンvsミゲル【2】

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<side:スラポン>

「これでも喰らえ!『血塗られた十字架ブラッディークロス』!」

 と言う声と共に我に飛来する無数の攻撃…。
 見るからにヤバそうだ…とは、思ったが、『はい、そうですか』とバカ正直に相手の攻撃を喰らってやる必要はない。

 とは言え、先程【暴食】を使ってしまったので、直ぐには使用は不可である。
 ならば…と、次の権能を発動させる事にした。

「【傲慢】…。」

 そう呟いた次の瞬間、我の身体を薄い紫色の光の膜が包み込む。
 そこへ、ミゲルの放ったブラッディークロスなる物が次々に命中し爆発を引き起こす。
 その威力の凄まじい事…爆発の影響で、床だけではなく壁や天井にまで被害が及び、ボロボロになっていく。
 ただし、光の膜の中にいる我には、一切の効果を及ぼさなかった…。

「フッ…我ながら、惚れ惚れする威力だ。
 流石に、これだけの攻撃を喰らえば一溜まりもなかったな。
 だが、それもこれも、この俺を怒らせたヤツが悪いのだ!
 魔王様の次に強い、この俺様をな…クハッハッハッハッ!」

 我が先ず思った事は、『何言ってんだ?コイツ…。』である。
 確かにミゲルの言う通り、攻撃は・・・凄まじかった。
 確かに当たれば致命傷になったであろう…だが、そんな強力な攻撃も我は【傲慢】により、別の次元へと、その身を移していたので無傷である。
 実際にその場にいる様に見えてはいても、そこには実体が無く触る事が出来ないのだ。

 どんな攻撃も、当たらなければどうと言う事はない…何とも【傲慢】な発想だ。
 しかし、それを可能としたのが、本体から与えられた【傲慢】なのだから、ミゲルとやらには可哀想な事をしたかもしれない。

 さて、今度は、こちらが攻める番ターンだ。
 ちょうど、相手からスキルだか魔法だか良く分からんが、強力な攻撃を見せて貰ったのだ。
 こちらもお返しをしなければ…だ。

「残念だったな、我は、ほれ…この通り、ピンピンしておるぞ?」

 と、爆煙を上げてる場所から出て姿を見せる様にして挑発する。

「なッ!?この声は…まさか、今のを耐えたと言うのか!?」
「いや、耐えたのではなく、単純に躱しただけだが?」
「クソッ!誰か、コイツの言葉を翻訳出来るヤツはいないのか!」

 と、ミゲルは叫んでいる。
 だが、ここにいるのは我とミゲルのみ…。
 それ以前に、こんな場所にいたら、先程の攻撃に巻き込まれて死んでいただろ…っと、ツッコミを入れたい所だ。
 とは言え、このままずっとミゲルの相手をしている訳にはいかない。

 こちらとしてはミゲルを素早く倒し、我も主の元へ向かわねば、我を生み出した我が本体も少しではあるが弱体化している為、もしも接戦になった場合、その僅かな差が致命傷に成りかねない。
 故に、我は更なる権能を使う事にした。

 使うのは【嫉妬】…その効果は、一時的に相手の能力を奪い、その力を僅かな時間だけだが、自分の支配下に置く事が出来るスキルである。
 そして、奪うのは…もちろん、先程の『血塗られた十字架ブラッディークロス』である。

「我が主に楯突いた事、死して後悔するが良い…【嫉妬】…。」

 次の瞬間、ミゲルの身体から光の粒子が我の身体に流れ込んでくる。
 そして、我は…奪ったばかりの技を解き放つのだった…。

◇◆◇◆◇

<side:ミゲル>

 相変わらず、ヤツは「キュキュ」と鳴くばかりで、会話が成り立たない。
 だが、ヤツが鳴いた時、俺の身体から何かが抜け出た気がした。

「キューイキュイッ!」

 またヤツが鳴いた…今度は、何をするつもりなんだ?と様子を覗おうとした。
 だが、それが間違いだったと気が付いた時には、既に遅かった。
 何故なら、ヤツが放とうとしているのは、俺のオリジナルで、俺しか使えないはずの技だったからだ。

「そ、そんなバカな…それは、俺の…ブラッディークロスじゃないかッ!!」
「キュイ…。」

 酷く短く、それでいて冷たく突き放す様に一声鳴くと、ヤツの攻撃が俺に降り注ぐ。
 爆発に次ぐ爆発…それでいて、その衝撃が上手い具合に連鎖を引き起こしその中心である俺を破壊しようと暴れまくる。
 こんな攻撃は、生身の肉体を得て弱体化した今の俺に耐えられるはずがない…。
 まさか、魔王は、こうなるのを予測していたと言うのか?

 だが、魔王に対し恨み言を言おうとしても、もう俺の身体は…。
 俺の身体から黒い霧が立ち上り霧散していく。

「あ、あぁ…そうか…俺は負けたのか…それも、勇者でも何でもない只の…。」
「キュキュ?キュイ!」

 もう助からない事が分かったのだろう…ヤツが鎧を脱いで、俺の前に姿をさらす。

「あぁ、そうか…スライムだからと見下していたが…そうか…貴様が勇者だったのか…。」

 我等、魔族の天敵…その証である勇者の紋章を、その身に宿した蒼きスライム…に、驚きを隠せない。
 人族にしか顕れる事がない勇者の紋章を持つスライム…。
 だが、それならば俺が倒されたのも納得がいくと言うもの…。

「さらばだ、小さき勇者よ…。」

 こうして、俺は黒い霧となり世界から消滅えたのだった…。
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