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~第七章:魔神復活編~

358ページ目…魔王城、侵入

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 プリンの所為で、正門からの強行突破を余儀なくされた僕達。
 そんな僕達の前に現れたのは大地の四天王を名乗るオルマと言う名の上級魔族だった。

 だが、そんな自称:四天王の一角も、ローラの死角からの一撃により、あっさりと倒す事が出来たのは僥倖ぎょうこうだったと言えよう。

「って言うか、今まで戦った上級魔族の中でも、異様に弱かったような…。」

 そう、プリンを失う事を否定して魔神へと覚醒したあの時の上級魔族のオメガが一番強く、次に現在、皆殺しの魔剣と化したデストロイヤーの元となったグレコ・ノール。
 もっとも、彼の場合は前・魔王への忠誠で自らに禁術を用いる事で己が身を魔剣へと変え僕達に付いてくる事を選んだので、オメガとグレコ・ノール…正直な話、どちらが強かったのかは謎のままではあるのだが…。
 とは言え、オメガに使い捨てにされたラドルとか言う上級魔族よりも、四天王を名乗るオルマの方が明らかに弱いのは問題だと思う。

「そう言えば、ふと思ったのですが、先程の四天王(笑)、上級魔族の癖に普通に物理攻撃効いてましたね。」
「え?ローラの攻撃って物理攻撃だったのか?」

 プリンに言われて、今更ながら物理攻撃だったのかと驚く。
 そもそも、ローラがフェンリルとして本気で攻撃をした一撃が只の物理攻撃の筈がない。
 しかも、『聖爪せいそう・グングニール』などと大それた名前の技を使ったのだ。

「殆ど物理攻撃、少し聖属性の攻撃。
 ローラも、あんなに効くとは思わなかった。」
「だよな…そもそもの話、上級魔族は精神体アストラルボディーで物理攻撃は全く効かないはずなんだけど…。」

 ローラも殆ど牽制のつもりで攻撃していたみたいで、よもや倒せるとは思っていなかった為、ローラ自身驚いている様だ。

「そう言えば、グルコ・ノールにも物理攻撃が効いていた様な気もします。」
「言われてみれば確かに…って言うか、アイツは魔剣として振れる訳だから肉体を持っていたと思って良いんじゃないか?
 あれ?でもそうすると…上級魔族の強みが逆に無くなってないか?」

 物理攻撃が効かず、特殊な装備でしかダメージを与えられないからこそ、上級魔族は強いのである。
 まぁ、確かに強大な魔力を持っているのだから決して弱い訳ではないのだが、それなりにレベルの上がっている僕達にしてみれば、オルマ程度の強さなら脅威にならない。
 それほどまでに物理攻撃が有効か無効かと言うのは大きな問題だったのである。

「あ、あの…もしかして、これも魔王の所為だったりするのでしょうか?」

 そうクズハに言われて、僕は考えた…そして、出した結論は…。

「あぁ、おそらくは…ね。
 正直、確信は持てないけど今までの魔王の行動から考えると、それは間違いないとは思うけど…ね。」
「ですが、御主人様あなた…四天王と言うからには、まだ3人残っているはずでは?
 いくら弱体化しているとは言え、油断は禁物かと…同時に攻撃してくるのであれば、それだけ脅威は跳ね上がります。」
「そうだな、アリスの言う通り、油断は禁物だ。
 ってな訳で、みんな警戒を怠らない様にね!」

 まぁ、この中で油断して一番警戒を怠りそうなのが僕って言うのが何ともアレではあるのだが…。

 何はともあれ、オルマを倒して正門から侵入してから10分程経った頃、僕達を出迎えたのは大量の下級魔族レッサーデーモンの軍団である。
 ただし、今の僕達の歩みを止めるのには些か力不足であった。

『チュドーン!ドカーン!』

 それこそ、僕の出番はありませんよ~と言わんばかりの爆裂魔法による容赦のない絨毯爆撃により下級魔族の一団は完全に無効化されてしまったのである。

「うん、分かっていた事だけど、こうまで戦力差があると、何か哀れだな…。」

 そう呟いた僕の言葉に反応する者がいた。
 もちろん、それはプリン達、嫁~ズ…ではない。

「ほう、こうも容易く我の軍団を葬り去るとは、些か驚きを隠せぬな。」

 いったい、何処から聞こえてきた!?
 突如として聞こえてきた声に周囲を警戒する僕…そんな中、ふと視線を壁際に向けた時、一人の男に気が付いた。

「今のはお前が喋ったのか?」
「ふッ!ようやく気が付いたか…そんなていたらくで、この魔王城に攻め入るとは、余程死にたいとみえる。」
「ッ!?そう言う貴様は何者だッ!」

 気付くのが遅れたのは、確かに僕達の落ち度である。
 しかも、先程ローラが倒したオルマに比べたら、その存在から来る重圧プレッシャーは遙かに脅威と言える。

「ふッ!自分の名を名乗らずに我が名を知ろうとするとは愚か者よ。
 とは言え、貴様等は此処で死ぬ身、ならば冥途の土産に貴様等を殺す我の名を教えてやろう!
 聞いて驚け!我こそはエルム…四天王が一人、水宴のエルムであるッ!!」

 四天王…オルマに引き続き、早々に新たな四天王が僕達の前に現れた瞬間だった…。
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