上 下
348 / 421
~第七章:魔神復活編~

348ページ目…クズハの覚醒【3】

しおりを挟む
ご主人様あなた、離れて見てて下さい!」

 クズハはそう言うと、ミノタウロスに向けて右手を向ける。

「我、玉藻前たまものまえクズハの名において命ず、集え魑魅魍魎ちみもうりょう達よ!
 我が前に立ち塞がりし愚者共に、滅びを与えよ…〖百鬼夜行《ひゃっきやぎょう》〗ッ!!」

『ボッ!ボッ!ボ、ボ、ボ、ボボボボボボボッ!』

 クズハが唱えた呪文?により黒色の狐火が無数に出現する。
 そして…地面の下からは無数のアンデッドが顕れる。
 スケルトン、ゾンビ、グール…それ以外にもゴースト等、様々なアンデッドだ…。

「こ、これは…流石に凄いな…。」

 完全なる九尾の狐へを進化したクズハ…そのクズハが言うには、今までとは比べ物にならない程…それこそ別次元で強くなったと言う話だった。
 で、そんなに自信を持って言うのなら…と、ちょこっと魔物を狩ろうと言う話になったのだが、これは予想外なほど無茶苦茶な事になっている。
 しかも、此処に来てアンデッドの軍団とは…。

 何はともあれ、かなり驚いた物の、そのままミノタウロスの様子を見ていると、何とミノタウロスは激しい抵抗をしていたが数の暴力とでも言うべきか、アンデッドの軍団に引き摺られる様に連れて行かれ、後方に開いた黒い穴へと消えていった。

「ご主人様、どうですか?」
「いや、どうって言われても…何が何だか…。
 それに『玉藻前』っての何だ?」

 ミノタウロスのドロップは?と気になった物の、それ以前に僕はクズハに名前の前に名乗った『玉藻前』の事を聞く。

「え~っとですね、『玉藻前』と言うのは私達の祖である九尾の狐が名乗っていた名前でして…。
 私達の一族では、九尾まで成長した時にのみ、この名前を名乗る事を許された名前なんです。
 しかも、この名前を名乗る事により、私達一族は大幅にパワーアップ出来ると言うオマケ付きなんです!」

 と、ドヤ顔をする。

「そ、そうなんだ…それで、さっきの魑魅魍魎だっけ?
 あのアンデッド達が消えていった黒い穴…アレはいったい何なんだ?」
「さぁ?何でも伝承では黄泉比良坂よもつひらさかとか聞いた事がある様な無い様な…。」

 と、クズハが曖昧な言葉を発する。
 …って、アレが黄泉比良坂だってッ!?
 つまり、あのミノタウロスは生きたまま、あの世へと連れて行かれた言う事か?
 流石に僕でもあの世までドロップ品を回収に行く事は出来ないので、諦めるしか無い様だ。
 って、そんな話じゃなくてだな…。

「ま、まぁ…クズハの力は分かったから、そろそろ元の姿に戻ろうか?」
「畏まりました。」

 クズハはそう言うと九尾の尻尾を隠す。
 そして…クズハの尻尾が通常通り1本になった時、今まで通り幼さが残る可愛いクズハへと戻った。

「うん…やっぱり僕的に、クズハはこっちの方が可愛いくて好きだね。」

 確かに大人バージョンである美女のクズハも良いが、何故かクズハのイメージより掛け離れた存在に感じられるんだよね…。
 それよりも、美少女で可愛いと思えるクズハの方が僕的に好みで…何と言うか、可愛いは正義・・である。


「そ、そんな、可愛いだなんて…。
 で、でも、ご主人様に褒められて嬉しいです♪」

 そうそう、それにクズハ=どもるってイメージがある所為で、違和感があったんだよね。

「あ、あの…ご主人様?」
「ん?どうした?」
「い、いえ…大した事ではないんですが…。」
「だから、どうしたんだ?」
「こ、これで私もご主人様のお役に立てますよね!」

 ………はい?僕の役に立てる?
 クズハはいったい何を言っているのだろう?

「クズハ…何を言ってるんだ?」
「え?えッ!?やっと九尾に目覚める事が出来たのに、まだお役に立てないんですか?」

 そう言って落ち込むクズハ…どうやら、プリンと比べて戦闘力で劣るクズハは、彼女なりに葛藤があったのかも知れない。
 だが、そんなのはクズハの被害妄想である。

「もう一度言う…クズハ、お前は何を言ってるんだ?
 そもそも、クズハが役に立ってない訳ないだろッ!!
 僕だけじゃない!プリンもローラもアリスも…それに、今まで出会って来た人達だって、みんなクズハに助けられてるじゃないか!
 それなのにクズハが役に立ってない何て言うヤツがいたら、僕が許さない!
 それはクズハ、君にも言える事だ。
 僕の大事なクズハを悪く言うヤツは、例えクズハでも僕は怒るからね!」

 かなり自己中な発言ではあるが、クズハは僕以外の他の人の役にも立っているのは僕が保証する。
 まぁ、僕なんかの保証では意味ないかもしれないが…。

「ご、ごめんなさい!」

 クズハは目に涙を浮かべて僕に謝ってくる。

「クズハ、僕に謝ってどうする…クズハが謝らなければいけないのは他でもない、君自身だよ…。」

 僕はそう言うと、クズハを優しく抱き締める。

「は、はい…うぅぅ…。」

 僕に抱き締められたクズハはそのまま僕に身体を預け、そのまま暫くの間、泣き続ける。
 その間、僕はクズハを優しく撫で続けるのだった…。

◇◆◇◆◇◆◇

「ご、ご主人様、ご、ご迷惑おかけしました…。」
「あ~、いや、迷惑だなんて…むしろ、役得と言うか、その…。
 そんな事より、もう大丈夫なのか?」
「は、はい…ご主人様に、しっかりと慰められましたから…。」

 クズハはそう言って下を向いてしまう…だが、顔が見えにくくなっただけで、クズハの顔が真っ赤になっているのが分かる。
 最近、時には無理な戦闘でも逃げずに戦って危なげな所もあったが、覚醒と共に自分が間違っていたと自覚する事が出来たみたいで落ち着きを取り戻した様だ。
 これで、もうクズハは大丈夫だろう…。

 こうして、僕達は魔王の城へと向けて再出発するのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

処理中です...