上 下
343 / 421
~第七章:魔神復活編~

343ページ目…仮説とクズハの異変【1】

しおりを挟む
 アレから僕は『聖王都』での事件を思い出していた。
 そう、僕以外…過去に何人もの人が、この世界に迷う込んでいたと言う事を…。

 そして、そんな彼等は『零の使い魔』を名乗る一団と手を組み、この世界に害を為そうとしていた事を…。
 まぁ、その結果は『零の使い魔』を名乗る魔族を倒した事により終止符を打った訳なのだが…。

 そんな彼等の目的と言うのが、単純では有るが、実現するのが厳しいであろう『自分達の世界に戻りたい』と言う物だったのだ。
 結論だけ言えば、魔族に騙されていたとは言え、『魔王』を復活させれば元の世界に戻して貰えると唆されていたのだ。
 それでも、彼等にとっては、藁をも掴む思いだったのだろう。
 それに、彼等はこの世界の住人ではない。
 その為、彼等は、この世界がどうなっても良いと思ってしまったのかも知れない。

 その結果が、『聖王都』に蔓延る悪となって魔王を復活させようとしていたのだ。
 とは言え、そんな事とは関係なく魔王は、この地に復活した…。
 だが、復活した魔王は、彼女を捜す事なく世界を滅ぼそうとしている。
 しかも、自分の僕達しもべたちである魔族を使い捨てる形で…だ。

 だが、もし…その復活した魔王が、彼等と同じだったら?
 転移者、もしくは転生者…だと仮定するなら、話は変わってくるのではないだろうか?
 もし、そうであるならば…僕と同様に、自分の中に魔王・零の魂の一部がある事に気が付いても不思議ではない。
 そして、何かの拍子に、その魂の力を使える事を知ったなら…。

 いや、僕でさえファンタジーでありがちな事を実戦したりして、自分の能力を増してきたのだ。
 そして、それに気が付いた時、自分に力があると知ったなら…。
 今回の様な、暴走をしても何ら不思議ではない。

 ついでに言うのであれば…今の魔王が、『聖王都』の人達と同じ事を思い付いたのなら…。
 この世界が滅ぶ際の力を使い、元の世界に戻ろうと試みる可能性もあるのではないだろうか?
 コレが、先程考え付いた僕の仮説だ。

 とは言え、あくまでも仮説であって、実際に魔王と対決しない事には分からない。
 もっとも、魔王に聞いたとしても素直に答えるとは思えないが…。
 そんな中、僕はクズハの態度が気になった…。

 と言うのも、クズハが先程からお尻の辺りを気にしているのだ。

「なぁ、プリン…さっきからクズハはお尻の所ばかり気にしてないか?」
「そうなんですか?と言うか、ご主人様あなたはクズハのお尻ばかり見ていたのですか?」

 可笑しい…何やら、人聞きの悪い様な台詞に聞こえるのは何でなんだろう?

「プリンさん?僕が言ってるのはクズハの態度が気になったのであって、クズハのお尻が気になったのではありませんよ?」
「へ~…だったら、クズハのお尻に、まったく興味はないのですね?」

 真正面から、僕の目を見ながらプリンが聞いてくる。
 当然ながら、プリンの性格から考えると、その答えはイエスと言うしかない。

 しかし、クズハには柔らかいお尻と、プリンには無いモフモフの尻尾がある。
 それを興味ないとは流石に言い切れないのは仕方のない事。
 その為、つい、プリンから視線を外してしまった…その次の瞬間…。

「ギルティ!」

 プリンから放たれるは、強力な触手のソレを…僕はそっと軽く後ろに飛んでダメージを拡散させる。
 下手にこんな物を直撃したら気絶してしまう。
 そうでなくても、予想外の出来事で僕達は無駄に時間を使ってるのだから…。

 そんな訳で、衝撃を逃がした…までは良かったのだが、その跳んだ位置が悪かった。
 何と、そこにはクズハが居たのだ。

「避けろ、クズハ!」
「えッ!?」

『ドシャッ!』

 叫ぶが早いか、ぶつかるが早いか…僕とクズハはぶつかって倒れてしまう。
 僕は慌てて立ち上がろうとして、右手で地面を押して立ち上がろうとする。

『むにゅ♪』

 だが、右手に伝わる感触は硬い地面の感触ではない。
 何やら柔らかく…それでいて、僕の手に吸い付いてくる様な感触。
 思わず、僕はその感触を確かめる為に、何度も手を動かした。

『むにゅ、むにゅ、むにゅ♪』

「あ、あん…ご主人様あなた♪」

 直ぐ近くから聞こえるクズハの声…しかも、微かに色気を含む上擦った声…。
 ここで、ようやく自分が何を触っているのかを理解する。
 もちろん、それは硬い大地などではない…それなら?
 その答えは、クズハの甘い声で分かると言う物…そう、クズハの胸である。

 やってしまった…そう思った僕は、慌てて飛び起きる。
 そして、クズハの姿を確認して、僕は一瞬、動きが止まる。
 そこには、着物がはだけ呼吸を荒くするクズハの姿が見えた。
 しかも、クズハの大事な部分には何の障害物モザイクもない、一糸纏わぬ姿で横たわっていたのだ。

「ご、ごめんッ!!クズハッ!大丈夫?」
「は、はい、私は大丈夫です。」
「そ、そっか、それなら良かった…。
 でも、正直、その格好は、どうかと思うんだけど…。」
「す、すいません…基本的に、着物の下は何も付けないのが正しい着こなしでしたので、つい…。」
「い、いや、僕の方こそ…って、それは一旦、置いておくとして…。
 さっきから、お尻の方を気にしていた様だけど…何かあったのかな?」

 どうせ、既にグダグダなのだから、勢いに任せて聞いてみた。

「そ、それなんですけど…先程から、妙にお尻がムズムズするんです。
 いえ、正確には、尻尾の付け根と言った方が正しいのですが…。」

 そう言われて、僕は改めてクズハのお尻の方を見ようとする。
 だけど、流石に此処でマジマジと見る訳にはいかないので、僕はグッと我慢する。

「プリン、ちょっと来てくれ!」
ご主人様あなた、どうかしました?」

 僕を吹き飛ばしたプリンが5m程離れた距離を早歩きで寄ってくる。

「悪いんだけど、クズハの尻尾の付け根の所を見てやってくれないか?」
「えぇ、了解です。」

 僕の要望に、プリンは直ぐにクズハの尻尾の付け根を確認する。
 コレが僕だったら、青空の下、お尻に顔を近付ける…と言う行為から変態と呼ばれても可笑しくなかったかも知れない
 まぁ、プリンならば女の子同士と言う事で、問題はないだろう…たぶん…。

「ど、どうですか?何か変な事になって無いですか?」
「特に、コレと言って何も…ご主人様なら、もっと良く見て・・くれると思うけど…。」

 そう言って、プリンはニヤニヤしながら僕の方を見る。
 まったく…相変わらず、この手の悪戯を仕掛けてくるな…。

「はいはい、見れば良いんでしょ見れば…。」

 下手をすれば変態確定だと言うのに、プリンのヤツは…。
 それでも僕は、溜息を付きつつも、クズハの尻尾の付け根へと顔を近付けていくのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる! 孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。 授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。 どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。 途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた! ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕! ※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...