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~第七章:魔神復活編~

325ページ目…攻城戦?【3】

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 上級魔族である『グレコ・ノール』との一騎打ち…とは言え、こちらはプリンと融合しているので実際の所は二対一での戦いになる。
 そこで、俺はグレコ・ノールに聞いてみる事にした。

「ちょい待ち!戦う前に一つ確認しておきたい事があるんだけど…良いかな?」

 もっとも、答えてくれない可能性もあるが、ここまで正々堂々と語る様は、まるで騎士の様なので、個人的には答えてくれるだろうと踏んでいる。

「ふむ…確かに、憂いを残して戦うのは宜しくない。
 良いだろう…して、確認しておきたい事とは何だ?」

 やはりと言うべきか?どうやら話を聞いてくれる様だ。

「実は、今の俺は二人の人間が一つになってんだけど…正々堂々戦おうとしてるアンタ的には、その事は大丈夫なのか?」

 まぁ、正確には一人の人間と一匹のスライム…ではあるが、俺自身、プリンをスライムと言うより一人の人間と思っているので、細かい所は気にしないで置こう。

「なるほど…だが、その事については気にしなくて良い。
 それを言うなら我とて、一人・・ではない。」

 そう言うと、上級魔族グレコ・ノールはその姿を変えた。

 獅子の様な顔に羊の様な角、背中からは蝙蝠みたいな羽根が生え、更にはウマの様な下半身…尻尾は蛇か?

 しかも、それだけではなく、なんと上半身は鱗で覆われているではないか…。

「え、え~っと…その姿で戦うんですか?」

 その姿を見るに、他の動物か魔物を取り込んで受肉した様だ。
 ただ、受肉をすると言う事は、物理攻撃が効く様になるだけでなく、魔法でのダメージも期待出来る。

「もちろんである!その為に、今、この姿になったのであるからして…。」

 ま、まぁ、それならそれで俺は良いんだけど…。
 ぶっちゃけ、せっかくの上級魔族としての強みを消してしまっている様な…とは言え、こちらの有利になる事なので一々説明しなくても良いだろう。
 そのままでも負ける事はない…どころか余裕を持って勝てるとは思うが、こちらとしては物理攻撃が有効になっただけでも僥倖ぎょうこうなのだ。

「ま、まぁ…そう言う事なら、こちらも遠慮無くやれますね。
 それで…合図はどうしますか?」
「我はいつでも構わぬが…そうだな、昔ながらの方法で悪いが、この金貨を上に飛ばし、落ちた音を合図に…と言うのは、どうであるか?」
「良いですね…では、それでお願いします。」
「よかろう…では、いくぞ!」

 グレコ・ノールが親指で金貨を弾く…。

『キュィィィン!』

 そして金貨はそのまま上へと向かいクルクルと回りながら落ちてくる…。

『………キュイーーーン!』

 そして…地面に落ちた…。
 次の瞬間、俺はプリンが用意していた魔法を開放する。

「光量最大、持続時間ゼロ〖魔法:照明ライティング〗ッ!」

 金貨が落ちた瞬間、俺は光の魔法を使い目眩ましを行う。
 この魔法は、本来なら、松明《たいまつ》の代わりに使われたりする魔法である。
 しかし、今回の様に効果時間を一瞬で終わらせる事により閃光弾よろしく、目眩ましに使えるのだ。
 とは言え、それは、普通の上級魔族であればあまり効果がない魔法である。

 だが、そんな魔法でも、受肉してキメラみたいになっているグレコ・ノールには有効な筈だ。

「クソッ!目潰しかッ!だが、甘いッ!!」

 目が見えない事により、少しの動揺を誘う事が出来たが、すぐに冷静さを取り戻すと、グレコ・ノールは次の一手を打ってきた。

「〖魔法:闇の魔弾ダーク・スフィア〗ッ!」

 ダーク・スフィア…文字通り、小さな闇の珠を生み出す魔法。
 術者の魔力により、その生み出された魔法は威力を変わる。
 そして、グレコ・ノールが作り出した数は…僅かな一瞬では数えるのが不可能なほど無数だった…。

 そして放たれる魔法…それは避ける場所がないのでは?と思うほど全方位へとばらまくかれる。
 それは術者を中心とした範囲攻撃だったのだ…。

 迫り来る闇の珠…だが、俺に当たる寸前、闇の珠は消え去った。
 もちろん、何もせずに消えた訳ではない。
 そう…俺に届く寸前、プリンの触手から禍々しいオーラを纏った黒い剣が生え、闇の珠を切り裂いたのだ。

「〖魔法:空間転移《ゲート》〗ッ!」

 その瞬間、俺はグレコ・ノールの直ぐ側へと転移を果たす。
 そして、その心臓へ向けて、聖剣エクスカリバーを突き刺す。

「ゴフッ!…見事なり…。」

 口から大量の血を吐き出しながら、俺を褒めるグレコ・ノール…。
 ってか、吐血中でも話せるのは魔族だからか?

 いや、そんな事より…。

「アンタ…今の攻撃、絶対に避けれたよな?」
「フッ…これだから人間は嫌いなのだ…。」
「だが、どうして…。」
「フッ!知れた事…我が忠誠を誓ったのは、先の魔王様である。
 それは、今の紛い物の魔王などでは断じてない!」

 …気の所為か?今、妙な言葉が聞こえたぞ。

「…今の魔王はが、紛い物の魔王?」
「うむ…確かに我々の魔王様は復活した。
 だが、今の魔王様には以前とは違い、確たる心がなかったのだ…。
 そればかりか、今の魔王様は人族を滅ぼそうとさえする。
 そんな事をすれば、あの方の生まれ変わりさえも滅ぼして仕舞いかねないと言うのに…。」

 あの方の生まれ変わり…魔王・零《ゼロ》が一つの国を滅ぼし、魔王となった原因でもある、零の愛した唯一の女性…。
 そもそも、零が魔王として世界を支配しようとしたのは、生まれ変わった彼女を捜す為でもあった。
 しかし、その生まれ変わりは既に居ない…。
 但し、それは彼女が死んでいるといって良いのかは微妙だったりする。
 何となく俺は、この魔族にならば真実を話しても良いのではないだろうかと思うのだった…。
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