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~第七章:魔神復活編~

300ページ目…報告

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「何だと!?襲撃者は『魔王教』だと言うのか?
 だが、おそらくその情報は一部間違いだと思うぞ?正しくは『魔神教団』だった筈だ。
 もっとも、確かに彼等が崇拝しているのは魔神と言うより魔王なのだから魔王教と言っても不思議でないが…。」

 いつもの様に、旅から帰ってきた僕はメルトの町のギルドマスターであり、獅子の獣人でもあるラオンさんへ報告に来ていた。
 そして、先日の…とある町での出来事を報告した時の事だ。

「そうですよね…でも、何で魔王ではなく魔神なんですか?」
「うむ…その事なのだが、以前捕らえた事のある『魔神教団』の言う話では、何でも魔王は、この世界に存在する為に授肉した魔神だと言う事なのだ。
 その為、魔王教団では無く魔神教団なんだそうだ…で、ぶっちゃけた話…本当の所はどうなんだ?」

 ラオンさんが何を言いたいのか、よく分からない質問をしてきた。

「えっと…本当の所とは?」
「おいおい…とぼける気か?あんな事・・・・が出来るお前が、知らないとでも言うつもりか?
 それとも何か、俺様・・にも教えられないってか?」

 ラオンさんが言う『あんな事』とは、多分、僕の〖魔王化〗の事である。

「はいはい、教えますよ…だから、そんな似合わないキャラ止めて下さいね?」
「チッ…付き合いの悪いヤツだ。
 まぁ、良い…で、実際の所、どうなんだ?」
「それは、友人としてですか?ギルドマスターとしてですか?」
「友人…いや、今回はギルドマスターか?やっぱ、両方…だな。
 友として言わせて貰えば、あんな事が出来ると言う事について、やはり、お前の身体が心配になってくる。
 んで、ギルドマスターとして言わせて貰えば…だ。
 もし、お前が魔王として君臨するつもりなら、なまじ強さを知っているから、どう倒せば良いか悩む所だ。」

 と、僕の身を心配しつつも、敵に回った時の事も、ちゃんと考えている様だ。

「そうですか…でもまぁ、その心配はいりませんよ。
 まぁ、向こう側には、『本物の魔王』がいる様なんですけど…ね。」
「おいおい…それの何処が心配いらないってんだ?」
「ははは…一つは、僕のこの力は自分の正義の為にしか使わないと決めている事。
 そして、もう一つが…これです。」

 僕はそう言うと、一振りの剣を〖無限庫インベントリ〗から取り出す。
 ラオンさんも慣れた物で、目の前で〖無限庫〗から剣を取り出しても、驚く事すらしなくなっている。

「こ、これはまた…何とも凄まじい剣だな。
 こんな凄い剣、今まで一度も見た事がないぞ?
 って、もしかして…これは、聖剣か?」

 抜き身で見せている為か、ラオンさんが聖剣の凄さに驚きつつ僕に聞いてくる。

「えぇ…とあるドワーフが、精魂込めて鍛え上げてくれた聖剣です。
 銘は『聖剣:エクスカリバー』…この剣に相応しい名だと思います。」
「そうか…俺にはその名が相応しいのか分からんが、お前が言うのだから、その通りだろうな。
 しかし、ダンジョンから手に入る聖剣よりも凄まじい力を感じる聖剣を鍛えるとは…そのドワーフとやらにあってみたい気がするな。」
「あ~…止めた方が良いと思いますよ?
 ラオンさん、顔怖いですから、彼女、ビックリして逃げちゃうと思いますので…。」
「ほっとおけ!俺の顔が怖いくらい理解しとるわ!
 って、ちょっと待て!今、彼女と言ったか?
 まさか、女の癖に、そんな聖剣を鍛えたのか?」
「えぇ、そうですけど、それが何か?
 と言うか、女の癖に…は余計ですよ?」
「あ、あぁ…それは俺が悪かった。
 しかし、女のドワーフが…か。」
「ん?やけに女って事を気にしてますが、女のドワーフがどうしたんですか?」
「いや、普通は鍛冶と言う物は、男がする物なんだ。
 鍛冶と言う物は、鍛冶の神に捧げる一種の儀式の様な物でな…本来、女人禁制の仕事なのだ。
 それ故、いくら鍛冶が得意なドワーフとは言え、女人が鍛えた聖剣と言うのは…どうなんだろうと思ってな…。」
「う~ん…僕には難しい事は分かりませんが、この聖剣…かなりの威力がある癖に、その力を暴れさせる訳でもなく、まるで自分の手の様に扱える良い剣ですよ?
 ちなみに、下級魔族であるレッサーデーモンをいとも容易く斬り裂き、倒してくれました。」
「そ、それはすごいな…噂では、そこらの武器では刃が立たず、最近になって出回ってきている聖なる武器で、やっとと倒せる程だと聞くのに…。」
「あ~…確かに、そこらのなまくらでは厳しいでしょうね…。
 でも、そんな鈍らでも、それなりの力があればレッサーデーモン辺りは倒せますよ?
 問題は、上級魔族ですね…あいつら相手に、出回り始めた聖剣が何処まで通じるのか…。」
「お前が報告した、例の魔族の事か…。
 にわかに信じられない存在だが、お前が嘘の報告などするはずないし、聖剣が効かなかったら、本当に、どうすりゃ良いのやら…。」
「まぁ、何はともあれこれで報告は終わりです。」
「あぁ、分かった…確かに、こちらにも魔族共の動きが活発になっていると言う話は届いている。
 もし、何かあれば、お前にも早馬で知らせる様にしよう。
 とりあえず…だ、顔色が優れない様だから、お前は帰ったら、ちゃんと寝とけよ?
 いざと言う時、寝込まれたら困るからな?」

 確かに、今の僕の顔色は悪い…それなりに疲労が溜まっているからだ。
 それと言うのも、プリン達、嫁~ズが一切手加減しなかったから…。
 いや、もしかしたら、手加減をした状態で、あのレベルだったのかもしれない…。

「ははは…これは、その…。
 とりあえず、了解です…。」

 なんともかんとも、苦笑するしかない。

「しかし、何だな…お前が動くと、いつもトラブルばかり起こってるな。」
「それは言わないで下さ、最近は、自分でも思ってるんですから…。
 それに、いつもじゃないですよ?普段、買い物とかに出掛けても何も起こりませんから…。」
「ははは、確かに!だが、普段の買い物でもトラブルが起こってたら、それこそ疫病神だ。
 そうだ!いっその事、地下牢にでも引きこもったらどうだ?三食昼寝付きは保障してやるぞ?」

 確かに、三食昼寝付きは魅力的ではあるが、地下牢は流石にない。

「まったくもうッ!あんまり調子に乗ると、怒りますよ?
 そもそも、三食昼寝付きまでは良いですが、地下牢なんかに引きこもって、何をしろと言うんですか、何を!」
「ははは、冗談だ冗談!まぁ、これで報告は終わりなんだろ?
 なら、あとは家に帰って大人しく休んどけ?」
「えぇ…そうですね、特に受けなきゃいけない依頼書もなかったようですし…家で休んどきますよ。」

 此処で言う受けなきゃいけない依頼書と言うのは、一般的に赤い依頼書とか呼ばれている、曰く付きの依頼書の事で、不良物件?の事である。
 その為、高ランクの冒険者が、半ば義務として利益度外視で片付けるのが一般的である。

「あぁ…とは言っても、家だと嫁さん達に襲われたりしてな?」
「オッサン、それ、本気マジで冗談になってませんよ…。」
「オ、オッサン言うな!まだまだ俺は現役なんだぞッ!!」
「はいはい…んじゃ、オッサン、また来るわ。」
「だからオッサンと…まぁ、良い!気を付けて帰るんだぞ?
 それと、緊急で依頼が入るかもしれないんだから、ほどほどにな?」
「それは、プリン達に言って下さい、マジで…。
 それじゃ、ラオンさん…これで失礼します。」

 僕はそう言うと、部屋を出て我が家へと向かう。
 ギルドから一歩外に出ると雲一つ無い晴天…。

「グハッ!太陽が目に染みるぜ…。」

 昨晩の所為で疲れ切った僕の目には、太陽の眩しい光が突き刺さって痛いくらいだ。
 うん…今日は、プリン達が何と言おうと、ラオンさんの忠告通り家でしっかりと休養しよう。
 この瞬間、僕はそう心に決めたのだった…。
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