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~第七章:魔神復活編~

284ページ目…護衛依頼【14】(後日談)

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「「「「おめでとうー!」」」」

『パンッ!パンッ!パパパンッ!!』

 会場となる教会の前で、みんなのお祝いの言葉と共に、盛大にクラッカーが鳴らされる。
 僕達は今、何故か、とある町の教会へと来ていたりする。
 そして、今まさに僕達の目の前には、新たに夫婦となった男性と…所謂いわゆる、お姫様だっこと呼ばれる格好で運ばれて来た花嫁が、皆の前に現れた所だった。

 事の始まりは、ある1通の手紙から始まった。
 その手紙の差出人と言うのは、以前、とあるダンジョンの攻略を手伝って欲しいと言った人物からであった。
 まぁ、正確にはダンジョンの攻略ではなくドロップ回収を手伝って欲しいと言う依頼であり、自分では実力レベルが足りないから、と言う物であった。
 その為、攻略の手伝いというよりは護衛をお願いすると言う物だったりする。
 そして、本当の依頼でもあった、そのドロップ品と言うのが対魔族用の聖なる装備、武防具だったのである。

 そもそもな話、それが必要になったの原因と言うのが、これまた、とある貴族の伯爵様で、護衛の依頼主であるCランク一人前になったばかりの冒険者に対して、聖なる装備一式を手に入れて来いと言う理不尽な極まりない物だった。
 そして、手紙の差出人である彼は、奇跡的にその護衛の依頼を僕達にしたのだった…。
 更に言うと、その装備を手に入れて来いと言ったのが、今回の花嫁の父親でもある、とある辺境伯だったのだ。

 もっとも、冒険者は平民出の青年(元は貴族だったらしい)であるが、その一方、花嫁は当然ながら伯爵の娘なので貴族である。
 ただし、普通ならば、身分違いによる部不相応な結婚となるのだが、最近では、魔族の脅威が日に日に増してきている時代故に、今回、彼に味方をした。

 つまり、何が言いたいかと言うと、『娘を嫁にしたければ聖なる装備一式を手に入れて来い!』と、無理難題を言われたのだ。
 そんな依頼を、真の意味・・・・で受けたのは、冒険者ギルドに依頼を受けに行った僕…ではなくプリンだった。
 何と、冒険者ギルドで他の冒険者からバカにされていた彼を見付け、プリンが話し掛けた事が彼にとって奇跡を引き起こす事となる。
 僕達はAランクの冒険者であった為、通常であれば正規の手続きをして高額な依頼料を支払わなければいけないはずだった…。

 しかし、彼の話を聞いたプリンが、何を血迷ったか、破格の安い報酬で依頼を受けた。
 その当時、結婚したばかりの僕達だったのだが、その話を聞いたプリンが、少し浮かれていたのも原因なのかも知れない。

 実の所、僕達が結婚する前に、プリンは一度、死んで…否、死に掛けている。
 それ故か、好きな者同士の仲を引き裂く様な、理不尽な事が許せなかったのだろう…と、僕は推測している。

 もっとも、その、とばっちりを受けたのは僕だったのだが、プリンと出会った頃の性格を考えると、その行動も、嬉しい誤算だったと言えるだろう。
 何故なら、彼女プリンは人ではなく、魔物と呼ばれる存在だったからだ。

 そんな彼女が人の心を理解し、それに激怒し、そして悲しむ。
 そして、彼女は『愛』を手に入れ、その幸せを他の人にも分けてあげる事を意識し始めた。
 それほどの成長を遂げた彼女を僕は心から愛していると、声を大にして言える。
 まぁ、実際には、恥ずかしくて小声になるのは目に見えているので、声を大にして言うのは勘弁して欲しいのだが…。

 まぁ…何はともあれ、そんなこんなで、その護衛の依頼は無事に成功を収め、そして、とうとう彼は今日と言う日を迎えた。
 で、その立役者である僕達は彼に招待された言う訳である。
 そう、彼の晴れ舞台…結婚式への招待状だったのだ。

 もっとも、だからと言って僕達が何かをする事はないし、今回の僕達は、ただの見学人である。
 せいぜい、遠くから見ているだけ、結婚式が終わった後に、少々話をすれば解散だ。

「あ~もう!やっぱり、結婚式と言うのは何度見ても、何て言うか~こう、堪らなくなりますね。」
「は、はい…プリンさんの言う通り、何だかこちらも幸せな気分になりますね。」
「うむ、綺麗だ。」
「そうですね、ですが、やはり人のを見るより自分達の結婚式が一番だと思います。」
「「うんうん、分かる~♪」」

 プリン、クズハ、ローラ…そして、アリス。
 僕の嫁~ズ達が、本日の主役を脇役に追いやる発言をする。

「そ、そうか?僕としては結婚式は疲れるだけのイベントなんだけど…。」
「「「「………。」」」」

 沈黙による抗議が嫁~ズから放たれる。
 プリンだけではない、普段、温厚であるクズハやアリスまでも、無言の殺気を放っている。
 いや、まぁ…確かに女の子に取って、結婚式と言うのは憧れのイベントなのだろう。
 だが、ぶっちゃけた話、スライム、獣人、狼、妖精?と言った面々だ。
 そのメンツにも関わらず、人族の結婚式を、うっとりする表情で見る物なのだろうか?
 かろうじて、獣人と呼べるクズハが憧れるのは、まだ分かるだが、何と言うか…これが女の子の神秘なのか?
 やはり、男である僕には、一生判らない感情なのだろう…たぶん。

「ま、まぁ、花嫁がどれだけ綺麗になった所で、僕にとっては君達が世界で一番素敵な花嫁だったと思うけど…。
 それに、僕は二度と君達を離さないから結婚式はもうしないと思うんだよね…。」

 ダ、ダメだ、こんなので下らない誤魔方で誤魔化しきれるはずがない…。

「も、もう、ご主人様あなたったら…。」

 プリンから一瞬で殺気が消え、だだ甘な猫なで声が聞こえる。

ご主人様あなた…ポッ♪」

 クズハからも殺気が消え、顔を真っ赤にして俯いてしまう。

あなた♪」

 更に、ローラからも殺気が消え、尻尾をブンブンと激しく振る。
 直ぐ側に居たからか、その尻尾が偶に僕に当たるのが、地味に痛いのだが今は我慢だ。

「もう…そんな事言っても誤魔化されませんからね?」

 アリスから殺気が消え、ニコニコと嬉しそうな笑顔を見せてくる。
 十分、誤魔化されているのが分かる。

 アレ?もしかして、誤魔化せちゃったのかな?
 ってか、嫁~ズ達よ、我が身可愛さに誤魔化そうとした僕が言うのも何だが、チョロインすぎるのだが良いのか、それで?
 とは言え、折角、機嫌が良くなったのだ。

 新郎新婦に挨拶をして、さっさと帰る事にしよう。

「「「わーーー!」」」

 ちょうど、タイミング良く歓声が上がる。
 何事かと思い、そちらを振り向くと花束…所謂、ブーケが空を舞っている。
 それは、ブーケトスと呼ばれる物で、受け取る事が出来た人が、次に結婚出来る等と言い伝えがある為、未婚の女性陣がこぞって参加するイベントの一つだった。

 もしも、ここにいるプリン達、嫁~ズが結婚していなかったのなら…と仮定して考えたら、今頃はブーケトスが戦場になっていたかもしれないと考えると背中が冷たくなるのを感じた。

「んじゃ、みんな…もう式も終わりだから、挨拶して帰ろうか。」

 僕はみんなに声を掛けると新郎の元へと向かう。
 そう、『おめでとうアイアンさん、どうぞお幸せに♪』と伝える為に…。
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