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~第七章:魔神復活編~

283ページ目…護衛依頼【13】

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 僕達が攻略していたダンジョンから少し離れた所にある、とある町の冒険者ギルドでの事。

「お二人とも、本当にありがとうございます!それと、お疲れ様でした。」

 そう言って、アイアンさんは深々と頭を下げる。
 そう、今回の依頼主であるアイアンさんにお疲れ様と挨拶されている事からも分かる様に、僕達はダンジョンから無事に出てきている。
 そして、アイアンさんを、無事、この町にまで連れてくる事が出来た。
 つまり、それが、どう言う事かと言うと…。

『ジャラジャラ…ガチャン。』

 アイアンさんとテーブルを挟んで座って居たのだが、おもむろにお金の入っているであろう袋が置かれる。

「え~、これが今回依頼した報酬です、どうぞお確かめ下さい。」

 そう言ってアイアンさんは僕達に袋を受け取る様に勧めてくる。
 まぁ、当然の事ではあるが報酬なので、遠慮無く頂く事にするのだが、袋を取る為にそっと手を伸ばそうとしたのだが、急に目標を見失う…。

「はい、確かに…約束通り、迷惑料込みも含めての報酬を確認しました。」

 と、プリンの声が聞こえる。

「え?プリン?」

 僕は間抜けな声と共に、後ろにいたプリンの方を向く。
 すると、そこにはお金の入った袋を持ったプリンがいた。

「…いったい、いつの間に袋を取ったんだ?」
「え?いけなかったですか?」
「いや、いけなくは無いんだが、何時《いつ》、取ったのかな?と…。」
ご主人様あなたの質問の意味が良く分からないんですが…私は普通に取りましたよ?
 もしかして、考え事でもしてましたか?」

 と、逆にプリンに聞かれてしまった。

 う~む…確かに、少し考え事はしていた。
 だが、目の前の袋を受け取る…只、それだけの作業だ。

 にもかかわらず、プリンの行動を見逃す事があるのだろうか?

 いや、瞬きくらいはしたはず…なので、偶然、その僅かなタイミングで…と、普通に考えた場合、そんな刹那の時間の中で動き、回収するなんて事が可能なのだろうか?
 もし、そんな動きが出来るなら、それはもう、神の領域である。

 ただまぁ、確かに考え事もしていたのも確かな訳で…。
 なので、ぼ~としてプリンの動きを見失っていただけなのかも知れない。

「それで、装備を手に入れて帰った訳ですが、どうなりました?」

 と、僕はアイアンさんに聞く。
 もちろん、どうなったか…と言うのは、平民でのアイアンさんが、貴族の娘を嫁に…と言う、結婚の話だ。
 うん、プリンも凄く気になっていたのだろう…。
 その目から怪光線が出るんじゃないか?と思うほど、目が輝いている。

 あ、もちろん、リアルに光っている訳じゃないのでご安心を。
 まぁ、プリン曰く、実際に光らせる事も可能らしいのだが…。

「冒険者ギルドに報告した所、ちゃんと成功認定を受けました。
 今頃は、ランコー伯爵に報告が行ってるはずです。」
「ランコー伯爵…って、あの・・ランコー伯爵なんですか?」
「えぇ、多分、そのランコー伯爵です。」

 そう言って、アイアンさんは頬を掻く。
 果たして、それは本当に大丈夫なのだろうか?

ご主人様あなた、ランコー伯爵って誰ですか?」
「あぁ、プリンはランコー伯爵を知らないのか…ランコー伯爵は、この国で、もっとも魔族領に近い領地を守ってる伯爵…まぁ、この場合は、辺境伯と言った方が良いかもしれないね。
 で、その他の情報として、色々と問題を起こしてる人物でもある。
 そんな問題の中でも、一番の問題は女性問題だろうね…。
 権力に物を言わせて、気に入った女性を無理やり手込めにするって噂だよ。
 もちろん、それが人妻であろうが、婚約者がいようがお構いなし…それも無実の罪を被せたりと、やりたい放題しているとの噂だ…。
 まぁ、実際に会った事がないから、真偽は分からないけど…ね。」

 と、僕がプリンに説明する…すると…。

「えぇ、概ねその通りですね…あと、自分の子供達は政治の材料として、権力のある者に嫁がせたりですね。
 とは言え、権力のある者との政略結婚は、何処の貴族も一緒ですが…。」

 そう言って、落ち込むアイアンさん…。

「でも、約束は守って貰えるんでしょ?」

 僕は少し心配になり確認してみる。

「えぇ、魔族が暴れ出し始めた、この次期だからこそ約束は守る筈です、多分…。」

 ふむふむ、まぁ、確かに魔族が暴れ出す前なら厳しい話だったかも知れない。
 だが、暴れ出した今なら、下手な権力に縋るよりも、聖なる武防具を揃えた方が助かる見込みはある。
 しかも、その相手がランコー伯爵ならば、それらを手に入れる対価とする子供は多いはず。

 それに、アイアンさんは元々、貴族の出である。
 それ故に、貴族と言う立場に興味がないアイアンさんを、娘と結婚させる為に、敢えて貴族にする必要もない訳で…。
 つまり、ランコー伯爵にとって痛くもない子供一人を対価と考えた場合、聖なる装備一式から得る物を天秤に掛けるなら、損はしないと考えるであろう。

 聖なる装備は、それほどまでに魔族に対して絶大な力を誇るのだ。

 そして、それは本人が使わないにしても、他の貴族への取引材料に、聖なる装備を一式ともなれば、当然、その対価は元手の数倍は手に入る事になるであろう。
 
「まぁ、何はともあれ、後は返事待ちですね。
 これだけ苦労したんですから、願いが叶うと良いですね。」

 そう言って、僕達は席を立つ。

「では、アイアンさん、僕達はこれで拠点であるメルトの町まで帰りますので、アイアンさんも気を付けて帰って下さいね?」

 こうして、プリンが勝手に受けたとは言え、僕達の護衛任務は終了したのだった…。
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