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~第七章:魔神復活編~

282ページ目…護衛依頼【12】

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「ふぁ~…よく寝た。」

 昨夜の騒動の所為で、普通ならば警戒を怠ると安心する事が出来ず、碌に眠れない筈なのだが、幸いな事に、僕達には睡眠を必要としない(寝る必要がないだけで睡眠を取る事は出来る)プリンがいる為、周囲の警戒はプリンにお願いする事で、僕はグッスリと眠る事が出来た。
 まぁ、それもこれも、スライムであるプリンの特性のお陰なのだが、自分の嫁に周囲の警戒を任せ、自分は寝ると言うのは、いかがな物なんだろう?と、少々、自己嫌悪に陥りながらも改めて周囲を見渡す。

 僕の寝ていた場所は狭いテントの中である。
 その為、確認すると言っても大した事をする訳でもないので、直ぐに終える。
 で…だ、今までプリンに警戒を任せて寝ていた僕が言うのも何だけど…未だに寝ているアイアンさん。
 昨夜の騒動の時も、寝入ったまま起きる事がなかったと記憶しているのだが…。

 いやまぁ、起きていても正直、役に立ったか?と聞かれたらアイアンさんの実力で言えば微妙ではあるのだが、それでも起きて来ないという時点でアウトな気がする。
 とは言え、無事に町に戻る事が出来れば、アイアンさんは、それなりの地位が約束されているのだから、それでも良いのかも知れない。

「おはようございます、ご主人様あなた♪」
「あぁ、プリン、おはよう。
 それはそうと、結局、アレからアイアンさんは起きなかったのかな?」
「はい、それはもう死んだ様にグッスリ…と言いたい所ですが、悪い夢でも見ているのか、時折、目を覚ましていたみたいですよ?」
「そうなんだ…とは言え、そろそろ起こさないとだね。」
「でしたら、私が起こしますので、ご主人様あなたは顔でも洗ってきたらどうですか?」

 プリンはそう言うと、そっと僕にタオルを僕に渡してくれた。

「ありがと、それじゃお言葉に甘えて顔でも洗ってきますか…プリン、アイアンさんを頼んだよ。」
「はい、頼まれます♪」

 頼られた事が嬉しいのか、プリンが極上の笑顔を見せて答えてくれる。
 うん、やはりプリンは可愛いな~。
 こうして…僕は朝から、ほんわりした気分で起床したのだった…。

◇◆◇◆◇◆◇



おふぁおうおはようごじゃいまふございますカタリヘほろカタリベ殿…。」
「おは…って、アイアンさん、どうしたんですか、その顔ッ!?」

 アイアンさんの言葉が変だったので、単に寝惚けてるのかと思い返事をしようとしたのだが、アイアンさんの顔を見てビックリした。
 と、言うのも…アイアンさんのホッペタが両方とも腫れまくっていたのだ。

「な、なに…らいりょうぶでふお大丈夫ですよひょちょひょっとねほけてちょっと寝惚けてまひへまして…。」
「いやいやいや、どう見ても大丈夫じゃないですよねッ!?
 アイアンさんの顔がパンパンになってるじゃないですかッ!!」

 しかし、その原因も直ぐに判明する事となる。

「自業自得ですわ!幾ら寝惚けていたとしても、私に抱き付こうとしたのですから!」

 はい、原因が分かりました。
 どうやら、アイアンさんを起こしに行ったプリンに対し、アイアンさんは寝惚けていた為、抱き付こうとした様だ。
 そりゃまぁ、プリンの性格からして素直に抱き付かれるはずもない…超高速の往復ビンタで反撃したのであろう事が予測出来た。

 むしろ、顔が腫れるだけで済んで良かった…最悪、首から上が胴体とサヨナラしていたかも知れないのだ…。

「まぁまぁ、プリンも抱き付かれた訳じゃないんだろ?」
「はい、全力で死守しました!一応、手加減しましたけど…。」
ふぁいはいろうもどうもふいまふぇんふぇひらすいませんでした…。」

 と、アイアンさんは自分の非を認める。
 まぁ、これから好きな彼女との結婚を認めて貰う為に、わざわざ危険を冒してまでダンジョンへ武防具を手に入れ来ているのだ。
 それなのに他の女に抱き付こうとした…と、相手に話が聞こえたら、命懸けで頑張った苦労も水の泡となる。
 そうすると、アイアンさんの取れる手段としては…。

ふぉんふぉうに本当にふいまふぇんふぇひらすいませんでしたほのおわひはこのお詫びはほうひゅうに報酬にうわのへはへてふぉへて上乗せさせてふぉらいまふ貰います。」

 との事…まぁ、僕としては人の嫁に抱き付こうとしたした時点で、見殺しにしても良いのでは?とは思うが…。

「抱き付いたのではなく抱き付こうとした、まぁ、未遂ですし報酬の上乗せをすると言う事ですので、今回だけは許してあげますわ。
 で・す・がッ!ちゃんと口止め料も支払って貰いますからね!」

 と、プリンがアイアンさんに釘を刺す。
 正直な話、もともとが破格値と言えるほど安かった護衛料である。
 そんなアイアンさんが提示した金額は、当初の依頼料の倍の金額である。

 とは言え、Cランクの冒険者にとっては、かなりの金額で、懐へ痛手となる金額の提示なのだ。

「…本当に、この金額で大丈夫なんですか?」

 僕は、アイアンさんに回復魔法を掛けつつ確認をする。

「えぇ、もちろんです。
 いくら寝惚けていたとは言え、やって良い事と悪い事がありますから…。
 と言うより、私がお金持ちであれば、もっと支払うんですけど…本当に、すいません。」

 どうやら腫れが引いてきた様で、アイアンさんの言葉がちゃんと聞こえてくる。
 ふむ…根が真面目なのだろう、本気で後悔している様だ。

「アイアンさん…大丈夫ですよ、実際には抱き付いていない訳ですし…こちらとしても依頼主に怪我を負わせた訳ですから…とは言え、ケジメなんで貰う物は、しっかりと貰いますけどね?」
「はい、それはもちろん…です。」

 アイアンさんはそう言うと苦笑する。
 そこまで話して、ふと昨夜の事を思い出す。

「そうそう、昨夜、下級魔族が出ました。
 もちろん、問題なく撃退したんですが…。」

 と、僕は昨夜の事をアイアンさんに説明をする。

「そうですか…私が寝ている間にそんな事が…いえ、カタリベ殿の判断に従います。
 …いや、この様な言い方は違いますね…。
 カタリベ殿のお心遣い、感謝いたします。
 もちろん、私としては何も問題はありませんので、その様にお願いします。」

 アイアンさんはそう言うと、頭を深々と下げる。
 うん…やはり、この人は悪い人ではないな。
 ならば、あと僕がする事と言えば…。

「では、僕はケビンさん達のパーティーに一緒に帰るかどうかの確認をしてきます。
 アイアンさんも、帰る支度をして下さい。
 くれぐれも忘れ物の無い様にお願いしますね?」

 僕はそう言うと、自分達のテントを出ると、そのままケビンさん達のテントへと向かうのだった…。
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