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~第七章:魔神復活編~

268ページ目…ドラゴニュート【4】

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「えぇ、絶対に大丈夫だと保証しますよ。」
「そ、そうは言うが…ほ、本当に上手くいくのか?」
「さぁ?…ですが、魔族が活発に動き出した今、藁にも縋る人は多いはずです。
 個人的に言えば、ドラコさんの用意した装備は、十分、魔族と戦えるようになると思ってます。
 そして、おそらくドラコさんの今までの苦労が報われるはずです…多分。」

 本当に大丈夫だろうか?と疑問がある為、最後の方は締まりがなかったが、コレについては問題はないはずだ。
 若干、自信がない為、たぶんと付け加えておく。

「な、なら…君に頼んでも良いか?」

 と、申し訳なさそうにドラコさんが言ってくる。

「はい、ですが、それを叶える為に…1つ、お願いがあります。」
「ん?お願いとは?」
「それなんですが、いくら魔族に対抗出来る装備がある…と言っても、実際に現物がなければ、与太話と思われ信じて貰う事は厳しいかと思います。
 ですので、最低でも1セット…武器と防具を持って帰りたいのです。」
「なるほど…言われてみれば、確かに…だな。
 分かった!1セットだけで良ければ、こちらで用意しよう。
 元々、ダンジョンポイントを補充して貰ったお礼に何か渡そうと思っていたくらいだからね。」

 ドラコさんはそう言うと、ダンジョンマスター権限を用いて、ダンジョン倉庫からドロップ品として出現させるはずの武防具を一式取り出すと、僕へと渡してくれた。
 ちなみに、先程言ったダンジョン倉庫とは、無限庫インベントリみたいな物で、ダンジョンマスターがアイテムなどを入れておく倉庫の事で、今回みたいに作り出したアイテムを入れておく倉庫として使われている。
 また、ダンジョンに入った者が死んだ場合、その者の装備品やらを保管する場所でもあり、高度な空間魔法によって作られた場所である。

「とりあえず…剣、盾、兜、鎧、籠手…そして靴の一式だ。
 一応、形は違うが、これと同じ様な性能の聖武器や聖防具を多数揃えている。
 他にも杖や弓なども幾つか種類があるが、これらを使えば魔族達と十分戦えるはずだ。」

 と、少し誇らしげにドラコさんは言う。
 ただし、実際に魔族と戦った僕に言わせれば、若干、性能に力不足を感じるのだが、それでも数は力…である。
 もし、これらを装備した軍勢が居るのであれば、魔族の軍団とも対等…は、流石に厳しいかも知れないが、魔族と人族の数を考えると、それなりに勝利出来るのでは?と思う。

「そうですね…では、これを信用のある冒険者ギルドのマスターさんに渡します。
 もちろん、このダンジョンが復活したと言う情報も…ね。
 ですが、直ぐに報告はせずに、少し時間を掛けて報告しますので、その間にダンジョン内に魔物は増やしておいてくださいね?
 これ以上、ダンジョンを破綻させられたら立て直しも厳しいので…。」

 そう答えながら僕は無限庫に装備を収納する。

「あぁ、そう言う事なら、俺は補充して貰ったダンジョンポイントを使って魔物をリポップさせておこう。
 な~に、心配はいらん!今度はダンジョンポイントを枯渇させる様な失敗はしないさ。」

 ドラコさんはそう言うと、サムズアップして笑顔を見せてくれる。
 ただ、一度失敗しているのに、その自身がどこから来るのか疑問ではあるのだが…。

 とは言え、これでこのダンジョンには用はない。
 なので、後は帰るだけなのだが…。

「あの、ドラコさん…。」
「ん?急に改まって、どうしたんだ?」
「い、いえ…やっぱり良いです。
そ、その大した事じゃないんで…。」

 うん、何時、魔族が責めてくるか分からないのだから、最優先事項は対魔族装備の存在を知らせるのと、サンプルとして預かったこの装備一式をラオンさんに渡す事が先決だ。
 僕個人の我が儘の為に魔族の侵攻で全滅する村とかがあったら、それはそれで寝覚めが悪い。
 故に、再びここまで来るには時間が掛かるが、この事を知らせた後でも十分良いはずだ。

「おいおい、言い掛けて止めるのは、こちらとしても気になるぞ?
 勇者セイギにも言ったが、人生なんて1度きりなんだぞ?
 だから、遠慮なんぞしてると一生後悔する事になるんだぞ?」

 そう言って苦笑いをするドラコさん…過去に何かあったのだろうか?

「いえ、本当に大した事じゃないんです…。
 ただ、その…昔のじぃちゃんって、どんな感じの人だったのかな?って…。
 僕の知ってるじぃちゃんって、優しくて不思議な事を、いっぱい知っている凄い人だったから…。」
「そうか…まぁ、一言で言えば、台風みたいなヤツだったな…。
 突然やってきたかと思えば周りの物を巻き込んで、むちゃくちゃな事をして…だが、それでいて憎めないヤツだったな…。
 そう言えば…セイギのヤツは元気してるのか?」

 ドラコさんに言われて、少し寂しい思いが込み上げてくる。

「いえ…僕がこの世界に来る1ヶ月前に…。」
「そうか…セイギのヤツは逝ったか…。
 殺しても死なない様なヤツだったが、やはり人族と言うのは我々と違い短い生なのだな…。
 すまんかったな、嫌な事を聞いて…。
 そうだッ!今度来た時、セイギの野郎の恥ずかしい話をしてやろう!
 俺は何度もセイギの野郎に屈辱を味わわされたからな…ちょうど良い、セイギのヤツが邪魔出来ないん。だ
 孫であるお前に、セイギの恥ずかしい過去をたっぷりと教えてやるぜ!」

 僕の事を『君』と呼んでいたのに、今では『お前』と、急にフレンドリーに…それでいて巫山戯ふざけならが話し掛けてくる。
 だけど、僕にはその行為が偽りであるのが分かる訳で…。

 何故なら、彼の目にはうっすらと涙が溜まり、体が微かに震えている…悲しみを堪えそれを悟らせない為の空元気なのだから…。

「え、えぇ…僕も、僕もじぃちゃんの事を、もっと知りたいです!」

 そう答えた僕の目にも涙が浮かんでいたのだが、ドラコさんは何も言わない。
 僕同様、見なかった事にしてくれた様だ。

 それから数分後、気持ちを落ち着かせた僕は、再会を約束しドラコさんと別れメルトの町へと帰っていくのだった…。
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