上 下
259 / 421
~第七章:魔神復活編~

259ページ目…面倒な依頼【1】

しおりを挟む
 僕が冒険者ギルドに直接頼まれた依頼…四つの内、二つまでは完了した。
 だが、残りの二つの依頼が、地味に問題だった。

 そして、その二つと言うのが…。

 一つ、ドラゴン素材の納品。
 一つ、魔法銀ミスリル鉱石の納品。

 つまり…どちらも非常に入手が面倒と言う物なのだ。
 そもそも、ドラゴンなんて言う物は、普通の人には簡単には討伐出来ない。
 余程、高レベルの冒険者がパーティーを組んでやっと倒すのが世の常と言う物である。

 ん?僕だと倒せるかって?ぶっちゃけ、〖魔王化〗本気使えば出せば余裕だったりする。
 むしろ、ドラゴンを探す事の方が苦労すると推測される。

 そして、もう1つの魔法銀ミスリル鉱石…こちらも、そこら辺の鉱山で手に入るかと言うと、まず手に入らないであろう。

 何故なら、通常、冒険者がミスリルを入手するには、特定のダンジョンの中にある鉱山エリア…しかも、深部まで行かないと入手が出来ないのだ。
 但し、何事にも例外はある…その例外と言うのが、ミスリルゴーレムの存在である。
 どう言う訳か、このゴーレムは魔法銀鉱石を多く含む岩を体にしているゴーレムで、倒す事が出来れば一定量のミスリル…魔法銀鉱石を入手する事が可能だったりする。

 もちろん、このゴーレムに狙って出会う事はまず不可能と言われている。

 この説明で判って貰えただろうか?
 つまり、倒すのが面倒だったり見付けたりするのが面倒だったりする。

「って、何で冒険者ギルドがそんな素材を手に入れようとしてるんですか?」

 通常、この手の素材は、商業ギルドの取り扱いで、冒険者ギルドが扱う依頼ではない。
 まぁ、商業ギルドの依頼なのかもしれないが、ふと疑問に思い、ラオンさんに尋ねる。

「あぁ、説明してなかったか?それはだな…。」

 ラオンさんは、僕に色々と説明してくれた。
 で、その内容を要略すると…どうやら『聖王都』で魔族が活動を始めた事で、色々は方面に話題になった所為であると言えよう。
 どう言う事かと言うと、僕が魔族に対して、通常の攻撃や魔法が効かない事を冒険者ギルドに報告したのが原因だったりする。

 そもそも、魔族がいたのは300年ほど前、勇者セイギ…まぁ、その正体は僕のじぃちゃんである正義マサヨシが仲間達と共に、当時の魔王を倒した事により、魔族は滅んだとされていた。
 だが、実際には地下に隠れ住んでいて、魔王を復活されるのを企んでいたらしい。

 そして、その復活させる役目が、この世界に偶然迷い込んでしまった転移者達に白羽の矢が立ったのだ。
 『零の使い魔』と呼ばれる団体…その正体こそ彼らであり、復活した魔王・零により元の世界に戻るのを目的とした団体だったのだ。

 まぁ、そのリーダー的な存在こそが、裏で手を引いている魔族だったと言う訳だ。
 もっとも…個人的に言えば、この世界を滅ぼそうとしてる魔族が、復活させてくれたからハイそうですかと元の世界に送り返してくれるなどと言う考えを持つ事自体間違っていると言えよう。

 と、閑話が長くなったので元に戻そう。
 それで…だ、その魔族(精神体の様なヤツ)に効く攻撃として、強力な武器を王族や貴族達が保身の為に集め始めたからだったりする。

 まぁ、実際に魔族と戦った僕が言うのも何だが、確かにドラゴン素材の装備ならば、強力な防御力は期待が出来る。
 但し、僕が戦った魔族が下級兵だとしたら、そんな装備で魔族の攻撃を防げるは、些か疑問が残る。

 また、ミスリル製の武器であれば、切れ味も良いだろうし魔力を通しやすい。
 コレなら精神力=魔力…とまでは言わないが、攻撃の瞬間に気合いと言うか…滅びろ!と強く思えば、魔族にもダメージを与える攻撃になるとは思う。
 もっとも、こちらもドラゴン素材の防具同様に、その程度でどうこうなる様な相手ではないのでは?とも思う。

「ってな訳で、素材となる物が欲しいの分かりましたが、この世界って…聖剣とか聖鎧って装備はないんですか?」

 そう、元の世界では魔族に対して有効な攻撃手段として聖なる剣や、聖なる魔法。
 また、防御手段として聖なる鎧や聖なる魔法…なんて物がゲームやアニメでは常識だったりする。

「聖剣…か、確かに魔族が暗躍していた遙か昔には、その様な武器や防具、魔法が存在していたらしいのだが、今では、何処の国でもその存在が秘匿されてしまっている。
 もっとも、秘匿と言うより消失…と言った方が良いのかも知れないな。」
「ん?消失って、どう言う事ですか?」

 疑問に思った僕は、すぐにラオンさんに尋ねる、すると…。

「コレは他言無用だが、この世界の王族や貴族と言うのは、自らの保身を優先する事を最優先する輩が多数いる。
 当然ながら、過去、魔族がいた事を知る者もいる訳で、その手の装備を手放すとは考えにくい。
 にも関わらず、その様な装備が一切合切、処分されているとなると、何かしらの力が働いたとしか思えない。」
「つまり、ラオンさんは、その背景にも魔族達が暗躍しているのではないと?」
「あぁ、疑いだしたらきキリがないのだがな…。」

 ラオンさんは、そう言うと椅子の背もたれに体を委ねる様にもたれ掛かる。
 やれやれ…どうやら、ラオンさんもかなりお疲れのようだ。

「仕方ないか…分かりました、残り二つのクエスト、失敗してもノーペナルティでって言うのなら、依頼を受けますよ。」

 と、僕はかなり疲れているラオンさんへと宣言するのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

処理中です...