上 下
255 / 421
~第七章:魔神復活編~

255ページ目…スライム調査【4】

しおりを挟む
 帰らずの森と呼ばれている森が、メルトの街の側にある。
 ちなみに、スタトの塔があった森とは別の森である。

 で、この帰らずの森なのだが、何故、そんな名前が付いているのかは誰も知らない。
 確かに迷いやすい森ではあるのだが、別段、何のトラブルもなく普通に帰ってくる事が出来る。
 むしろ、冒険者に成り立ての半数は薬草取りの為に、帰らずの森へ入った事があるのではないだろうか?
 僕も、この町に着いて冒険者になってから直ぐの頃は、薬草取りのクエストで何度か足を運んだ場所だったりする。

 もっとも、僕の場合は、迷子になりたくないので森の入り口付近で採取していたのだが…。

 そんな訳で、今まで奥へと入った事のない、帰らずの森の奥へと、スライムの調査に来た訳だが…。

「…本当に、そんなスライムがいたんですか?」
「あぁ、俺は遠目でしか見てないんだが、あんな所に少し赤くてプニプニと動くなんて、スライムくらいしか見た事無いからな…。」

 そう、僕は今『例のスライム』の件で、偶然にも怪しいスライムを目撃したと言う冒険者に会う事が出来た。
 そして、冒険者に情報の共有をお願いし、その怪しいスライムについて聞く事が出来たのだ。

 ちなみに、この情報の共有と言うのは個人の自由で、例えば、何処何処どこどこに薬草が生えている、とか、釣りをするなら何処のポイントが良い、等々、他の人に教えても問題ない事を教え合うと言う物だが、もちろん、人によっては教えたくないからと、情報の共有を拒否する事も可能である。

 当然ながら、断ったからと言って別に何かしらのペナルティがある訳ではないので、わざわざ貴重な情報を教える必要はない。
 ただ、今回の様に『何かの調査』とかだと、協力しておくと後々、評価に繋がる事があるので、悪巧みを考えない冒険者であれば、自ずと協力的な態度を取るのが普通である。

 しかしまぁ…まさか、こんな所で僕の知ってるスライムの情報を聞く事になろうとは…。

「あなた、そのスライムって、もしかして…。」
「あぁ、たぶん、僕達のよく知っているスライムだと思うよ?
 それに、そのスライムならば、小さな村の一つや二つ壊滅させても可笑しくないと思う…。」
ご主人様あなたや、プリンさんは、そのスライムの事を知っていられるんですか?」

 あれ?クズハも良く知っているはずなんだが、何でだ?と思った所で、勘違いに気が付いた。
 そう、クズハがそのスライムとあった時は、既にピンク色したスライムだったからだ。

「あぁ、それについては後で話すから、それよりも…。」

 そう言って、僕はクズハから冒険者の方を向いて冒険者に話し掛ける。

「とりあえず、そのスライムがいたと言う場所を詳しく教えて貰えますか?
 と言っても、今回の情報料は銀貨1枚までしか払えませんが…。」

 まぁ、只の目撃情報では、経費で落ちる訳でもなく自腹で払う必要があり、銀貨1枚(1万円ほどの価値)を払うのだから文句はないはずだ。

 ちなみに、通常、この手の情報だと大銅貨1~2枚で十分なお礼になる。
 それを考えれば、破格の情報料だと言えよう。

「銀貨1枚…か、良いだろう、その話受けた。
 それにしても、只の目撃情報だけで銀貨1枚って事は、近付かなくて正解だったみたいだな。」
「えぇ、多分ですが…下手に戦った場合、最悪、死んでいたかも知れませんね…。」

 別に脅すつもりはないのだが、下手に近付いた場合、『もしも』戦闘にでもなったら洒落にならない事になるので、注意の意味も込めて、少しオーバーに話す。
 まぁ、彼がそれなりの強者であれば問題ないだろうが、装備から察するに、彼はそこまで強くない筈だ。

 もっとも、そうなる可能性が高いと思うだけで、こちらの情報を彼に伝えているので、嘘を付いている訳ではない。
 あくまでも、個人的な意見なのである。

 まぁ、戦闘じゃなくても死ぬ事だってありえるので、物は言い様…と言う事で、誤解して貰おう。

◇◆◇◆◇◆◇

 それから十数分後、僕達は冒険者が『例のスライム』を目撃したと言う場所へと、無事に到着する事が出来た。
 そうそう、当初、僕達はスライムの大量発生が原因かと思っていた今回の件だが、かえらずの森の状況から『例のスライム』単体の仕業だと言う結論に達した。

 と、言うのも、プリン曰く『例のスライム』は周囲のスライムすらも捕食するらしいので、スライムが大量発生してる可能性は極めて少ない点との事だったからだ。

 と、言う事で、この目撃地点を中心に、『例のスライム』の捜索開始となったのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

桜井正宗
ファンタジー
 おっさんに唯一与えられたもの――それは【オートスキル】。  とある女神様がくれた素敵なプレゼントだった。  しかし、あまりの面倒臭がりのおっさん。なにもやる気も出なかった。長い事放置して、半年後にやっとやる気が出た。とりあえず【オートスキル】を極めることにした。とはいえ、極めるもなにも【オートスキル】は自動で様々なスキルが発動するので、24時間勝手にモンスターを狩ってくれる。起きていようが眠っていようが、バリバリモンスターを狩れてしまえた。そんなチートも同然なスキルでモンスターを根こそぎ狩りまくっていれば……最強のステータスを手に入れてしまっていた。これは、そんな爆笑してしまう程の最強能力を手に入れたおっさんの冒険譚である――。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

妹と歩く、異世界探訪記

東郷 珠
ファンタジー
ひょんなことから異世界を訪れた兄妹。 そんな兄妹を、数々の難題が襲う。 旅の中で増えていく仲間達。 戦い続ける兄妹は、世界を、仲間を守る事が出来るのか。 天才だけど何処か抜けてる、兄が大好きな妹ペスカ。 「お兄ちゃんを傷つけるやつは、私が絶対許さない!」 妹が大好きで、超過保護な兄冬也。 「兄ちゃんに任せろ。お前は絶対に俺が守るからな!」 どんなトラブルも、兄妹の力で乗り越えていく! 兄妹の愛溢れる冒険記がはじまる。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

処理中です...