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~第七章:魔神復活編~

251ページ目…ダンジョンマスターの憂鬱【10】

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「はぁ~…。」

 リッチの代わりで、店番を任せる事の出来る存在を…と、考えていたら大きな溜息が出てしまった。
 とは言え、これで報告は無事に済んだ訳だが、何故か僕の方をじ~っと期待する目で見てくるラオンさん。

「何か期待しているようですけど、流石に、他には何もありませんよ?」
「そ、そうなの…か?」
「えぇ、そもそもな話、ドラゴンの素材とかミスリル鉱石なんて、今日言われて、その日の内に取って来いって…どんだけ無茶振りなんですか?」
「たはは…言われてみれば確かに無茶だよな。
 とは言え、スライムの件については否定しないんだな?」
「えぇ、それに関しては、少しばかり気になる事があるんで…。」

 そう、確かに帰らずの森は危険度の高い森である。
 だが、たかだか『通常種』のスライムが大量発生しただけではAランクの冒険者に依頼が来る事はない。
 しかも、帰らずの森にスライムが大量発生したのであれば、今頃、森の木々が無事とは思えない。

 まぁ、禿げ山とまでは言わないまでも、只のスライムであるならば食料となる森に被害を出さずにいるとは思えない。
 また、そうなっていると言う話も聞かない訳で、そうなってくると他にも原因があるはずだ。

 その証拠に、最初に聞いた時の説明では、『通常種』ではなく『異常種』と聞かされている。

「気になる事か…やはり、お前もそう感じたか…。
 俺の方でも、調査隊を出したりして調べたんだが…一つ、眉唾な噂を聞いたんだが…聞くか?」
「えぇ…通常種・・・のスライム如きの討伐にAランクの冒険者が動く事自体、通常では有り得ませんからね。」

 ラオンさんは、僕の返事に、満足したかの様に一度肯くと、真剣な顔をして説明を始めた。

「今、お前が言った様に、調査隊も森に入った時、『通常種』のスライムが大量発生しているのだとばかり思っていたらしい。
 まぁ、先入観を持って調査するのは遺憾ではあるが…今回は、その話を置いておこう。
 そこで、調査隊はスライムを探したりしたのだが、森にも被害はなく大量発生をしたと言う証拠も見付からなかった。」
「つまり、そのスライム討伐の依頼自体、信憑性がないと?」
「いや、そうとも言えん…と言うのも、緊急用の伝書鳩を使い、さらにその手紙には、大量の血が付いていた…ともなれば、流石に見過ごす訳にはいかない。
 そもそも、帰らずの森にある村からの情報で、スライムに襲われて村が全滅…と書かれていたのではな。」

 なるほど…確かに、そんな手紙が届いたとなれば、冒険者ギルドとしては動かない訳にはいかないか…んッ?

「あれ?でも、帰らずの森の付近に村なんてありましたっけ?」
「いや、俺の知る限りでは無いな…ただ、他の街などから流れてきた者が村を作ったとも考えられる。
 現に、調査隊が、彼等の村らしき物を発見しているからな…。」
「ん?なんで、村と断言せずに、村らしき物…なんですか?」
「それは、調査隊の話によると、家だったと思われる残骸や、血糊等の発見はあったが、殆ど生活をしていた形跡が見付からなかったのだ。」
「ん~…やはり妙ですね?
 まぁ、引っ越して直ぐと言うならば生活をしていた形跡が無いのは分かりますが、それに残骸や血糊…ですか?
 仮に、移動する為の拠点だとした…それなら肉を捌いた時の血糊かも…と無理矢理なこじつけは出来ますが、それをスライムと結びつける要因にはなりませんしね。」

 それに、村の様な物…と思わせる程の物を作っておきながら、その労力を簡単に破棄するとは思えないのだ。

「うむ、そこで俺は、今回の犯人は『通常種』の大量発生ではなく、『異常種』の可能性も考えて、お前に依頼をする事にしたのだ。」
「いや、したのだ…じゃないでしょ?そもそも、『異常種』じゃなく、『希少種』の可能性もあるって事でしょうが…。」
「まぁ、可能性はゼロではないが…流石に、『希少種』はないのではないか?
 プリンさんみたいな存在が、何び…何人もいたら大変だぞ?」
「……今、何匹って言い掛けませんでした?」
「いや、そんな事は…スマン、嘘はいかんな。
 プリンさんは別として、他のスライムはどうしても何匹と数えてしまってな…。」

 僕のジト目に、誤魔化そうとしていたラオンさんが、言い直す。

「まぁ、としては、プリンをちゃんと人として扱ってくれてるんなら、別に良いんですけどね?」
「わ、わかった…だから、お前も落ち着けッ!分かってるかもしれんが、力が漏れてるぞッ!!」

 と、慌てて言うラオンさんを見て、自分が力の制御に失敗しており、力が漏れ出しているのに気が付く。
 うんうん、こんな場所で漏らして良い力じゃないわな。

「す~は~、す~は~…よし、落ち着いた。」

 僕は数回、深呼吸をして高ぶった感情を抑え、力の制御を強く意識する。
 それにより、漏れ出していた止まり、普段の僕に戻った様だ。

「まったくお前と言うヤツは…俺はまだ死にたくないぞ?」
「すいません…大分、慣れてきてはいるんですけど、どうもまだ違和感があって、制御が完璧ではないんですよ。」

 と、言い訳をする…まぁ、その違和感の正体は、ゼロの魂と一緒になった残りの欠片だと思うんだけど…ね。

「まぁ、何はともあれ、コレからスライムの調査…場合によっては討伐になりますが、今から向かえば良いですか?
 もっとも、この時間からだと日帰りと言う訳にはいかないので、一度家に帰ってからになりますが…。」
「おぅ、新婚さん・・・・のお前に苦労を掛けるのは忍びないが、よろしく頼むぞ!」

 ラオンさんの『新婚さん』の言葉に、僕の顔が赤くなる。
 くそ、不意打ちの所為で、予想以上に恥ずかしく顔が赤くなってしまった。
 とは言え、何時までもここにいる訳にはいかないので、ラオンさんに照れ隠しで『黙れ!』と叫んで部屋から出て行くのだった…。
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