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~第七章:魔神復活編~

230ページ目…絶望の始まり

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「ご、ご主人様、危ないッ!」

『ドンッ!』

 離れた所から悲鳴の様に響くクズハの声が辺りに響く。
 その声が届くか届かないかと言う瞬間、僕は真横からの強力な衝撃を受ける事となる。
 そして…僕は身体を吹き飛ばされつつも、先程、僕を吹き飛ばした犯人を見る。

 もっとも、僕の真横からの衝撃だった事から、その犯人は、確認せずとも、プリンなのは分かりきってはいるのだが…。
 とは言え、何故、プリンが僕に攻撃を?
 そんな疑問の答えはプリンの姿と、今までいなかった存在により明白となる。

『ピキッ…ピキッ…。』

 かろうじて僕の耳に聞こえた微かな音…何か罅が入って次第に割れていく、まさにそんな様な音だ。
 そして、プリンの胸から生えている大きな棘?否、それは剣の刃だと思われる物。

 では、未だ続くこの音は、いったい…?

「…ご主人様、お怪我はないですか?」

 そう言って微笑むプリン…だが、今のプリンの身体は明らかに可怪しい。
 プリンは〖人化〗のスキルにより人の身体を忠実に模している。
 当然、肌の色は人族のソレと同じで肌色である。

 にも関わらず、服の一部や肌の一部がピンク色に変わっていると言う事自体、本来、あり得ないのだ。
 だが、僕は知っている…プリンが〖人化〗を使いこなす前は、こんな状態だった事がある事を…。

 そして、未だにピキピキと鳴り止まない、小さな音…それの意味する所は?

「あ、あぁ…僕は大丈夫だ…。」

 何とか無事だと言う事だけは、伝える事が出来た…だけど、それ以上の言葉が、何故か出ない…。
 まるで、それ以上の言葉を言う事自体が禁句タブーであるかの様に…。


 この世界には、スライムと言う魔物が居る。
 そして、スライムと言う魔物は比較的弱い魔物としての認識が一般には広まっている。
 何故なら、目に見えての弱点があるからだ。
 スライムの身体は半透明で、その中には丸い核がある。
 それを剣等で壊せば、スライムは身体を維持する事ができなくなり倒す事が出来るからだ。
 とは言え、スライムには何でも溶かす溶解液や、斬り付けても、直ぐに何事も無かった様に身体を修復すると言った様々な特徴から、物理攻撃が殆ど効かない等の理由があり、かなり腕に自信のある冒険者でも、下手をすれば自分達の方がやられる危険性は十分ある。
 故に、比較的弱い魔物とは言え、一つ間違えれば返り討ちにあう危険は十分にあると言う訳である。

 だが、それでもプリンは特殊な個体だったのか、、僕と出会って直ぐのプリンには、その核と言う物を見つける事が出来なかった。
 しかし、それは本当になかったのだろうか?未だに僕の耳に聞こえてくる音の正体は?

 そして、その音と共に、どんどんピンクの色が広がっていくプリンの身体の意味する所とはいったい…。

 時間にして、たった数秒…5秒にも満たない僅かな時間にも関わらず、あり得ない程の時間が遅く感じるほどの思考の流れ。
 まるで、走馬燈の様だと認識する思考…そして、ついに、その意味が判明する。

 僕の目の前にいるプリンの胸から生えている剣、その周囲がピンク色に変わった時に…。
 そう、プリンの中には透明でありながらも罅割れた事によりその存在を知らしめる丸い物体がある事を…。
 そして、その原因となり今もその丸い物に刃をめり込ませている剣の存在。

 それにより、プリンのピンク色が、徐々に褪せていく本当の意味を…。
 いくら僕がバカでも、その意味が分からない訳はない。
 だが、信じられないのだ…そして、絶対に認めたくないのだ!

 出会って直ぐに敵として殺し合いをした…。
 だが、それが終わった後、僕達はずっと一緒で、コレからもずっと一緒だと信じていた。
 そして、僕はおろかにも、疑おうともしなかった…否、考える事を放棄していたのだ。
 そう、プリンが僕の側からいなくなると言う事を…。

「良かった…。」

 そして、プリンの口から紡がれる微かな一言…そんな微かな言葉さえ、聞き取れた事すらも奇跡だと思える程の小さな声。
 僕が慌ててプリンに声を掛けようとした瞬間、プリンは、とうとう人型を保てなくなり丸い水玉のようになる。
 そのため、プリンの後ろにいた物が姿を現した。

 そう…ラドルの奇襲により、警戒していたのにも関わらず、ラドルを倒した事により警戒を解いてしまった存在。
 未だに聖騎士団の鎧を着ている者…団長の身体を奪ったであろう、もう一人の魔族。

 一瞬の油断が死を招く世界において、敵を倒して気を抜いた瞬間が一番危ないと言う事は百も承知。
 だが、あれだけの無理、無茶、無謀をやり遂げ、強敵だったラドルを倒した後の魔王化の解除…。
 ラドルを助ける事もなく、僕やラドルと同じく転移してくる事により、一瞬で距離を埋める事が出来る相手など、まずいないであろうと言う油断が招いた隙を、完璧なタイミングで突いて来るなど思いもしなかったのだ。

 そして、その結果がコレだ…。

 そして、魔族は叫んだ。
 プリンの核に刺さっていた剣を振り上げ、完全にプリンの核を壊しながら…。

「さぁ…今こそ、魔王様の復活の時!絶望の始まりだッ!!」

 と…。
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