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~第六章:冒険者編(後期)~

179ページ目…聖王都探索【1】

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 『聖王都シロガネ』…ぶっちゃけた話、何故、この街が『聖王都』と呼ばれているのか、僕は知らない。
 ただ、確実に言えるのは、僕は、この街が嫌いだ言う事だ。

 いや、別に、この街が悪いという訳ではない。
 ただ、この『聖王都』に来てから、僕は、何故か異様な雰囲気を感じるのだ。

 もちろん、プリンもクズハも、そんな事は一切感じ取ってはいない訳で…。
 何故、僕だけが感じ取れるのか…とは思うが、僕には原因すら思い付かないのだから仕方がない。
 まぁ、何はともあれ、冒険者ギルドまであと少しと言う所まで来たのだが…。

「ご主人様、まだ変な感じなのですか?」
「うん…何て言うか、こ~う、モヤモヤするって言うか何と言うか…ダメだ、言葉に出来ない。
 とにかく、この街は何か変なんだよ!」

 言葉に言い表せないのが、何とももどかしい。

「そう言われても、私達には何も感じないのですよね…。」
「そう、まさにそれだよ!何で僕だけなんだ?
 僕だけが感じる事の出来る違和感、それが気になって仕方がないんだ。」

 本当に、何が原因なんだろう?
 これも『零の使い魔』に関係している事なんだろうか?

 結局、僕が感じてる違和感の正体が分からないまま、僕達はギルドへと到着する事となる。

 ちなみに、高級ホテルのフロント兄ちゃんが教えてくれた、ギルドの側の宿屋も直ぐに見付ける事が出来た。
 だって、側とは言っていたけど、直ぐ隣だったんだもん…。
 逆に言えば、これで見付けれない方が可笑しい。
 そんな訳で、僕達は、早速、そのホテルに部屋を取る事にした。

 ちなみに、料金は馬車を預かる料金込みの3人部屋で銀貨1枚…日本円にして約1万円程だったので安いのではないだろうか?
 もっとも、この値段は素泊まり…つまり、ご飯代は含まれていないので、別途、ご飯は自分達で手に入れないといけなかった。
 とは言っても、このホテルには、ちゃんと食堂もあるので、お金さえあればある程度の食事にありつく事が出来るので、その点に関しては良かったと思う。

◆◇◆◇◆◇◆

「んで、そんなこんなで冒険者ギルドに来たんだけど…なんか、掲示板クエストボード、ショボくないか?」
「そうですか?私には結構、しっかりした作りに見えますが?」

 いや、別に掲示板の作りがショボいと言う意味ではなく、張り出されているクエストの内容がショボいと言う意味で言ったんだけどね?

「プ、プリン様、おそらく、ご主人様はそう言う意味で言ったのでは無いと思います…。
 多分ですが、依頼の内容がショボいと言ったのだと思います…そ、そうですよね、ご主人様?」
「あぁ、クズハの言う通りだ、クエストの内容がメルトに比べて、ショボいんだよ。」
「なるほど、確かにクエストの内容は、どちらかと言うと雑用ばかりの様ですね。」

 そう、先ほどから見るクエストの殆どが雑用と言って良い様な内容だったのだ。
 しかも、下級ランクの冒険者がする様な雑用が多く、僕達が受けるランクの物が無いのである。

「あ、あの…私達、メルトの町から来たのですが、どうしてクエストボードに雑用のクエストしかないのですか?」

 僕達が疑問に思った事を、クズハが代表で受付のお姉さんに雑用しかない理由を聞いてくれる。

「それがですね…この『聖王都』には、聖騎士団と言うのが存在していまして…。
 主な討伐クエストは、その聖騎士団の方に依頼が回ってしいまして、私達、冒険者ギルドの方も、実は頭を悩ませて居るんですよ…。
 聖騎士団が出来る前までは、こんな事はなかったのですが、残念ながら、今は、ごらんの通りの有様で…。
 それに、稀に雑用の依頼以外に、冒険者ギルドにも討伐クエストも回ってきますが、基本的に、そこら辺にいる様な冒険者では束になっても攻略不可能なクエストだったりで、この『聖王都』では冒険者ギルドの冒険者は役立たずと言う噂が流れる始末。
 挙げ句に、友達に誘われて合コン…コホン!飲み会に行っても、冒険者ギルドの受付と言うと笑われて相手にされなくなるし、もう、最悪なんですよ…。」

 わざわざ合コンを飲み会言い直す必要は無いと思ったのだが、それよりも、思ったより自体は深刻な様だ。
 なお、この世界にも合コンと言うのがあるのに驚いたが、もしかしたら翻訳スキルか何かがあって、僕の分かる言葉に変換してくれているのかもしれない。

「た、大変なんですね…ですが、『聖王都』の冒険者でも攻略不可能…ですか?
 それって、いったい、どんな依頼なのですか?」

 仮にも、『聖王都・・・』の冒険者ならば、それなりの力があると思うのだが…。

「それがですね、ドラゴン退治とかですよ?
 そんなの、国が軍隊を率いて戦うかしないと無理じゃないですか!
 もしくは、戦闘に慣れているS級の冒険者かA級の冒険者が数人いなきゃ無理ですよ…。」
「そ、そうなんですね…確かにドラゴン退治なんて、ご主人様やプリン様じゃないと無理ですね…。」
「えぇ、そうですよ…本当に困った物で…って、今、ドラゴン退治出来るって言いませんでしたかッ!?」
「は、はい、ですから…私のご主人様やプリン様でしたら、確か、ブラックドラゴンなら退治したと聞いてますが?」

 クズハ、それは今言う必要のない言葉だぞ?

「いやいやいや、たった二人で何て無理ですよねッ!?どれだけのメンバーで犠牲を払ったんですか!?」

 いかん、こりゃ完全に疑ってるな…これは流石にフォローしないと信じて貰えないぞ。

「えっと、失礼します、うちのクズハが何かしましたでしょうか?」
「い、いえ、何かした訳じゃなくてですね…。」
「あ、ご主人様!あ、あの、受付のお姉さんに、ご主人様のドラゴンを討伐したと言っても信じて貰えないんです…。」
「そ、それは仕方が無いじゃないですか…ブラックドラゴンですよ?
 色持ちのドラゴンなんて聖騎士団でも勝てるかどうか…眉唾も良い所ですよ。」
「そうですよね…ちなみに、鑑定して欲しい物があるんですが…見て貰って良いですか?」

 僕はそう言うと背負鞄経由で、無限庫インベントリからブラックドラゴンの爪やら鱗やら、ぶつ切りの肉を取り出しカウンターに乗せる。
 すると、受付嬢の目の色が明らかに変わった。

「ち、ちょっと待ってくださいね…ほ、本物か〖鑑定〗して貰って来ます!」

 明らかに動揺しながら奥へと入っていくお姉さん。
 うん、実に狼狽うろたえ具合が実に面白い。

「ご主人様ったら、悪戯いたずらが過ぎますよ?」

 プリンが笑いながら注意してくる。
 どうやら、プリンも面白がっているみたいだ。

「そう言うなって、僕達は嘘を付いた訳じゃない。
 そもそも、ブラックドラゴンどころか、その上のブラックダイアドラゴンすら倒す所だったじゃないか。」
「ですが、『魔王化』は他の人に秘密なんですよね?」
「うん、だから、プリンもバレないようにしなきゃね?」

 下手をすれば、僕達自身が討伐対象になってしまうからね…。

「はい、気を付けます♪」

 それから暫くして、〖鑑定〗を終えたお姉さんが、顔を真っ青にして戻ってきたのは言うまでもない。

 いや、そもそもの話、ギルドカード見せたら済んだ話なんだけど…ね?
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