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~第六章:冒険者編(後期)~

165ページ目…目指せ、聖王都【6】

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 それにしても、今回、伐採した木の長さが長いとは言え、何で前回と同じ様にしなかったんだろうと思う。
 おそらく、自分なら何とか出来る…などの自惚れもあったのかもしれない。

 だが、一番の理由は、これから始まるであろう『零の使い魔』との戦いを意識していたからだろうか?
 自分に何が出来るのか、何が出来ないのか、自分の限界は…そう言った不安が強かったのだろう。
 その為、一番簡単な…シンプルな事を忘れていた様だ…。

 それは、所詮、人、一人の力には限界があると言う事だ。
 昔、学園物のドラマで先生が言っていた、人と言う物は人と人が支え合っている…と。

 まぁ、ぶっちゃけ、人と人が支え合ってるか?と言われたら、迷わず否定するだろう。
 何より、僕は、そんな事には興味ない。
 とりあえず、お茶が終わったら伐採した木を回収してこよう。。

「しっかし…このお茶、紅茶と言った方が良いのかもだが、結構美味しいけど、高価な良い葉っぱ使ってるのか?」
「いえ、それほど高いお茶では…来客用は、それなりに高いお茶を用意しておりますが、現在、お客様が来る事は無いと思われますので…。」
「…何で?」

 確かに、お客さんが来る事はない。
 そもそも、他の人とつるんでないのだから当然と言えば当然か?
 まぁ、この家に来客があるとすれば、冒険者ギルドからの遣いの者くらいだろうか?

「何でと申されましても、御主人様は冒険者ですから、直接、家に依頼が来る事は稀ですし、仮に依頼が来たとしても、お話は冒険者ギルドとなりますので…。」
「なるほど、そんな理由なんだ…。」

 それに、友人と呼べる人は、ラオンさん以外に考えつかない。
 こっちに来る前なら、後輩がいたが…。

「ダ、ダーリン、このクッキーも美味しいですよ。」
「あ、ありがと…って言うか、いつまでその呼び方続けるつもり?」

 プリンが顔を真赤にして呼んでいるが、そうまでして呼ぶ必要はないはずだ。

「あの…嫌ですか?」
「う~ん、嫌じゃないけど、そんなに恥ずかしい思いしながら呼ぶくらいなら、元の呼び方にするとか、ちょくちょく言ってくる旦那様とかの方が良いんじゃないかな?って思っただけだよ。」

 わざわざ顔を赤く染めてまで言わなくても良い様な気がするのだが…。

「あぅ~…でも、でも、お隣の奥さんが~。」
「あのさ…プリンが僕の事が好きなのは、十分に分かってるんだけどね。
 だけど、プリンが好きなのは僕であって、呼び方じゃないだろ?だったら、プリンが好きな様に呼んでも良いんじゃないかな?」

 僕の事が好き…とは、自惚れかもしれないが、間違っていないはずだ。

「あ…そ、そうですよね、私が呼びたい様に…はい!あなた♪」
「そ、それはちょっとまだ早いかなって思うんだけど…まぁ、いっか。
 アリス、お茶美味しかったよ。」

 僕はそう言うと、恥ずかしいのを隠す為に、逃げ出す様に席を立つ。

「ご主人様、どこ行くんですか?」
「ん?さっき森から伐採した木を運んで来るんだよ。」

 僕は、そう言うと森への〖空間転移ゲート〗を開いたのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「しっかし、我ながら思うけど、僕って、本当にバカだよな…。
 前回同様、〖無限庫インベントリ〗に入れたら、簡単に終わっていたってのに…。
 まぁ、そのお陰で、今、僕が制御出来る門の大きさを把握出来たから良いんだけど…ね。」

 そう、直径10m程の大きさの円になるとは言え、この大きさであるなら場合によっては軍隊ですら転移させる事が出来るはずだ。
 そもそも、地面に門を開くから、丸太を運び入れれないのであって、空間に門を開くのであれば、高さ10m程の物を移動可能だと考えれば、十分脅威である。
 それを考えると、空間魔法を使える魔法使いの需要が高いのも納得がいく。
 ラオンさんが、人前では極力使うなと警告するのがよく分かると言う物だ。

 何はともあれ、30本ほどあった材木を全て無限庫インベントリに収納が終わり、残るは薪と枝だけになった頃、ダンジョンを管理しているスライムから〖念話〗で連絡が入った。

ご主人様ボス、鉄人形《アイアンゴーレム》の準備、整いました。
 ですが、ダンジョンポイントの関係上、今回は1体のみとなっています。〕
〔了解…準備が出来次第、そっちに向かう。〕
〔畏まりました、お待ちしております。〕

 スライムは、それだけ言うと念話を切る。
 それにより、再び静寂が訪れた。

「よし、ダンジョンの方が準備出来たのなら、急いで薪を回収して向かうとするか!」

 僕は、残っている枝を諦めると、残りの薪だけを回収して屋敷に戻るのだった…。
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