164 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~
164ページ目…目指せ、聖王都【5】
しおりを挟む
「ただいま~。」
〖空間転移〗の魔法で作り出した門を潜り屋敷に戻ってきた僕は、自分でも驚くほど疲れた声で挨拶をした。
「ダー…ご主人様、お帰りなさいませ。」
「お帰りなさいませ、御主人様。」
「はい、ただいま。」
わざわざ2度も『ただいま』と言わなくても良かったのだが、つい言ってしまった。
ちなみに、プリンのヤツ、ダー…って何を言おうとしたんだ?
「んで、お茶って話だけど、何処にあるの?」
「はい、あちらにご用意させていただいております。」
アリスはそう言うと、先頭を歩き案内する。
そこには、どこから持ってきたのかテーブルと椅子まで用意されていた。
「すぐにご用意いたしますので、御主人様とプリン様は座ってお待ち下さい。」
アリスは僕達に座る様に言うと、すぐに屋敷の中に入っていく。
そんなに急がなくても良いのに…とは思う物の、ブラウニーであるアリスに取っては、それが通常運転だし、既に何度も言っているので、言っても聞かないのは十分理解している。
「それで、ダー…ご主人様、門の拡張はやはり制御が難しいのですか?」
「あぁ、予想以上に…ね。
それより、さっきから僕を呼ぶ前に『ダー』って聞こえるんだが…いったい何の事だ?」
「えっと、その…。」
「ん?笑わないから言ってごらん?」
「ほ、本当に笑わないでくださいよ?」
もじもじしながら顔を赤くしつつプリンが聞いてくる。
ここは笑わないと約束しないと話が進まない様なので約束をする。
「あぁ、笑わないから言ってごらん?」
「あの、先ほど、ご近所の奥様達と話をしていたのですが…。」
ご近所の奥様…こっちの世界でも同じみたいで、所謂、井戸端会議…的な?それに似た感じの主婦友達による会話の様だ。
「そこに、新しく引っ越してきたと言う新婚さんがやってきまして…。」
「ほうほう…それで?」
何となく嫌な予感がするのは気の所為だろうか?
「そのご夫婦が、旦那様の事をダ、ダーリンと…。」
「だとすると、その旦那さんは、奥さんの事をハニーと呼んでいたとか?」
「えッ!?なんで分かったんですかッ!?」
「プリン、落ち着いて!僕の記憶の中に、その言葉がないか、よ~く思い出してごらん?」
「は、はい!検索してみます…。」
そう、プリンと〖融合〗…魔王化した際に互いの記憶は一つになっている。
基本的には、自分の記憶を優先して使う為、相手の記憶は意識しないと思い出せないのだが…今回の様に、相手の記憶を探ろうと思えば、幾らでも読み取る事が出来るのだ。
「あ…ありました。
へ~…ご主人様のいた世界でも、同じ様に言うんですね。」
「あぁ、そうだな…でも、もしかしたら僕みたいにこっちの世界に来た人が広めたかもしれないし、逆に、こっちの世界の人が、あっちの世界で広めた可能性もあるかもしれないね。」
「そう考えると、なんだか素敵な気分になりますね。」
「ははは、それで、プリンはそれに憧れて、ダーリンと呼びたくなった訳だ。」
「そうなんですよ…って、ご主人様、笑うなんて酷いです。」
おっと、確かに笑わないと言ったのに笑ってしまった。
だが、今笑ったのには意味がある。
「ごめんごめん、そんな意味で笑ったんじゃないんだ。」
「ほぇ?どう言う事ですか?」
「いや、プリンは可愛いな~って思ってね。」
「あぅ…そ、そんな事言っても騙されないです。」
「信じてくれないんだ、ハニー…。」
実際に言うのは恥ずかしいが、ネタで言うのなら、そこまでもない。
何より、今回は誤魔化すのには丁度良いネタである。
「はぅ~…ダ、ダーリンの意地悪…。」
プリンが顔を真っ赤にして俯く。
ちょっとプリンには悪い事をしたな、と思いつつ、もっとイジメてみたくなるのは悪い癖なのだろうか?
それに、どうやら、プリンにはMっ気がある様だ。
かく言う僕は、そんなプリンをイジメたくなるんだかSっ気があると言う事なのだろうか?
「コホンッ、お待たせいたしました、御主人様、お茶をお持ちいたしました。」
いつから居たのか、アリスが1回咳払いをして、意識を自分に向かせてから挨拶をする。
どうやら、今のやり取りをバッチリ見られていた様だ。
そう考えると、とたんに僕の顔も赤くなるのを感じた。
「あ、あぁ、ありがとう…。」
なんとか、それだけ言う事が出来たが、僕は次に何を言って良いのか分からなくなっていた。
「それで、御主人様、やはり門の拡張は難しいのでしょうか?」
「あぁ、さっきプリンとも話していたんだが、予想以上に難しいね。」
「そうなんですね…他に方法は無いんですか?ダーリン?」
「こら、アリスまで、人をからかうんじゃない!」
「はい、ごめんなさい。」
もっとも、僕も冗談で言ってるのが分かっている為、軽く注意するとアリスは悪巫山戯が過ぎたと素直に謝ってくる。
「とりあえず、方法が無い事もないんだけど…。」
「そうなんですか?例えば、どんな方法が?」
「ん?門の大きさが、これ以上、広がらないのであれば、木を門のサイズに入る長さに斬るとか…。」
「…それだと、せっかく長く切り出した意味が無くなるのでは?」
アリスが鋭い意見を言ってくる。
「そうなんだよな…なんか良い方法って無いものかな…?」
それに対し、僕も同じ事を考えていたので素直に同意する。
とは言え、今までの経験上、何か大事な事を見落としている可能性が一番高い。
それさえ分かれば、この問題も解決するはずなんだが…。
「そう言えば、ダ、ダーリンは馬車を作ってるんですよね?」
やはり、プリンはダーリンと呼ぶのに、まだ少しテレがある様だ。
「あぁ…とは言っても、まだ素材集めてる途中だから作る為の準備中って所なんだけど、それがどうした?」
「いえ、ふと思ったのですが、馬車を作るなら、馬車を入れる小屋も建てなきゃいけなくなるのでは?」
「何だ、そんな事か…確かに、この家は今の人数で住むには大きいかもしれないけど、そんな小屋を建てたら庭が狭くなって大変だからね。
当然、車同様に無限庫に保管して邪魔にならない様にするつもり…って、あぁッ!」
「ど、どうしました、ご主人様ッ!?」
「あ、いや、単に木を運ぶ方法を思い付いただけだから…。」
僕は何故、こんなことに気が付かなかったのかと苦笑する。
以前の時も、この方法で運んでいたのに、何で門を広げようとしていたのだろう?
僕は自分自身に呆れながら二人に説明するだった…。
〖空間転移〗の魔法で作り出した門を潜り屋敷に戻ってきた僕は、自分でも驚くほど疲れた声で挨拶をした。
「ダー…ご主人様、お帰りなさいませ。」
「お帰りなさいませ、御主人様。」
「はい、ただいま。」
わざわざ2度も『ただいま』と言わなくても良かったのだが、つい言ってしまった。
ちなみに、プリンのヤツ、ダー…って何を言おうとしたんだ?
「んで、お茶って話だけど、何処にあるの?」
「はい、あちらにご用意させていただいております。」
アリスはそう言うと、先頭を歩き案内する。
そこには、どこから持ってきたのかテーブルと椅子まで用意されていた。
「すぐにご用意いたしますので、御主人様とプリン様は座ってお待ち下さい。」
アリスは僕達に座る様に言うと、すぐに屋敷の中に入っていく。
そんなに急がなくても良いのに…とは思う物の、ブラウニーであるアリスに取っては、それが通常運転だし、既に何度も言っているので、言っても聞かないのは十分理解している。
「それで、ダー…ご主人様、門の拡張はやはり制御が難しいのですか?」
「あぁ、予想以上に…ね。
それより、さっきから僕を呼ぶ前に『ダー』って聞こえるんだが…いったい何の事だ?」
「えっと、その…。」
「ん?笑わないから言ってごらん?」
「ほ、本当に笑わないでくださいよ?」
もじもじしながら顔を赤くしつつプリンが聞いてくる。
ここは笑わないと約束しないと話が進まない様なので約束をする。
「あぁ、笑わないから言ってごらん?」
「あの、先ほど、ご近所の奥様達と話をしていたのですが…。」
ご近所の奥様…こっちの世界でも同じみたいで、所謂、井戸端会議…的な?それに似た感じの主婦友達による会話の様だ。
「そこに、新しく引っ越してきたと言う新婚さんがやってきまして…。」
「ほうほう…それで?」
何となく嫌な予感がするのは気の所為だろうか?
「そのご夫婦が、旦那様の事をダ、ダーリンと…。」
「だとすると、その旦那さんは、奥さんの事をハニーと呼んでいたとか?」
「えッ!?なんで分かったんですかッ!?」
「プリン、落ち着いて!僕の記憶の中に、その言葉がないか、よ~く思い出してごらん?」
「は、はい!検索してみます…。」
そう、プリンと〖融合〗…魔王化した際に互いの記憶は一つになっている。
基本的には、自分の記憶を優先して使う為、相手の記憶は意識しないと思い出せないのだが…今回の様に、相手の記憶を探ろうと思えば、幾らでも読み取る事が出来るのだ。
「あ…ありました。
へ~…ご主人様のいた世界でも、同じ様に言うんですね。」
「あぁ、そうだな…でも、もしかしたら僕みたいにこっちの世界に来た人が広めたかもしれないし、逆に、こっちの世界の人が、あっちの世界で広めた可能性もあるかもしれないね。」
「そう考えると、なんだか素敵な気分になりますね。」
「ははは、それで、プリンはそれに憧れて、ダーリンと呼びたくなった訳だ。」
「そうなんですよ…って、ご主人様、笑うなんて酷いです。」
おっと、確かに笑わないと言ったのに笑ってしまった。
だが、今笑ったのには意味がある。
「ごめんごめん、そんな意味で笑ったんじゃないんだ。」
「ほぇ?どう言う事ですか?」
「いや、プリンは可愛いな~って思ってね。」
「あぅ…そ、そんな事言っても騙されないです。」
「信じてくれないんだ、ハニー…。」
実際に言うのは恥ずかしいが、ネタで言うのなら、そこまでもない。
何より、今回は誤魔化すのには丁度良いネタである。
「はぅ~…ダ、ダーリンの意地悪…。」
プリンが顔を真っ赤にして俯く。
ちょっとプリンには悪い事をしたな、と思いつつ、もっとイジメてみたくなるのは悪い癖なのだろうか?
それに、どうやら、プリンにはMっ気がある様だ。
かく言う僕は、そんなプリンをイジメたくなるんだかSっ気があると言う事なのだろうか?
「コホンッ、お待たせいたしました、御主人様、お茶をお持ちいたしました。」
いつから居たのか、アリスが1回咳払いをして、意識を自分に向かせてから挨拶をする。
どうやら、今のやり取りをバッチリ見られていた様だ。
そう考えると、とたんに僕の顔も赤くなるのを感じた。
「あ、あぁ、ありがとう…。」
なんとか、それだけ言う事が出来たが、僕は次に何を言って良いのか分からなくなっていた。
「それで、御主人様、やはり門の拡張は難しいのでしょうか?」
「あぁ、さっきプリンとも話していたんだが、予想以上に難しいね。」
「そうなんですね…他に方法は無いんですか?ダーリン?」
「こら、アリスまで、人をからかうんじゃない!」
「はい、ごめんなさい。」
もっとも、僕も冗談で言ってるのが分かっている為、軽く注意するとアリスは悪巫山戯が過ぎたと素直に謝ってくる。
「とりあえず、方法が無い事もないんだけど…。」
「そうなんですか?例えば、どんな方法が?」
「ん?門の大きさが、これ以上、広がらないのであれば、木を門のサイズに入る長さに斬るとか…。」
「…それだと、せっかく長く切り出した意味が無くなるのでは?」
アリスが鋭い意見を言ってくる。
「そうなんだよな…なんか良い方法って無いものかな…?」
それに対し、僕も同じ事を考えていたので素直に同意する。
とは言え、今までの経験上、何か大事な事を見落としている可能性が一番高い。
それさえ分かれば、この問題も解決するはずなんだが…。
「そう言えば、ダ、ダーリンは馬車を作ってるんですよね?」
やはり、プリンはダーリンと呼ぶのに、まだ少しテレがある様だ。
「あぁ…とは言っても、まだ素材集めてる途中だから作る為の準備中って所なんだけど、それがどうした?」
「いえ、ふと思ったのですが、馬車を作るなら、馬車を入れる小屋も建てなきゃいけなくなるのでは?」
「何だ、そんな事か…確かに、この家は今の人数で住むには大きいかもしれないけど、そんな小屋を建てたら庭が狭くなって大変だからね。
当然、車同様に無限庫に保管して邪魔にならない様にするつもり…って、あぁッ!」
「ど、どうしました、ご主人様ッ!?」
「あ、いや、単に木を運ぶ方法を思い付いただけだから…。」
僕は何故、こんなことに気が付かなかったのかと苦笑する。
以前の時も、この方法で運んでいたのに、何で門を広げようとしていたのだろう?
僕は自分自身に呆れながら二人に説明するだった…。
0
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
憧れの先輩に抱かれたくて尿道開発している僕の話
聖性ヤドン
BL
主人公の広夢は同じ学生寮に住む先輩・日向に恋をしている。
同性同士だとわかっていながら思い余って告白した広夢に、日向は「付き合えないが抱けはする」と返事。
しかしモテる日向は普通のセックスには飽きていて、広夢に尿道でイクことを要求する。
童貞の広夢に尿道はハードルが高かった。
そんな中、広夢と同室の五十嵐が広夢に好意を抱いていることがわかる。
日向に広夢を取られたくない五十嵐は、下心全開で広夢の尿道開発を手伝おうとするのだが……。
そんな三つ巴の恋とエロで物語は展開します。
※基本的に全シーン濡れ場、という縛りで書いています。
魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される
日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。
そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。
HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
【R18】白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ姫君は甘い夜を過ごしたい~
瀬月 ゆな
恋愛
初恋の王子様の元に政略で嫁いで来た王女様。
けれど結婚式を挙げ、いざ初めての甘い夜……という段階になって、これは一年限りの白い結婚だなどと言われてしまう。
「白い結婚だなどといきなり仰っても、そんなの納得いきません。先っぽだけでもいいから入れて下さい!」
「あ、あなたは、ご自身が何を仰っているのか分かっておられるのですか!」
「もちろん分かっておりますとも!」
初恋の王子様とラブラブな夫婦生活を送りたくて、非常に偏った性の知識を頼りに一生懸命頑張る王女様の話。
「ムーンライトノベルズ」様でも公開しています。
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる